
2010年8月28日にヌエック(国立女性教育会館)主催の「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム」でワークショップを開催しました。
毎年8月の末に開催されるヌエックのフォーラムにはほぼ毎回参加していますが、今年は、「ポルノ被害への法的アプローチを考える」というテーマでワークショップを行ないました。参加者はいつもよりやや少なく、20名弱ほどでした。
報告内容
1.「ポルノとは何か、ポルノ被害とは何か」
1つ目は、プロジェクターを使いながら、単なる性表現一般ではないポルノの現実と、それによって生じるポルノ被害の一端を紹介しました。また最近非常に深刻化している着エロ問題についても詳しく報告しました。
2.「ポルノに関する現行法の問題点と限界」
2つ目の報告は、刑法のわいせつ物頒布罪、児童ポルノ禁止法、地方自治体の青少年健全育成条例などの法律の紹介と、そのそれぞれの限界、問題点について明らかにしました。これらの法律では基本的に「わいせつ」概念が基準になっていることを明らかにしました。「性的感情を刺激する」「性的羞恥心を害する」といったわいせつ概念では、ポルノ被害の現実には対処できないこと、逆に、その概念が曖昧すぎるために、結局は、運用上、性器を露骨に描いているかどうかという基準に収斂してしまっていること、それゆえ、どんなにひどい暴力的で虐待的なポルノでも性器にぼかしがは言ってさえいれば事実上野放しになっている現実が明らかにされました。
3.「東京都青少年健全育成条例改正案をどう見るか」
3つ目の報告は、こうした法的状況の中で出てきた東京都条例の改正案がいかなるものであって、それが現行法の問題点と照らしてどのような性格をもっているかについて報告しました。2つ目の報告にあったように、現行法においては基本的に「わいせつ」概念が、あるいはその言いかえである「性的感情を刺激するもの」という概念が、基準になっています。通常のわいせつ規制とは異なるはずの児童ポルノ禁止法でさえ、いわゆる第3号児童ポルノに関しては「わいせつ」基準にもとづいて運用され、結局は乳首と性器が写っているかどうかが基準となり、そこさえヒモのような水着や手で隠しているかぎり、ほとんど裸同然でも児童ポルノとはみなされないという問題(いわゆる着エロ問題)が生じていました。
東京都青少年健全育成条例も、自主規制や不健全図書指定の対象を、「性的感情を刺激する」もの、あるいは「著しく性的感情を刺激するもの」と規定しており、結局、従来どおりの「わいせつ基準」にもとづくものでした。それに対して、今回出てきた改正案は、そうした従来のわいせつ基準から一歩抜け出し、人権的なアプローチにより近い規定が盛り込まれました。
すなわち改正案は、非実写の児童ポルノに関して自主規制の対象を、18歳未満の子どもを「みだりに性的対象とし肯定的に描き出すもの」と規定し、不健全図書指定の対象を「強姦など著しく社会的規範に反する行為を肯定的に描写したもの」と規定しています。これは、「青少年の健全育成」という道徳主義的な枠組みの中での変化とはいえ、またその規制手段が非常に緩やかなゾーニングにすぎないとはいえ、従来のわいせつ基準から抜け出す方向性を示したものであり、相対的に進歩的な変化だと言えます。
以上の報告にもとづいて、参加者との質疑応答をしました。
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会場の様子です。
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