ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
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暴力的アダルトビデオにおける
女性の人権侵害の調査・研究
(東京女性財団の助成事業に関する報告書)
ポルノ・買春問題研究会

1、調査・研究の目的

「性的自由」の名のもとに、昨今、ポルノグラフィや買売春を積極的に容認する言説がメディアの中で広く流布しています。しかし、そうした「性的自由」論は、基本的に、この社会の支配的ジェンダーである「男性」の観点からなされており、ポルノグラフィや買売春を通じて生み出される女性の性的抑圧や人権侵害に対してはほとんど無関心です。とりわけ、いわゆるアダルトビデオ(以下AV)と呼ばれている媒体の中には、出演女性(ときには出演男性も)に対する明らかな性的虐待が行なわれているものが多数存在しており、中には実際にレイプが行なわれているとしか思えないような内容のものまであります。こうした「作品」を作った監督たちは、虐待者として糾弾されるどころか、リアルな画像を作ったとして賞賛されさえしていています。

こうした中で、実際の暴力的AVを調査研究を行い、また出演者の証言を得ることで、こうしたビデオの問題点を明らかにし、社会問題化し、ひいては、女性の人権を守るための法的規制のあり方を模索することが、現在、切実に求められています。

2、実際の活動

  • 4?7月前半
    主に、暴力的AVを批判する著書の執筆プランの検討と、専門家や研究者を招いての研究会、文献資料の収集、ビデオの収集などの予備作業を行なった。とくに、7月15日には、弁護士の田中早苗さんを招いて、「嫌ポルノ権」についての報告をしていただきました。
  • 7月後半以降
    集めたビデオの視聴と分析を具体的に行なうとともに、実際にビデオに出演していた出演者に対する聞き取り調査・交流、ビデ倫・全倫への問い合わせ・調査、ビデオ店の実態調査などを行ないました。

3、ビデオの視聴と分析

  • ビデオの分析の対象
    暴力的AV、レイプ・ビデオの類いは大量に存在しますので、社会的影響力を持ち、また一部の批評家から「高い」評価を得ている、バクシーシ山下の『女犯』シリーズの2と5、および平野勝之の『水戸拷悶――大江戸引き回し』『水戸拷悶――不完全版』の4本を主たる分析対象とすることにしました。
  • 分析の手法
    当初は、詳細な検討項目を設定し、「出演者(本人同意)の精神面・肉体面に与えられている負荷・打撃およびその可能性」「出演者の当初の同意や希望の範囲を越えた行為が行なわれている可能性」「内容自体が犯罪である可能性」や、また「出演者ないし被害者がどのように描かれているか」などを逐一、個々の実例を列挙する形で分析する予定でしたが、実際にビデオを視聴してみて、そのようないわば「定量的」分析では、とても、『女犯』や『水戸拷悶』などのような圧倒的暴力性を持ったビデオの全体像を把握できないことに気づきました。そこで、まずは、そうしたビデオを見たときに私たちが感じる恐怖、混乱、怒りといった「一次的感情」を吐露しあい、それを言語化することから始め、そこからビデオ全体および個別の問題性の分析に入ることに致しました。

4、まとめ

視聴・分析の結果

  • (1)共通性
    平野ビデオも山下ビデオも、あからさまな女性憎悪と性差別を表出しているとともに、出演女性に対するすさまじい暴力と人権侵害を行使ししている。また、テロップなどで巧妙に言い訳しているが、実際には、出演女性に対し十分な説明や同意もないままに、仕事と称してさまざまな暴力や虐待が繰り返えされています。
  • (2)相違点
    平野ビデオは、勝手な「ルール」や「約束」を作り上げ、無理な要求をし、それに従わない場合は暴力を用い、従った場合は、新しい虐待へとエスカレートする仕掛けになっています。

暴力やいじめの様態が多様で、監督がそうした行為を楽しんでいる様子がうかがえます。山下ビデオでは、最初に女性に男優がねちねちとしたインタビューをして女性を不快にさせ、女性が撮影を嫌がり始めると、レイプ担当の男優などが登場して有無を言わせずレイプし、あるいは、ゲロや汚物をかける。その後は延々と暴力・レイプシーンが続き、女性は完全に「物」として扱われます。

現状の問題点と今後の検討課題

以上のビデオから明らかなのは、よっぽどの大怪我や殺人でも起こらないかぎり、AVの撮影現場が事実上、合法的な暴力と虐待の場になっていることが問題です。またそれが「作品」として編集され、「商品」として流通し、さらにビデ倫の許可を経ていることから、ますます暴力と虐待の「合法性」「正統性」が強化される仕組みになっています。

したがって、こうした現状をより体系的に調査・研究するとともに、そうした「合法的」虐待を許さない社会的・法的な枠組み作り、女性の性的平等権にもとづいた「表現の自由」論の再構築をする必要があります。(2001年3月)

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