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製作被害 : 「当日次第の展開」の台本で…「断れなかった」元AV女優が告白 メーカー側は否定 社会問題化する出演強要 (2017.04.15)

日時: 2017-04-15  表示:558回

産経  2017.4.15 14:00更新

「台本に書かれていない“本番行為”を要求された。驚いたが、撮影現場の雰囲気などから断れず、応じざるを得なかった」。アダルトビデオ(AV)撮影時のトラブルなどでAV女優を引退した瀧本梨絵さんが産経新聞の取材に応じ、トラブルの内幕を語った。瀧本さんは販売元のAV会社大手「ソフトオンデマンド」(SOD)側に不信感を抱き、動画サイト「Youtube」でSOD側を告発する動画を公開。SOD側が「事実と違う」と反論し、瀧本さん側も「SODの主張は真実でない」と再度の反論文を公開するなどしていた。(社会部 小野田雄一)

監督はAV界で著名な人物

 瀧本さんや所属事務所「ベールアンジュ」の代表の男性によると、元々代表の男性は医師免許を持ち都内で内科クリニックを開業しており、瀧本さんはその従業員だった。しかしクリニックの経営不振や瀧本さんが以前からAV女優に興味を持っていたことなどから、男性はAV業界への参入を計画。平成28年6月、瀧本さんとともにSODのAV女優の募集に応募した。

 SODは女優個人とは契約せず所属事務所と契約する方針だったため、男性は瀧本さんを所属女優とする事務所を立ち上げ、SOD専属女優として「3作品に出演する」という契約を交わした。

 同年8月にデビュー作を撮影。監督は著名なAV監督、溜池ゴロー氏だった。「ED(勃起不全)治療の医療コンシェルジュ」役の瀧本さんが、EDの男性患者を治療するというドキュメンタリー風の内容で、本番行為はせず、ヌードになるだけだった。撮影場所には休業中の男性のクリニックが使用された。

 問題となったのは9月に行われた2作目の撮影。男性によると、今作でも監督を務めた溜池氏から事前に「僕が“絡み”(本番行為)の相手を務める。ただし、ドキュメンタリーとしての迫真性を演出するため、瀧本さんには(本番行為は)黙っておいてほしい」という趣旨の依頼をされていたため、瀧本さんには伝えなかったという。

 瀧本さんは「『今作では(本番行為は)あるかな』とは覚悟はしていた。ただ、事前にはっきり説明されておらず、当日渡された台本にも『ここから先は…当日次第の展開です。』としか書かれていなかった。撮影も時間が押して夜になっていたので、『やっぱりないんだな』と思っていた。そこに突然、溜池監督から『ラストは僕と2人きりで絡みを撮影する』と伝えられた。びっくりしたが、疲労や『ここで断ると、これまでの撮影が無駄になる。スタッフにも迷惑をかけてしまう』と思い、断れなかった」と当時の心境を語った。

Youtubeで告発

 瀧本さんの所属事務所代表の男性は「溜池氏は撮影中、瀧本に辛い過去を語らせ、瀧本は何度も泣いていた。長時間の撮影による疲労や、そうした一種の“洗脳”“マインドコントロール”により、瀧本は精神的に不安定になり、判断力が鈍らされていた」と話す。

 瀧本さんと男性は事務所を立ち上げた当初より宣伝用に投稿していた「医療コンシェルジュの日常」というYoutubeチャンネルにこうした問題の経緯を打ち明ける動画を公開。SOD側から「契約上禁止されているプロモーション(販売促進)に支障をきたす行為だ」として動画の削除を要求されたため、動画を削除した。

 「しかしその後、SODからプロモーション活動に呼ばれなくなるなどの嫌がらせや排除を受けた。また瀧本はSODの担当者に『君には何の取りえもない』などと人格を否定されるような複数の発言をされた」(男性)。現在もこうした経緯からPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、重度の抑鬱状態が続いているという。

 最終的に、瀧本さん側は同年12月に別の監督による3作目の撮影を終え、SODと契約を解除。今年1月、SODと溜池氏を本格的に批判する動画をYoutubeにアップした。

 男性は「私たちのケースは、最近問題となっている(脅迫などで意に沿わず女性がAVに出演させられる)『AV強要問題』とは性質が異なることは分かっている。また、取材に応じると、一部の人から心ない言葉などを掛けられることも覚悟している」と話す。

 ただ、AV撮影現場とされたクリニックはSOD側が外観の映像を無断で使用したため特定され、実際に訪れる人がいるなど被害が出たほか、SOD側は男性が医師であることを公表するなどした。その結果、男性の名前やクリニック名などが特定され、インターネット掲示板に書き込まれるなど個人情報漏洩(ろうえい)が起きたという。

 男性は「これ以上被害が拡大することを恐れ、クリニックは閉院とし、東京の自宅も留守にしている。SOD側は『事実と違う』とする反論文を公表したが、自社に都合のよいストーリーしか書いていない。瀧本のケースも広義のAV強要だと考えており、取材に応じて言い分を話したいと思った」と説明した。

 瀧本さんも「もし本番行為を撮影するなら、台本に書いたり事前に説明したりするなど、女性側にも心の準備が必要なことを分かってほしい。私と同じように台本に書かれていないことを突然するよう命じられ、撮影現場の雰囲気から断れず、意に沿わない行為をさせられた女性も多いはず。こうしたことは二度と起きてほしくない」と話した。

 瀧本さんは既に販売されている出演作品については「自分の仕事を否定したくない」と考え、販売中止などを求める考えはないとしている。

SOD側「嫌がってなかった」

 瀧本さん側の告発動画を受け、SODと溜池氏は1月31日、SODのホームページに反論文を公表した。

 SODは反論文で、撮影は円満に行われ、撮影当日や翌日に瀧本さん側からの不満や問題提起はなかった▽撮影前に瀧本さん本人と男性に「2作目では絡みがある」「相手は溜池氏となる可能性がある」ことを伝え、確認していた▽昨年12月の時点で、瀧本さんは「これからもAV女優として頑張りたい」と社員に話していた−などと説明。

 溜池氏も文書で「撮影時も嫌がっておらず、むしろ楽しそうだった」「過去の話を聞いたのは、彼女を応援したいと思えるファンを増やすためだった。瀧本さんは僕と過去の話をすることで泣く演技ができた。それを洗脳といわれると困る」「今回のように強要でも洗脳でもないケースを強要だ、洗脳だと宣伝することは、かえって勇気をもって問題を告発している被害者の現役や元女優さんの頑張りに水をかけることになりかねない」としている。

 産経新聞は関係者を通じて溜池氏に取材を申し込み、いったんは了承された。しかし後日、関係者から「溜池氏は取材に応じることを弁護士から止められたため、応じられなくなった」と連絡があり、取材は実現しなかった。

 また、この問題を受け、溜池氏の妻で元AV女優の川奈まり子氏が代表を務め、AV出演者の人権保護やセカンドキャリア形成などを支援する団体「アバン」も1月31日、再発防止に向けた川奈氏名義の提言を公表した。

 瀧本さん側とSOD側の主張が食い違っていることを踏まえ、川奈氏は「今回の提言は、告発内容が虚偽であったか否かに関わらない、類似の事態を予防するためにAV制作責任者が取るべき対策だ」と前置き。その上で、提言は(1)契約や作品内容について出演者に説明を尽くし、出演承諾書に自筆で署名をしてもらうなど了承を取る(2)その場面を証拠となるよう録画して可視化する(3)遅くとも撮影前日までに、台本があれば出演者に直接手渡す−などとしている。

「芸能人になれる」などとスカウトされた女性が、アダルトビデオ(AV)への出演を要求され、断ると「違約金を支払え」などと脅迫的な言動を受け、意に沿わないAV出演をしている事例は近年相次いで発覚し、社会問題化している。

 判明した事例としては、AV出演を断った女性がプロダクション側から違約金などとして約2500万円の損害賠償を求められた事例=東京地裁でプロダクション側敗訴=や、本人の意に反して過激な性行為を強いられた事例などがある。

 行政は対応を開始しており、昨年6月、警視庁が公衆道徳に反する違法業務に派遣したとする労働者派遣法違反容疑で、AVプロダクション大手を異例の摘発。また政府も今年3月、AV出演強要問題などに対応を目指し、関係省庁幹部による対策会議の初会合を開催。5月中旬をめどに今後の政府の活動方針を取りまとめるとしている。

 さらに業界側でも4月1日、AVメーカーやプロダクションなどでつくる業界団体などが中心となり、業界健全化の方策を検討する第三者機関「AV業界改革推進有識者委員会」を発足させている。


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