ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
2010年度の論文資料集10号。詳細はこちらより
 
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その他 : 所在不明小中学生、国が実態把握へ 高木文科相が明言 (201

日時: 2011-01-08  表示:2138回

 住民票を残したまま行方不明になり、1年以上就学実態がつかめない小中学生がいる問題で、高木義明文部科学相は7日の閣議後会見で「教育権は憲法にも保障されており、義務教育期間に就学していない児童生徒がいることはあってはならない。実態把握のため地方自治体に周知徹底し、あらゆる機関と連携を取り、一人でも(不明者が)ないよう努めたい」と述べ、国として実態把握に乗り出す方針を明らかにした。
 文科省の調査では、今年度の「1年以上居所不明」な小中学生は326人。しかし、産経新聞の調べでは、19政令指定都市の8割が調査の趣旨を理解せず、不明者数を誤って回答するなど国の統計調査の空洞化が明らかになっていた。
 同省学校基本調査係は「住民の移動が激しい東京23区と政令市について年度内に再調査を行う予定」としている。

2011年01月07日 産経新聞

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<5>被害認定民事でや

日時: 2010-12-05  表示:2326回

知的障害の娘「おっぱいぎゅーされた」

 「被告人は無罪」

 2006年2月。強制わいせつ事件の控訴審判決が言い渡された。傍聴席の最後列で被害者の両親はうなだれた。「知的障害がある娘の証言は、信じてもらえないのか」

     □■□

 「おっぱいぎゅーされた」

 03年夏。千葉県内の特別支援学級に通っていた市立小6年の次女が、帰宅するなり、真っ赤な顔で自分の胸を両手でつかみ、40歳代の担任教諭から受けた性的被害を母親に訴えた。「こうやってされた」と、下着の中に手を入れるしぐさも見せられ、母親はショックで突っ伏して泣いた。警察に相談すると、「実際に被害を受けてないと、ここまで詳しく言えない。事実に違いない」と言われ、告訴した。

 逮捕後一時、容疑を認めた教諭は、刑事裁判で全面否認した。11歳だった次女の知的レベルは年齢の半分ぐらい。供述の信用性が問われた。つらい日々の始まりだった。

 母親は「娘には耐えられない」と訴えたが、次女への証人尋問が非公開で行われた。被告側から厳しい質問が飛んだ。尋問は1時間以上に及び、次女は混乱し、事実にないことまで口にした。被害の日時や場所の特定も困難だった。1、2審とも、次女の供述の信用性を否定。教諭の無罪が確定した。

     □■□

 無力感に打ちひしがれる両親に、次女の3歳下で、11歳になっていた三女が真剣な表情で切り出した。「お姉ちゃんがウソをつかないのは、うちらが一番わかってる。最後まであきらめないでやろう」

 障害者の問題に詳しい弁護士から民事裁判を打診されていた。「このままじゃ、終われないよね」。両親は覚悟を決めた。

 06年5月、教諭と県、市に慰謝料など約2000万円の損害賠償を求めて千葉地裁に提訴。被告側は全面的に争う姿勢を示した。

 民事判決は、刑事とは一転、被害の一部を認定、県と市に計60万円の支払いを命じた。胸を触られた被害について、母親に告白した状況が「真に迫っていた」と、信用性が初めて認められた。

 さらに、市の控訴で始まった2審の東京高裁判決は今年3月、下半身を触られるなどした日時不明の性被害についても範囲を広げて認め、賠償金額を計330万円とした。

 「性的虐待を受けた子どもの供述は揺れ、空想が交じりやすい」「知的障害者は日時の記憶が困難」との主張が受け入れられ、判決は〈被害の日時や回数について正確な記憶がなかったとしても信用性は否定されない〉と結論付け、〈(教諭の)行為は許し難い〉とまで言及していた。

 「勝ったんですか」。高裁の原告席で、判決をのみ込めずに母親が振り向くと、弁護団の1人がうれし涙を流しながらメモを取っていた。両親は肩を抱き合った。「ウソじゃないと証明された」。被害から7年がたっていた。

     □■□

 次女は高校を卒業し、東京都内の職業訓練施設に通う。今でも睡眠障害などに悩まされているという。

 母親は記者に訴えた。「泣き寝入りしてきた知的障害者は多いと思う。法廷を、弱者を苦しめる場ではなく、救う場にしてほしい」
(2010年12月2日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<4> 遺留物なく 「だ

日時: 2010-12-05  表示:2310回

立証被害者に重い負担

 捜査員の言葉に耳を疑った。「男の体液は検出されませんでした。強姦(ごうかん)そのものは未遂になります」。逮捕された男も「服は脱がせたが、何もしていない」と供述しているという。

 そんなはずはない。確かに当時の記憶はない。目撃者もいない。でも診断書にある体内の傷をどう説明するのか。

 反論しても、捜査員は「証拠がない」と、にべもなかった。私と犯人とどっちの味方なの――。心がささくれた。

     □■□

 咲恵さん(20歳代、仮名)は昨年8月、路上で車の男に道を尋ねられた。「地図を描いて」との頼みに応じ、持っていた缶ジュースから目を離したスキに睡眠導入剤を入れられた。男と会話中に意識を失い、翌朝自宅で目覚めた。シャツは裏返し、下着はかばんの中。体に違和感があり、出血もしていた。財布の紙幣も減っている気がした。

 家族の話では、未明に帰宅したらしい。意識を失ってから空白の時間がある。レイプの被害を確信し、警察に届けた。程なく男が逮捕されたが、強姦致傷容疑を否認。体液などの証拠が出ず、処分保留になった。

 被害者聴取で「未遂」の判断に納得がいかないと訴えると、捜査員に詰問された。「レイプされたと思う根拠は」「記憶があるの?」「男がつけた傷だとは言い切れないよね」。責められ、犯人扱いされているような気分に陥った。「だれも私を信じてくれない」。やがて心身のバランスを崩し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。

 密室性の高い性犯罪。既遂でも体液などの物証が出ないケースは珍しくなく、その場合、加害者と被害者の供述のどちらが信用できるか、の争いになる。元検事で性犯罪に詳しい吉沢徹弁護士は「記憶も遺留物もないとなると、被害者の立場は極めて不利。証拠で事実を証明する刑事裁判の大前提がある以上、不起訴処分になる場合もある。立証が難しいケースほど、被害者は精神的に追い込まれ、負担も大きい」と指摘する。

     □■□

 男は昨年12月、強盗強姦未遂罪で起訴された。起訴状には〈姦淫しようとしたが、目的を遂げなかった〉としかない。「傷を無視された」。咲恵さんの心に、わだかまりが残ったままだった。

 逮捕から1年余りが過ぎた今年11月、改めて検事に疑問をぶつけた。手応えはなかった。あきらめかけていた時、検事から「起訴状を書き換えます。傷について明記します」と連絡があった。検事によると、取り調べの過程で、男が咲恵さんの下半身を触った、とする供述もあったといい、傷の理由としてつじつまが合うと判断したという。

 うやむやに終わらなくてよかったと思う反面、なぜこれほど苦しまなければならなかったのかと悔しさが募った。

 同種の手口で犯行を繰り返していた男は強盗強姦罪など13件に問われ、来春、裁判員裁判で裁かれる。被害の立証に長い間翻弄されてきた咲恵さんは、併合審理される法廷で、男がどう事実を語るのか、見届けたいと思っている。
(2010年12月1日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<3>プライバシーどう

日時: 2010-12-05  表示:2274回

 〈裁判を傍聴し、意見陳述もしたい。でも、顔は誰にも見られたくない〉

 強制わいせつ致傷事件の被害女性から、そう要請を受けた男性弁護士(38)は、考え込んだ。西日本のある地裁で初めて性犯罪を扱う裁判員裁判が開かれようとしていた。「意向をかなえてあげたい。問題は、プライバシーを守れるかどうか、だ」

     □■□

 女性の代理人になったのは、ある“事件”がきっかけだった。女性を行きずりに襲った男が、逮捕されて2か月後の昨年6月、女性宅に謝罪の手紙を送りつけたのだ。

 「なぜ家がわかったの」。家族にさえ明かしていない被害。女性はおびえた。男は聴取中に捜査資料の住所を盗み見たらしい。これ以上プライバシーを侵害されたくない、という女性の強い意向を受けて、弁護士は動いた。

 まずは、裁判員の選任手続き。約100人の候補者名簿には住所も年齢もない。知人かどうかの特定は困難だった。中学から大学までの卒業名簿などを検事に渡し、同姓同名の人物を照合、排除してもらう方法をとった。

 別室からモニターを通じて意見陳述するビデオリンクでは、撮影について「顔を映さず首元から下に」と地裁側に求めたが、「表情を含めた陳述に意味がある」と却下された。交渉の末、陳述する部屋の照明を落とし、約10メートル離れた位置から撮る、ということで落ち着いた。法廷の様子を別室からモニターで傍聴する方法は、「制度上難しい」と拒否され、一般傍聴者に紛れて法廷に入るしかなかった。

 4件の性犯罪で起訴された男の判決は、求刑通りの懲役10年。女性は「自分の言葉で思いを伝えられてよかった」と話す一方、「やっぱり顔は映されたくなかった」と振り返った。ビデオリンクの手法は各裁判所の裁量に委ねられており、後に別の地裁では、顔を撮らない配慮がされた。

 弁護士は疑問を投げかける。「要望して初めてプライバシー保護策が検討される現状はおかしい。裁判所によって差があるのも問題だ。等しく保護されるよう、統一した対策を決めて、被害者に提示するべきではないのか」

 
(2010年11月30日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<2> 心の傷くみ取る

日時: 2010-12-05  表示:2308回

 神戸地裁で今年1月に開かれた強姦(ごうかん)致傷事件の裁判員裁判。検察官や裁判官らが、それぞれの席に設置されたモニターに一斉に注目した。画面には、別室で意見陳述する被害者女性の姿。顔は映されていない。ハンカチを握りしめる指が小刻みに震えていた。

 裁判員席に座った神戸市のケアマネジャー白石修三さん(33)は、居ずまいをただした。これまで気にとめたことさえなかった性犯罪。「正面から向き合う覚悟を迫られている」。涙ながらの陳述に耳を傾けた。

     □■□

 裁判員候補の呼び出し状に従って地裁を訪れ、抽選で6人の裁判員の1人に選ばれた。心の準備も整わないまま、午後からの審理に臨んだ。

 男(46)が「車のカギをなくした。一緒に探して」とウソをついて20代の女性を暗がりに誘い込み、強姦しようとしてけがを負わせた事件だった。

 「もう人を信じられない」

 厳罰を求めた女性の声が耳に残った。被害者は再び人に笑顔を向け、幸せな家庭が築けるようになるのだろうか。心に残り続けるだろう「見えない傷」に意識が向いた。提示された同種事件の判例は「軽い」と感じた。どうしたら被害者の訴えに応えられるか、思い悩んだ。

 一方、男は起訴事実を認め、主な争点は、強姦行為そのものが未遂だった点をどう評価し、量刑に反映させるか。「泣く女性をかわいそうに思って我に返り、犯行をやめた」と主張する弁護側に対し、検察側は「抵抗され、行為を続けるのが難しくなっただけ」と反論した。「被害者にとっては、未遂に終わった理由が何か、だけの問題ではないのに。女性の苦しみの深さをもっと考慮していいのでは」。違和感がぬぐえなかった。

     □■□

 「被告は、自己の意思で犯行を止めたため、未遂に終わり……」。審理3日目の判決公判。裁判長が量刑理由を読み上げる間、もう1人の裁判員、同市の主婦宮川美沙子さん(53)は、裁判員席から、顔も知らない被害者女性の姿を傍聴席に捜していた。

 女性は「抵抗されて断念した」と認定してほしかったはず。どう受け止めただろう、と気になった。

 意見陳述では、まとまりを欠く女性の言葉が、かえって胸に迫った。同じ年頃の娘をもつ。善意につけ込んだ被告をとても許せない、と憤りを覚えた。犯行状況や加害者の反省の情、前歴の有無など、客観的な事実を一つ一つ冷静に吟味するプロの裁判官とのギャップを痛感した。

 懲役6年の求刑に対し、判決は懲役5年。裁判員らは、弁護側が主張した懲役4年より重い結果を導き出した。ただ、被害者の苦しみに報いる判決だったかどうか。自問自答を続けている。

     □■□ 

 裁判員たちが感じた違和感やギャップ。「それこそが裁判員制度が始まった理由だと思う」と、白石さんは言う。「市民の感覚でこそ、被害者の気持ちをくみ取れる。法廷を変えていくのは、そんな素人の感性なのではないでしょうか」
(2010年11月29日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<1> 厳罰求め 必死

日時: 2010-12-05  表示:2361回

裁判員へ「人生の希望すべて壊された」

 「今も、死にたい気持ちと闘いながら日々の生活を送っています」

 今春、関東の地裁で開かれた強姦(ごうかん)致傷と住居侵入事件の裁判員裁判。傍聴席から見えないようついたてで仕切られた証言台から、被害者の弘子さん(仮名、20歳代)の震える声が法廷に響いた。

 裁判員にあえて顔をさらして意見陳述することを選び、読み上げる陳述書を何度も書き直した。直接訴えかければ、苦しみを理解して、加害者に厳しい罰を科してくれるはず――。背中を押したのは、正面に並ぶ6人の裁判員へのそんな「期待」だった。

 ◆◇◆

 

 その1年前、自宅で風呂上がりにくつろいでいると、ベランダから男が侵入し、襲われた。それからすべてが一変した。背後から押さえつけられ死を覚悟した瞬間が何度もフラッシュバックする。不眠、頭痛。通勤途中に気絶し、救急車で運ばれたこともある。診断は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)。被害を思い出す部屋から引っ越した。

 4か月後、犯人が捕まった。近くに住む若い男で、家族がいた。示談を断ると、〈心から謝りたい気持ちで一杯です〉〈早く罪をつぐなって妻子の元に戻ってあげたい〉と、独りよがりな謝罪の手紙が届いた。許せなかった。

 男はどんな罰を受けるのだろう。代理人弁護士にもらった過去の裁判の量刑一覧を見て、がくぜんとした。〈少女(13)を強姦、懲役2年6月><強姦致傷、懲役2年6月、執行猶予5年>

 「被害者の人生を壊しておいて、この程度の刑なんて」

 自分の事件が裁判員裁判になると知り、インターネットで懸命に情報を集めた。その年の9月に青森地裁であった性犯罪初の裁判員裁判は、女性2人が意見陳述し、求刑通りの懲役15年の判決。ほかにも、裁判長が「これまでの性犯罪の量刑が軽すぎた」とわざわざ言及し、重い刑を下した例もあった。「流れが変わりつつある。少しでも刑が重くなる可能性があるのなら、私も法廷に立とう」

 ◇◆◇

 審理は3日間。被害者参加制度を使い、検察官の後ろに設けられたついたての中で傍聴した。

 初日の冒頭陳述で被告側は、窃盗目的の侵入で、負傷もさせていないと一部否認した。〈窓が開いていた〉〈女性が裸同然の姿だった〉。被害者側に「落ち度」があったかのような主張に、怒りがこみ上げた。

 意見陳述が予定されていた2日目は、ストレスで吐き気と腹痛に見舞われながらも、気持ちを奮い立たせた。

 静まりかえった法廷。ついたての向こうで、男はどんな顔で聞いているのか。前を向いて言葉を絞り出した。「人生の希望すべてを壊された。一生、刑務所から出所できないようにしてほしい」。裁判員の表情までうかがう余裕はなかった。手にしたA4判3枚にびっしりとつづった思い。ただ伝えようと必死だった。

 「一般市民の処罰感情の上に立って、性犯罪の量刑を見直して下さい」。10分間の陳述をこう締めくくった。

 〈女性の被害感情は、量刑上、十分に考慮されるべきである〉。懲役8年の求刑に対し、判決は懲役6年。執行猶予を求めた被告側の主張は退けられた。判例から予想していた刑を上回る量刑だった。

 「被害者に直接話を聞くことで、事件の重大さがよくわかった」。判決後の記者会見で裁判員がそう話したと聞き、報われた気がした。

 ◆◇◆

 判決が確定した今も、不眠などの体調不良が続く。制度がないため、医療費や転居費も補償されないままだ。負担は大きかったが、法廷で意見陳述したことに悔いはない、と弘子さんは言う。「性犯罪の量刑が低かったのは、被害がどんなに深刻か知られていなかったから。量刑を見直す方向へ少しでも動かせたのなら、意味はあったと思う」

 ◇

 裁判員制度が始まって1年半。性犯罪を扱う法廷で何が起きているのか。関係者の声を聞き、制度への期待と不安、司法を巡る課題を探る。
(2010年11月28日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<6> 再犯防止へ

日時: 2010-12-05  表示:2321回

前歴者と向き合う ボランティア活発

 カナダは性犯罪の前歴者を更生に導く取り組みが活発だ。中でも、家族や友人のような関係を築いて出所者の社会復帰を促すボランティアグループ「CoSA」(支援と責任の輪、Circles of Support and Accountability)の活動は、「再犯防止に効果的」と評価され、カナダにとどまらず米国やヨーロッパにも広がる。発祥の地・カナダ東部を訪ねた。

     □■□

 「最初はただ、彼を助けたい一心だったんです」

 五大湖の一つ、オンタリオ湖畔の町・ハミルトンの牧師、ハリー・ナイさん(64)は、懐かしげに「チャーリー」のことを語り始めた。

 本名、チャールズ・テイラー。男児への4度の性虐待で7年服役し、1994年に40歳で出所。身寄りもなく、ナイさんが身元を引き受けた。

 カナダでは性犯罪の前歴者の出所が報道されることがある。再犯リスクが高いとされたチャーリーも例外ではなかった。「要注意」と書いた顔写真入りのビラがまかれ、町は騒然となった。

 「彼はモンスターじゃない。人として接してやりたい」。ナイさんは思案の末、教会の信者と6人で、支援サークル「チャーリーズ・エンジェル」を結成。週1回、チャーリーを囲み、コーヒーを飲みながら語り合うことにした。誕生日や出所記念日は必ず一緒に祝い、「君を思っているよ」と繰り返し言葉をかけた。

 「僕には『家族』がいる」。チャーリーも次第に心を開き、交流を深めた。

 周囲は「1か月で再犯する」と恐れ、活動にも冷ややかだったが、3か月たっても再犯の気配はない。警察は効果に驚き、新たな出所者の受け入れを依頼するまでに。連邦政府も助成を始め、CoSAの輪が広がった。

     □■□

 現在、カナダ全土で120以上のサークルが、再犯の恐れが高い満期出所者を受け入れる。出所者1人に対し、研修を受けた4〜7人のボランティアが集い、サークルを結成。保護観察官、精神科医らとも連携し、更生を支える。

 首都オタワで活動中の6サークルを取りまとめるスーザン・ラブさん(57)は、「性犯罪者の自分には生きる価値がない」と自暴自棄になる出所者を何人も見てきた。その度に「改心したのなら犯罪者じゃない。私たちは今のあなたを見ている」と諭す。それぞれの生育歴や性的嗜好(しこう)も把握した上で、再犯の兆しがないか目を光らせ、「責任ある社会人」としての自覚を促す。「迷惑がって排除するだけでは再犯の恐れはかえって強まる。孤立させないことが重要」と話す。

 連邦矯正局の調査では、CoSAの支援を受けた出所者の再犯率は2・3%。支援を受けなかった場合の16・7%を大きく下回った。

     □■□

 チャーリーは2006年、52歳で病死した。出所から12年、再犯はなかった。

 ナイさんは言う。「失いたくないものがあれば再犯なんてできない。『大切な人を悲しませたくない』という気持ちが歯止めになるんです」

 そして、「家族」に囲まれた生前のチャーリーの写真を見せて、語りかけた。

 「性犯罪者を恐れ、憎むのは自然なこと。でも誰かが向き合わないと。社会の一員として迎え入れることが、地域の安全を守る近道なのです」

      ◇

 性暴力を巡り、各国で、それぞれの国情を反映した独自の取り組みが進んでいる。日本にふさわしい施策とは。突きつけられた課題は大きい。(おわり)

 社会部・久場俊子、佐々木栄が担当しました。

 <カナダの性犯罪者対策> カナダの性犯罪者対策刑務所では再犯リスクに応じた矯正処遇プログラムを1997年に導入。仮出所者が刑期満了まで入居できる、16の国営施設があり、矯正教育や就職支援を行う。日本は、2006年、カナダをモデルにプログラムを導入したが、出所後の再犯防止策が手薄。住民感情に配慮し性犯罪前歴者を受け入れない更生保護施設も多く、“塀の外”の受け皿が少ない。
(2010年10月20日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<5>再犯「薬物で

日時: 2010-12-05  表示:2236回

国民の怒り、厳罰化進む

 6月29日、韓国の国会で、「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療法」が可決された。

 子どもへの性犯罪で逮捕されて性倒錯症と診断された者に対し、心理療法と併せ、性欲を抑える薬物を強制的に投与し、再犯を防ぐのが狙い。2年前の提出から棚上げ続きだった法案が突然復活、スピード通過した。背景には、一つの事件があった。

 〈真昼に……運動場で小学生を拉致して性暴行〉

 日刊紙・韓国日報が報じた6月9日付朝刊のスクープは、大きな衝撃を呼んだ。

朴敏植議員

 その2日前の同7日朝、首都ソウル中心部で、小学2年の女児(8)が男(45)に連れ去られ、性的暴行を受けた。子を持つ親たちを震撼させたのは、拉致現場が公立小学校の運動場、という事実だった。

 小学校を訪ねた。通行量の多い大通りに面している。韓国では多くの小学校が市民に開放されている。男は誰にも注意されずに校内に入り、1時間近くうろついた末、女児に近づいたという。

 「部外者は無断立ち入り禁止です」。正門で警備員ににらまれた。事件後、警備が厳しくなったらしい。近くで待ち合わせしていた女児2人は「1人で遊ばないよう、お母さんから注意されているの」と手を握り合った。

 男に性犯罪の前歴があったことが、国民の怒りと関心に火をつけた。メディアは国の対策不備を責めた。4か月前にも、釜山市内で10歳代の少女が前歴者に強姦、殺害される事件があったからだ。

 事態に素早く反応したのが、与党・ハンナラ党。「薬物による性欲制御は人権侵害」との反対を受け2年間、保留になっていた法案を拾い上げ、わずか1日で法制司法委員会と本会議を通過させる“荒業”で世論に応えた。法案を発議した元検事の朴敏植議員は「今も批判は確かにあります」と苦笑しながらも、強調した。

李昊重教授

 「電子足輪だけでは限界がある。犯罪に向かう性欲を自分で抑制できないなら、薬物と心理療法で制御するしかない。国民の安全のために、国の管理が必要なんです」

 審議過程で当初案が薬物投与の条件とした「本人の同意」は削除され、対象は「25歳以上」から「19歳以上」に。厳しく修正された法が、来年7月に施行される。

 〈児童への性暴力犯罪との戦い〉。事件が相次ぐ中、そんなスローガンが叫ばれる韓国。今年7月、韓国版ミーガン法とも言える、前歴者の身元情報の公開が専用サイトで始まった。来年1月には、前歴者と同じ町内に住む、未成年者がいる全世帯に情報を郵送する制度もスタートする。

 電子足輪、薬物投与、前歴者情報公開――。厳罰傾向を強める国情を懸念する声も聞こえる。

 李昊重・西江大教授(刑法)は言う。「国は事件が起きる度、国民の怒りを静めようと、十分な議論もなく極端な対策を立ててきた。これでは、自暴自棄になった性犯罪者が犯罪に走る悪循環に陥りかねない。啓発教育など、性暴力を生む社会背景に目を向けた、もっと地道な対策が必要だ」
(2010年10月19日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<4>前歴者にGP

日時: 2010-12-05  表示:2178回

再犯は1人、心理的圧迫も

 ソウル保護観察所の一角にある韓国法務省の「位置追跡中央管制センター」。2008年9月から、全地球測位システム(GPS)による性犯罪前歴者への行動監視を始めた。その監視拠点を訪ねた。

 「これが行動履歴です」。担当者がパソコンを操作すると、大型モニターの地図上に、ジグザグの線が映し出された。前歴者が着けたGPS付き足輪から分刻みで送られてきた位置情報のポイントを結んだもので、市内を移動する様子が手に取るようにわかる。ポイントの間隔から、車に乗っているのか、歩いているのかさえも推測可能だ。
電子足輪

            ◇

 監視対象は、常習的な性犯罪者や、子どもへの性犯罪を行った者。後に、未成年者略取誘拐、殺人の前歴者なども追加された。仮釈放期間中や、判決時に裁判所の命令を受けた者に出所後最長30年間、装着を義務付けている。

 「これまで777人が電子足輪を着けましたが、性犯罪の再犯は1人だけ。抑止効果はある、と言ってよいのではないでしょうか」。センターの李承旭・保護事務官は力を込めた。

 入り口に「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたモニター室があった。位置情報は、足輪から1分ごとに衛星を通じてここに送信され、巨大なスクリーンに映し出された韓国全土の地図上に、装着者全員の居場所が瞬時に表示される仕組みだ。精度は10メートル単位で、地下にいても追跡可能。刻々と変わる位置情報は、24時間態勢で監視・記録される。

 装着者には、夜間外出禁止や、学校周辺への立ち入り禁止など特別遵守事項も同時に課すことができる。禁止区域に近づけば、モニター室で警報が鳴る。装着者本人には、携帯を義務付けている専用の端末に警告メールを発信するという。

 「着けてみますか?」。促されて恐る恐る試した。形は、プールのロッカーなどで使われる鍵付きのリストバンドに似ている。80グラム。重さはほとんど気にならない。完全防水で入浴も問題ないという。

 一番太い所で幅6センチほど。「半ズボンは、はけませんね」と言うと、「ええ、大抵は上から靴下をはいて隠すようです」と担当者。周囲に知られないためには、生活上の制約は避けられないようだ。

            ◇

 足輪装着者で唯一、再犯に至った男は、仕事もなく、家に閉じこもりがちな生活をしていたといい、逮捕後、「電子足輪に心理的な圧迫を感じていた」と供述した。

 強盗強姦罪で服役し、仮釈放から1か月余りの08年11月、コーヒー配達の女性をビル屋上に誘い出し、再び強姦事件を起こした。足輪の位置情報の記録から犯行時間帯に現場にいたことが裏付けられ、2日後に逮捕された。

 韓国法務省が、仮釈放後に電子足輪を着けた186人を対象にした09年の調査では、83%が「不法行為を自制」、65%が「再犯抑止効果がある」と答えた一方、64%が「心理的な苦痛を感じる」と回答した。故意に足輪を破壊した場合、7年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金刑だが、足輪を壊して逃走する事件は、すでに8件起きている。

<電子監視> 1983年、米国が刑務所の過剰収容の解決策として導入。当初は、足輪や腕輪の信号を自宅に設置した機器で受信する「在宅確認型」が主流だったが、90年代以降はGPSによる「追跡型」が、主に欧米で広まった。「社会復帰を妨げる」などとの批判も根強い。日本の法務省は今年度、韓国など導入国7か国を視察し、運用状況や効果を調査する。
(2010年10月18日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<3>つらい記憶 聴

日時: 2010-12-05  表示:2217回

子ども被害「事実どう引き出すか」

 隣国の韓国では、性暴力被害者の支援態勢が米国並みに充実しつつある。相次ぐ子どもを狙った事件が社会問題化し、ここ数年で官民一体の取り組みが急速に進んだ。

 その象徴が、24時間態勢で治療や事情聴取、カウンセリングなどを1か所で行う「ワンストップ支援センター」だ。全国に20ある施設の一つで、子どもの性被害対策に力を入れる「釜山ひまわり女性児童センター」では、繰り返し聴取されることによる子どもの負担を取り除くための面接技法「司法面接」が実践されていた。

 釜山市最大級の医療機関・東亜大学病院内の一角。約320平方メートルのスペースの半分が子ども専用。内装は明るく、キリンなどのぬいぐるみが所々に飾ってある。幼稚園のような雰囲気だ。

 「威圧感を与えぬよう、制服は着ません。最初に安心させるのが大事ですから」。常駐の女性警察官、李東熹(イドンヒ)さん(34)は、カジュアルな赤いチェックのシャツにジーパン姿で笑顔を見せた。

 李さんの案内で「陳述録画室」に入った。8畳ほどの部屋の中央に、円テーブルがある。専門的な訓練を受けた面接員が、ここで子どもに対面、被害事実を聴き取るという。李さんもその一人だ。

 事件担当の捜査員はマジックミラーの向こうで立ち会い、質問があればパソコンを通じて面接員に伝える。聴取はできる限り1回、最大1時間程度に抑え、保護者や本人の同意を得た上で録画し、裁判で証拠として提出する。

 「加害者を怖がったり、自分を責めたりして口をつぐんでしまう子も。いかに最大限、事実を引き出すかが重要」

 男女の人形が数体あった。アナトミカル・ドールといい、性器や体毛などもついている。子どもが言葉でうまく表現できない場合に使う。

 李さんは先日、対面した少女のことを振り返った。証言をためらい、男性人形を手にしたまま黙っている。緊張を解きほぐし、「何があったか教えてくれる?」とたずねると、人形を動かし、被害を再現し始めた。「胸を触られた」としか言わなかったが、ほかにも深刻な被害を受けていたことがわかったという。

 「司法面接」の技法は、1980年代から欧米で普及した。韓国は2004年に導入。16歳未満の性暴力の被害者と知的障害者が対象で、本人に告訴の意思がある場合に行われる。児童心理に詳しい専門家が意見書をつけ、録画内容の証拠能力を担保している。

 「つらい記憶を何度も思い出させられるのは大きなストレス。それを避け、信用性の高い証言を引き出せる」。李さんは有効性を強調した。

 センターには、相談員や提携の看護師もおり、検査や心理療法を無料で提供。家庭内の被害では、子どもを民間保護施設につなぐ。来所後3年間はカウンセラーが連絡を取り、アフターケアする。

 今年1月の開所以降、月20〜25人の子どもが訪れ、その9割が司法面接を受けた。

 「ここに来れば、様々な支援を受けられる。告訴率はますます上がると思う」。李さんの言葉に、性暴力と闘う強い意志がにじんだ。

 <司法面接> 裁判の証拠とすることを想定し、研修を積んだ面接員が、子どもの発達に応じた質問で正確な事実を聴き出す。米国では約700か所ある専門機関で実施。日本では、一部の児童相談所で虐待被害の聴き取りに、技法が用いられているが、司法手続きを前提とした活用はされていない。
(2010年10月17日 読売新聞)

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