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売買春 : 橋下氏発言、風俗業の女性に波紋 私たちは暴力のはけ口か (2013.05.25)

日時: 2013-05-25  表示:2916回

毎日新聞 2013年05月25日 大阪朝刊

 「風俗業は性犯罪の受け皿ではない」「風俗業の活用というなら安全な職場を考えてほしい」−−。日本維新の会の橋下徹共同代表が沖縄県の在日米軍に風俗業の活用を提案したのを機に、風俗業自体が注目を浴び、従事する女性たちの間で波紋が広がっている。客の暴力行為や性感染症など、風俗店で働く女性の労働環境は安全とはいえない。セックスワーカー(性労働者)の実情に詳しい専門家らは「これを機に、風俗業で働く女性たちの環境や背景に関心を持って」と訴える。【反橋希美】

 橋下氏は在日米軍に風俗業の活用を進言((1))したことについて「表現がつたなかった」(16日)として不適切だったと繰り返しているが、撤回は明言していない。発言を機に、ネット上では「確かに性犯罪抑止には有効」「そもそも風俗業自体が女性の人権を踏みにじっている」などと風俗業のあり方について発言する人が相次いだ。

 ◆「性犯罪抑止に有効」
 ◇恐怖に耐えながら

 性犯罪対策として風俗業利用が有効だとする意見について、今年2月まで関西の風俗店で働いていた京都市の女性(37)は「確かに風俗店は性欲を解消できる場だが、性犯罪は性欲の形を借りた暴力だ。暴力を受け止めるために用意される存在はあってはならないはずで、政治家が堂々と、私たちの体と人権を軽視する発言をしたことに驚いた」と憤る。

 女性は30歳から風俗店で働き始めた。違法行為である性交を求められることは「しょっちゅう」。無店舗型風俗店(デリバリーヘルス)で働いていた時、痛みや恐怖を感じる行為を強要されたこともあったが、ホテルの個室に2人きりのため、助けを呼ぶのも容易ではなかったという。「いつ犯罪に遭うか『ロシアンルーレット』のような感覚だった」

 性感染症の予防も労働者側が自己防衛するほかなく、女性は定期検査に行くなどしていたが、3カ月前に感染症にかかり休職中だ。女性は「リスクを承知で働いているのではと言われるが、自由意思で働くことと、労働環境が守られることは別。行政トップがこうした現状を見ずに活用を勧めるのは、能天気すぎる」と批判する。

 ◆「建前言っておれぬ」
 ◇合法と裏腹の実態

 大阪府立大の東優子教授(ジェンダー論)は、橋下氏の発言に対し「『男性の性欲や衝動は抑制できない』といった前時代的で誤った価値観を持ち続けたまま、性暴力の防波堤に生身の女性を差し出す発言で言語道断」と批判。風俗店で働く女性の環境について「私たちは彼女たちが安全ではない状況に日々直面していることに無関心であってはならず、政治的指導者であればなおさらだ」と話す。

 東教授らが2009年度、関東圏を中心に性風俗店の女性従業員約350人に行った調査では、21%が客からストーカー行為をされたことがあり、7%が暴力をふるわれていた。安全に働くために必要なものとして「客のモラル向上」「信用できる経営者の運営体制」「相談機関や専門職によるサポート」などが挙げられた。

 風俗業の問題について研究、政策提言をしている社団法人「ホワイトハンズ」(新潟市)の坂爪真吾代表理事は「風営法上、風俗業は届け出さえすれば営業できるため、女性がトラブルに巻き込まれたり、性的虐待まがいのサービスが行われたりする『無法地帯』になっている。この30年、無店舗型の風俗店が増えたり、広告が規制されたりして、一般の人から風俗業がますます見えなくなっている」と指摘する。

 風俗業で働く女性のための健康情報サイト「ガールズヘルスラボ」(http://www.girls-health.jp/)を運営するタミヤリョウコさん(42)は「橋下氏の発言をきっかけに、どんな立場の女性でも性の健康が守られるべきだという視点で、風俗業で働く女性たちに関心を持ってほしい」と訴える。

 ◆「貧困から、皆無」
 ◇逃げ込む場として

 橋下氏の発言に関しては「日本の現状からすれば、貧困からそこ(風俗業)で働かざるを得ない女性はほぼ皆無」といった主張((2))について、「現状と異なる」と指摘する声も上がっている。

 長く風俗店に勤め、業界に詳しい水嶋かおりんさん(30)=東京都内在住=は、「実際には精神疾患や借金、性暴力被害のトラウマを抱えている人や、仕事が見つからないシングルマザーら仕方なく働く人も多く『シェルター』的な役割もある」と指摘。「今回の件で『女性の権利を侵害している』と風俗自体を否定する意見も耳にした。有識者には、そうした是非論に終始せず、働かざるを得ない女性に寄り添いながら具体的な支援策を考えてほしい」と話す。

 ■風俗業を巡る橋下氏の発言■

 【13日】

(1)普天間飛行場に行った時、「もっと風俗業を活用してほしい」と言ったら、米海兵隊司令官は「米軍では禁止している」と。そういうものを真正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーはコントロールできない。(午後、記者団に)

 【14日】

(2)批判者は、風俗業=売春業=性行為と短絡的に考えているね。日本人は賢いから、性行為に至る前のところで、知恵をこらしたサービスの提供を法律の範囲でやっているよ。今の日本の現状からすれば、貧困からそこで働かざるを得ないと言う女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すればよい。(午後、ツイッターで)

 【15日】

 性犯罪を犯すほど性的エネルギーが充満している者に、そのコントロール策をしっかりと教えるのに、建前は言ってられない。これは少年に対する指導と同じだ。体裁を採るか実を採るか。僕は実を採る。(同)

 【16日】

 (米軍に風俗業活用を提案したことについて)表現がつたなかった。国際感覚に乏しかった。ただ、趣旨として撤回するとは思っていない(午前、記者団に)

 【22日】

 (27日予定の日本外国特派員協会での記者会見で、風俗業の見解をどう説明するかと問われて)不適切だったということと、言葉を間違った、認識を間違ったということをしっかりと伝えたい。(午後、記者団に)

==============
 ◇風俗業

 合法な性風俗店は性交を伴わない性的なサービスを行う店で「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」に基づき、都道府県公安委員会に届け出をし、営業する。ソープランドなどの店舗型と、ホテルや個人宅などでサービスを行う無店舗型があるが、現在は無店舗型が主流で「監視が行き届かず、働く女性の危険度が増している」との指摘がある。売春防止法で対価を受け性交することは禁じられているが、「店側は関知していない」という建前で性交が行われている店も多い。


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