夕刊フジ 10月6日(月)16時56分配信
元恋人や元配偶者が、復讐のために別れた相手の裸の写真や動画をインターネット上に流出させる「リベンジポルノ」。昨年10月、東京都三鷹市で発生したストーカー殺人事件で注目され、被害の実態をテーマにした映画も製作されるなど大きな社会問題となっている。スマートフォンが普及し、無料通信アプリ「LINE」などのコミュニケーションツールが浸透するなかで、卑劣な嫌がらせ行為の被害は、女子中高生の間にまで広がっているという。
スマホ片手に、鏡の前で身につけた衣服を1枚ずつ脱いでいく若い女性。
パシャリ。
カメラに収めた自分のあられもない姿は、LINEを通して交際相手の男に送信される。
「もっと大人っぽい姿が見たい」
男の要求は次第にエスカレートし、女性は求められるままにプライベートな部分をさらけ出していく。
8月30日に東京・六本木のシネマート六本木で限定公開された映画「リベンジポルノ」の一幕だ。女優、七海(ななうみ)なな(25)が、交際相手とのトラブルからリベンジポルノの危機にさらされる、女優志望の女子大生を主演した。
監督の羽生研司氏(47)は企画の意図を「リベンジポルノは、被害者、加害者、そしてその周囲の誰1人幸せにしない。インターネットの手軽さが怖さになる。その部分を映画を通して伝えたかった」と語る。
映画のテーマにもなるほどに認知されてきたリベンジポルノの恐怖。
その存在が世間に広まる契機になったのが、昨年10月、東京都三鷹市で起きたストーカー殺人事件だ。被害者の女子高生=当時(18)=は、フェイスブックを通じて知り合った加害者の無職男(22)と交際上のトラブルから殺害された。事件直前、男は、交際時に撮影した女子高生のプライベートな画像や動画をネット上に流出させていた。
自民党が対応策の検討に乗り出すなど、法規制に向けた動きも出てきているが、事態がより深刻なのは、被害が中高生にまで広がっている点だ。
ネット上でのトラブル相談を受けつけている「全国webカウンセリング協議会」理事長の安川雅史氏は、「三鷹の事件以降、被害相談が急増した。特に目立つのが中高生からの相談。事件前から潜在的な被害者が相当数いたということだ」と説明する。
安川氏によると、同会に寄せられる相談は、昨年まで月平均1〜2件程度だったが、現在は同30件にまで増えているという。驚きなのは、相談者の約9割が女子中高生だということだ。
「リベンジポルノという言葉が浸透してから、不安になって自分の画像をネット検索して見つけたというケースが目立つ。警察にも親にも相談できず、やむにやまれず、うちに駆け込んできた子どもたちがほとんどだ」(安川氏)
被害内容は、大きく2パターンに分かれるという。ひとつが、別れた交際相手とのトラブルから被害に遭うケース。もう一方が、ネット上での疑似恋愛のような関係から相手に自分の裸の画像を送ってしまい、リベンジポルノの“標的”となるケースだ。
「知らない相手だからこそ大胆になるという心理もあるようだ。周囲のことが見えなくなって冷静な判断ができなくなってしまう。そういう心の隙間を相手に利用されてしまう」(同)
いまや、カメラが内蔵された携帯電話やスマホが普及し、気軽に画像や映像がやりとりできる時代だ。
LINEやツイッターなどを通して、不特定多数の人とコミュニケーションが取りやすくもなっている。リベンジポルノとは異なるが、先月には米女優のジェニファー・ローレンス(24)ら海外セレブらのヌード写真が大量流出して、大騒動となった。
軽い気持ちでの撮影や送信が、取り返しのつかない事態を招きかねない。被害に遭わないためにはどんな対策を取ればいいのか。
先の安川氏は、「被害に遭う人の多くは、メールやLINEで一方的に別れを告げている。対面できちんと話し合い、お互いに納得した上で別れていれば、相手が恨みを募らせることもない。あと、自分のプライベートな画像や映像を絶対に送らないこと。交際相手へのプレゼント感覚だったり、2人だけの秘密を共有するという感覚になっていたりする人も多いが、親しい間柄でも一線を引かなければいけない」と警告する。
もし被害に遭ってしまった時は、相手からの脅迫内容を記録し、早めに、不正な書き込みなどを削除する民間機関「インターネット・ホットラインセンター」などに相談することが大事だという。リスクは、すぐ目の前にあるということを肝に銘じておかなければいけない。