昨年、県警に寄せられた配偶者や恋人などからの暴力(DV)の相談件数が、DV防止法が施行された2001年以降、最多の456件に上ったことが、県警のまとめでわかった。傷害などの刑事事件に発展したケースも17件あり、問題の深刻化がうかがえる。県警はストーカー対策室をストーカー・配偶者暴力対策室に改称し警部補1人を増員するなど対応の強化に乗り出しており、生活安全企画課は「DVは家庭内で解決する問題ではなく、犯罪行為。泣き寝入りせず、まずは警察に相談してほしい」と呼びかけている。(林宏美)
鹿児島市で昨年5月、夫が妻の顔面を殴って2週間のけがを負わせたとして、傷害容疑で鹿児島南署に逮捕された。夫は以前から妻に暴力を振るっており、耐えかねた妻が家を出ようとしたことに腹を立て、犯行に及んだという。夫婦はいずれも30歳代だった。
生活安全企画課によると、DV相談件数は前年比で52件増加。相談者の99%は女性で、20〜30歳代が半数を占める。殴られたり、けられたりといった身体的暴力が全体の約8割に上るが、強圧的な言葉による精神的暴力、生活費を渡さないなどの経済的暴力も少なくないという。
県警では、相談者に対して〈1〉被害者を保護する緊急避難所(シェルター)に入所するよう勧める〈2〉加害者側に警告を与える〈3〉DV防止法に基づき裁判所に保護命令を申し立てるよう助言する――といった対応を取っている。
ただ、相談者の中には、「夫に前科がつくと、子どもがかわいそう」と事件化を避けたり、「夫婦関係を壊したくない」と警察の介入を拒んだりするケースもあるという。
同課は「相談数は増加しているが、まだまだ夫婦間の問題が表に出ることにためらいを感じる人も多い」と指摘した上で、「安心して相談できるよう女性警察官が対応したり、行政機関と連携したりして、問題解決を図っていきたい」と話している。
(2011年2月6日 読売新聞)