2013年03月13日 産経新聞
「何してるー」。阪急電車の車内で、座っている女性に下半身を露出してこすりつけていた男(41)をカトリック教会司教の松浦悟郎さん(60)=大阪市中央区=が一喝し、取り押さえた。先月12日の昼下がりだった。男は停車した茨木市駅で茨木署員に公然わいせつ容疑で現行犯逮捕された。アイコンタクトでSOSを訴えた女性。女性の表情に異常を感じ、行動を起こした松浦さん。男の卑劣な行為から逮捕までの詳細を松浦さんから聞いた。(山崎成葉)
事件は午後2時過ぎ、梅田発河原町行き特急電車の6両目車内で起きた。
30歳前後の女性が2人掛け座席の通路側に座っていた。男は女性の左斜め後方に立っていた。平日の昼間で乗客は少なく、立っていたのは淡路駅から乗った松浦さんと男だけだった。
松浦さんがぼんやりと車内全体を見渡していると、女性が困ったような、嫌うような顔で男の方を見た。その女性の表情に「もしかして男が変なことをしているのではないか」と感じ、注意深く観察した。
黒っぽいコートを着た男は窓の方向を見ていたが右手だけは動いていた。体が少し揺れたとき、コートが開き、男が下半身を露出しているのが見えた。
松浦さんは目をこらしながらタイミングを計り、男がもぞもぞし始め、「何か押しつけているのでは」と感じた瞬間大声で叫んだ。
「何してるー」
「僕は何もしてません」
男は叫んだが、ドアまで引きずり、ちょうど到着した茨木市駅で降ろした。
「駅員さーん」。強い力で引っ張る男を押さえ続けた。駅員に引き渡す瞬間、男は逃げ出したが、騒ぎに気付いた乗客の男性が取り押さえてくれた。
「ずっと後ろで何かがあたっていたような感じがした」という被害女性の左肩には、男の体液のようなものが付いていた。警察が重要な証拠として採取した。
会社経営という男の逮捕後、女性は「(松浦さんに)SOSを送っていた。アイコンタクトで『助けて』と言っていたのに気付いていただいた」。ただ、現場では冷静だった女性も男の卑劣な行為に悲しくなり、警察署では涙を見せていたという。
松浦さんは身長165センチ。男は170センチを超え、20歳ほど若いが、「まったく怖くなかった」と振り返る。そして、「犯罪を見て見ぬふりをするようなことには憤りを感じていた」といい、「もし殴られたら、それも罪状に加えるまでだと思った」と話していた。