西日本新聞 2020/8/22
福岡市のJR博多駅周辺などで女性を風俗業に勧誘したとしてスカウトの男7人が逮捕された事件で、福岡県警博多署は21日、女性を風俗店に紹介したとして職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで、スカウトグループ「COCO(ココ)プロダクション」のリーダー川崎祐哉容疑者(25)=住所不定=を新たに逮捕したと発表した。同プロダクションは県内最大規模のグループで、過去約3年の間に風俗店に数百人の女性を紹介したとみられる。
また、県迷惑防止条例違反(スカウト行為など)容疑で7月に逮捕していた男7人のうち4人も、21日までに職業安定法違反容疑で再逮捕した。川崎容疑者ら5人の逮捕、再逮捕容疑は5〜7月、18〜32歳の女性4人を福岡市・中洲や北九州市のソープランドに紹介した疑い。いずれも容疑を認めているという。
署によると、再逮捕された4人のうち2人は同プロダクションに所属。メンバーが路上で女性を勧誘し、川崎容疑者が県内外の知り合いの風俗店に女性の写真を送り、雇用先を見つけていたという。
署は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減った女性を狙ったスカウト行為が横行しているとみて、一斉摘発に乗り出していた。店側から月100万円超の紹介料を受け取った容疑者もおり、稼ぎの一部が暴力団の資金源になっている可能性もあるとみて調べる。
「ナンパが仕事」女性手玉 コロナ禍で収入減 強引なスカウトも
九州最大の歓楽街・中洲がある福岡市では、女性を夜の街の仕事に誘うスカウトが暗躍してきた。自力で女性従業員を確保するのが難しい店側と、多額の「紹介料」を得られるスカウトは互いに持ちつ持たれつの関係にあるが、女性を風俗業に紹介するのは違法な行為。新型コロナウイルス感染拡大の波にさらされ、夜の街は静か。スカウトの収入も減少し、強引な声掛けが目立つようになったことが、警察の取り締まり強化につながった。
「最初は100人に声を掛けても、何とか1人に話を聞いてもらえるくらいだった。でも、どんな子ならうまくいくのか分かってきた。ナンパが仕事ですよ」。約5年前から活動するスカウトの男性は明かす。
キャバクラ、ソープランド、デリバリーヘルス(派遣型風俗店)…。紹介する仕事は多岐にわたる。男性は「どれぐらい稼ぎたいか、女性からしっかり話を聞いて店を紹介する。店と交渉し待遇を良くしてもらい、スカウトを通すメリットも示さないといけない」。
収入は女性を紹介した店から支払われる「スカウトバック」だ。「キャバクラなら女性の売上額の10%、風俗店なら15〜20%が相場。女の子が働いている限りずっと受け取れる」。多いときは約30人の女性を抱え、月の収入は100万円を超えた。
女性が辞めないよう、店に紹介した後も頻繁に連絡を取る。捜査関係者は「女性は家族や友人にも言わずに働いている。親身なふりをして、スカウトにしか困り事を相談できない環境をつくっている」と苦り切る。
中洲の風俗業界に詳しい男性によると、店側の求人だけでは女性は集まらないことから、多くの店がスカウトを利用しているという。しかし、合法な風俗店であっても女性をあっせんすれば、職業安定法違反(有害業務の紹介)に当たる。店側も罪に問われるケースがある上にスカウトバックの負担も大きいが、「働き手がいないのが何より困る。スカウトに頼らざるを得ない」と内情を説明する。
こうした状況は、新型コロナの感染拡大で一変した。夜の街への客足が激減し、「紹介した女の子の3割ぐらいが店を辞めて昼の仕事に移った」(スカウトの男性)。スカウトの収入も減り、「初対面の女性にいきなり風俗店を紹介したり、手当たり次第に声を掛けたりする乱暴な連中が出てきた」(同)という。
福岡県警博多署によると、今年1〜6月、スカウトに関する通報や相談は35件。緊急事態宣言が解除された5月中旬以降に目立つようになった。署は摘発を進めるとともに、今月7日、博多駅前でJR九州などと協力してパトロールし、スカウト撲滅を訴えた。
中洲の風俗店関係者は言う。「『博多署がスカウトをつぶす』といううわさが広まり、街からスカウトが姿を消した」 (古川大二)