sankei 2013.8.19 07:29 (1/2ページ)
社会的立場が弱いため困難を抱えがちな女性の社会問題を解決しようと、「女性と人権全国ネットワーク」が東京都内で結成された。長年、DV(ドメスティックバイオレンス)などの被害者支援に携わってきた女性らが政治を変えるために立ち上げた任意団体。将来的には政治に参加し、「日本の政治に一石を投じたい」としている。(清水麻子)
◆女性地位の向上
呼び掛け人は、DV問題の研究に携わってきた、お茶の水女子大学名誉教授の戒能民江(かいのう・たみえ)さんや、親からの虐待などにあった少女たちを支援中のNPO法人「bond Project」代表の橘ジュンさん、セクシュアルハラスメントの被害者支援に取り組む「パープル・ユニオン」執行委員長、佐藤香さんら。いずれも女性問題の研究や当事者支援の第一線で活躍中だ。
6月末に11人だった呼び掛け人は、同ネットワークのホームページ(http://projectjapanwomen.net)などを通じて広がりを見せ、約130人にまでなった。趣旨に賛同する人も約200人に増えた。
同ネットワークが目指すのは、女性の人権確保や地位の向上。戦後、婦人運動の高まりとともに女性の社会進出は進んだが、いまだに女性の人権が大切にされているとはいえない。
例えば、女性は子育てを口実に、働きたくてもパートや派遣といった非正規労働者としての不安定就労を余儀なくされがち。フルタイムの正社員の賃金ですら男性の7割の水準で、管理職に就く女性も少ない。職場でセクハラ被害に遭っても労災被害として認定されることは少ない。
児童ポルノなど少女への性暴力被害も深刻の一途をたどっている。
◆社会の関心低い
呼び掛け人らはこれまで、当事者支援の中で浮かび上がった課題を解決しようと、政府に要望書を提出したり、シンポジウムを開催したり、超党派の国会議員に働きかけたりするなどして改善を求めてきた。
しかし、女性の国会議員が少なく、女性の声を代表する組織がないため、課題は山積。同ネットワーク事務局の小森雅子さんは「先の参院選でも女性の人権に関する政策に注目したが、政党や社会の関心は低いことを改めて感じた。女性問題に取り組む団体が普段から政治に関心を持ち、折にふれてきちんと意思表示することが必要だ」と話す。
例えば、性被害に関しては、被害女性は身近な人にすら正直に被害実態を話せないばかりか、警察発表や裁判で被害実態が明らかにされる「2次被害」を防ぐためのいわゆるレイプシールド法もない。
児童虐待についても、児童虐待防止法はあっても「少女が駆け込んだ先の学校が少女の証言を否定することすらある」(橘さん)など現場での課題が多い中で現実的解決策を考える。
同ネットワークは今月中に政策の骨子をまとめ、9月中には公表したい意向だ。
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■日本は政治と関わる女性の比率で後進国
日本では、政治と関わる女性の比率は国際的に非常に低い。
ジュネーブに本部を置く国際機関「列国議会同盟」(IPU)の7月の調査では、日本の衆院議員の女性議員比率は8.1%。189カ国中159位で、中東同様に、女性の政治参加が低い後進国だと国際的に認知されている。
総務省の調査では都道府県や市区町村など地方議会の女性議員の比率も、一番多い東京都でも24.3%にとどまる。
こうした中、自民党はあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を平成32年までに30%に引き上げる目標を掲げており、今後の動向が注目されている。