SANKEI EXPRESS 2011.4.19 11:40
米東部の名門エール大の学生の一部が自分たちの大学は性的ないたずら、性的暴力が起きやすい環境にあると訴え、連邦政府が調査することになった。教育省によると、米国では女子学生の5人に1人が性的暴力の危険にさらされており、オバマ政権は学校から性的暴力を一掃するキャンペーンを始めた。きょうのテーマは「キャンパスでの性的暴力」とした。
エール大の卒業生、男子学生を含む16人が教育省の平等教育市民権局に訴えた。訴えの中で好ましくない環境の具体的な事例がいくつか挙げられている。
2009年9月、男子学生らが新入生の女子53人の魅力をランク付けしたメールを交換した。尺度はどのくらいアルコールが入ったら寝たくなるかというもので、「しらふでも」から「ぐでんぐでんに酔っぱらえば」まであったという。
2010年10月には、男子の社交クラブでの「ノーはイエス。イエスは…」などの下品なフレーズの連呼が録音され、投稿サイトに掲載された。また、女子学生会館の前に「(性的に)奔放な女性が大好き」と書かれた看板が立てられたこともあった。
■大目に見る環境
訴えた学生たちは、こうした出来事を大学当局に通報してきたが、当局は迅速に効果的な対応をすることを怠った。女子新入生のランク付けなど、いかにも若い盛りの学生がやりそうなことだが、行為はもとより、それが見逃される環境こそが問題であり、性的いたずら、性的暴力が起きる背景ともなっているという。
女子学生は女性が軽視されていると感じる。また、キャンパスが安全でないから学業に身が入らない。連邦法は大学など補助金の交付を受ける団体に男女平等であることを求めているが、エール大はこれに違反している疑いがある。したがって、連邦政府がきちんと調査して対処すべきだというのだ。
16人のうちの1人、アレクサンドラ・ブロツキーさん(3年)はAP通信に、「性的いたずらや性的暴力について、当局に何度言っても動いてもらえず、私たちはみないらいらしていた」と話した。
■「ノーはノー」
このニュースが米メディアをにぎわしたのと前後して、オバマ政権が学校から性的暴力を一掃するキャンペーンを行うと発表した。先頭に立つのはジョゼフ・バイデン副大統領(68)。4日、アーン・ダンカン教育長官(46)とともにニューハンプシャー大でキャンペーンの開始を宣言した。対象には小学〜高校も含まれる。
ニューハンプシャー大は、性的暴力の被害者からの相談を24時間受け付けるなど、キャンパスでの性的暴力に対する先進的な取り組みで知られ、会見の場に選ばれた。
バイデン副大統領によれば、このキャンペーンは、個人や組織による虐待と闘う気持ちで行われる。副大統領は「ノーはノー。しらふでも酔っぱらっていてもノーはノー。最初はイエスでも気が変わればノー」と強調した。
教育省によると、米国の女子学生の20%が、性的暴力を受けそうになるか、実際に受ける。男子の場合は6%。ダンカン長官は「性的暴力はどの学校でも起こり得る。私たちはこの現実を直視しなければならない」と語った。
■名門大も反省?
連邦政府による調査の対象になったエール大は、7月1日をめどに専門の委員会を発足させる意向を明らかにした。委員会は性的いたずら、性的暴力の被害者に対する窓口になるという。エール大当局者はAP通信に「エール大は性的暴力に寛容でないことを約束したい」と述べた。
女子学生を保護する団体の担当者は「これはエール大だけの問題ではない。すべての大学への警鐘である」と話した。
(編集委員 内畠嗣雅(うちはた・つぐまさ))/SANKEI EXPRESS