毎日新聞2017年1月23日 東京夕刊
別れた交際相手の性的な写真や動画をインターネットに流すなどする「リベンジポルノ」の被害を防ぐためにできた法律の施行から2年が過ぎた。警察に相談が寄せられて加害者の一部が処罰されているものの、周りに知られることを恐れて通報をためらったり、流出におびえ続けたりする人も多い。専門家は「法律ができて問題が解決したわけではない」と指摘している。【近松仁太郎】
リベンジポルノ被害防止法は2014年11月に施行された。被写体が特定できる形で裸の画像や映像をインターネットで不特定多数に提供すると3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを使って特定の少数者に拡散目的で提供した場合も処罰される。警察庁によると、15年にリベンジポルノに関連して警察に寄せられた相談は1143件。このうち同法違反(53件)や脅迫(69件)の容疑などで276件が立件された。
一方、画像の削除に取り組む一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)の吉川徳明・違法有害情報対策部長は「警察への通報や処罰を望まず、誰にも知られずに削除してほしいという相談者が圧倒的に多い」と説明する。協会は14年9月〜16年11月、相談に基づいて写真など約2250件の対応を各サイトに求めた。うち8〜9割は削除できたといい、「拡散する前にできるだけ早く相談してほしい」と呼びかける。
被害者を支援しているNPO法人「ライトハウス」(東京)には「流出を考えると不安が止まらない」との相談も多い。中高生らが流出の問題を正しく認識しないまま同級生と交際相手の私的画像を共有しているケースもあり、広報担当の瀬川愛葵(あいき)さんは「深刻な被害を生む加害者側の責任を社会はもっと語るべきだ」と指摘している。
三鷹・高校生殺害、あす控訴審判決
被害防止法ができるきっかけとなった東京都三鷹市の女子高校生ストーカー殺害事件は24日、元交際相手の被告の男(24)に対する差し戻し審の控訴審判決が言い渡される。差し戻しを受けた東京地裁立川支部は、殺人などの罪で懲役22年としていた。
被害女性「一生影響」
性暴力撲滅に取り組むNPO法人「しあわせなみだ」(東京)のホームページ(HP)でリベンジポルノの被害を公表した女性が毎日新聞の取材に書面で応じた。
女性は学生時代、交際した男性の求めに応じて性的な動画を撮影したが、気持ちが離れて別れると嫌がらせを受けるようになり、販売会社の社員を名乗る男から「ビデオにして販売することになった」と電話で伝えられた。勤務先の会社にも販売の許可を求める手紙が届いたといい「恐怖だった」と振り返る。
警察に相談したことを男性に伝えると「もう二度としません」と連絡を受けたが、会社を辞めることになり、今でも不安は消えない。女性は「被害が一生影響することを知ってほしい」と呼びかけている。