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ポルノ被害 : 強姦事件で「被害ビデオ」没収を命じる判決――なぜ裁判所は「没収」を認めたのか? (2015.12.02)

日時: 2015-12-02  表示:3126回

弁護士ドットコム 2015年12月02日 17時59分

宮崎市のオイルマッサージ店で、女性客ら5人に性的暴行などを加えたとして、強姦罪などに問われた男性経営者の判決が12月1日、宮崎地裁であり、懲役11年が言い渡された。また、性的暴行を加えた際の様子を撮影したビデオ原本4本の没収が命じられた。

判決によると、男性は自宅に併設したオイルマッサージ店を訪れた女性客5人に対して性的暴行を加え、その様子をビデオカメラで撮影するなどした。男性は無罪を訴えており、判決後「故意や暴行の有無に事実誤認があり、控訴も検討する」と述べたという。

この裁判では、被告人の弁護士から被害者に対して、告訴を取り下げればビデオを処分すると持ちかけたということが報道され、弁護活動として不適切ではないかといった声が上がり、議論となっていた。

今回の判決のように、犯行の様子を撮影したビデオの「没収」が命じられることは、よくあるのだろうか。犯罪に関連する物の没収について、どんなルールがあるのか。秋山直人弁護士に聞いた。

●強姦被害ビデオは「犯罪行為の用に供した物」

「『没収』は刑罰の一種で、犯罪に関係のある特定の物の所有権を被告人から奪って、国庫に帰属させるものです」

このように秋山弁護士は切り出した。

「没収の対象になる物は、刑法19条に列挙されています。

(1)犯罪行為を組成した物(わいせつ文書頒布罪におけるわいせつ文書など)

(2)犯罪行為の用に供した物(殺人罪に用いたサバイバルナイフなど)

(3)犯罪行為によって生じた物(通貨偽造罪によって偽造された通貨など)

(4)犯罪行為によって得た物(賭博罪によって得た金品など)

(5)犯罪行為の報酬として得た物(殺人を請け負って得た対価など)等

また、特別法でも、没収についての規定が設けられています。たとえば、覚せい剤取締法違反の罪の場合に覚せい剤を没収することなどが、これにあたります」

今回のケースは、どれにあたるのだろうか。

「報道によると、今回の判決では、性的暴行の様子を録画したビデオについて、裁判所は『犯罪行為の用に供した物』に該当するとして、没収を言い渡したようです。

ビデオが『犯罪行為の用に供した物』に該当すると判断した理由としては、犯行を心理的に容易にしたという点を指摘しているようです。すなわち、ビデオの隠し撮りをすることで、被害者とトラブルを生じたときに、告訴等を取り下げさせる交渉に使うなど、自分に有利な証拠になり得ると被告人が認識していて、ビデオの映像を確保することで、その犯行が心理的に容易になったと、裁判所は判断したようです」

これまでの経緯について、秋山弁護士は次のように補足する。

「今回、捜査機関は起訴までに、性的暴行の様子を録画したビデオのコピー(複製)を、被告人側から入手していましたが、『原本』については引き続き、被告人側が確保していました。そのため、検察官から裁判所に対して、『被告人側がビデオの原本を確保していることで被害者が精神的苦痛を受けている』として、ビデオ原本の差押えを求める上申書を提出していたということです。

裁判所がこの上申を認めて、被告人側にビデオの『原本』の提出を命令し、被告人側は不服申立ての手続きを取ったものの認められず、ビデオ原本を提出したというのが、これまでの経緯のようです」

●裁判所は、被害者の心情に配慮した

今回の「没収」という措置は、妥当だったのだろうか。

「今回の事案に照らすと、性的暴行の様子を録画したビデオが、被告人側にとって刑事訴追に対する『防御の材料』として必要なことは分かります。しかし一方で、被害者側にとっては、このビデオを被告人が持っていることで『第三者に流出するのではないか』といった不安を感じるということも、十分に理解できます。

今回の判決は、性的暴行の様子を録画したビデオについて、被害者側の不安や精神的苦痛を重視し、『没収』の枠組みで、被告人から原本を取り上げたものと理解できます。

おそらく、このビデオは、今後も証拠物として被告人や弁護人がアクセスできるだろうと思われます。その点を踏まえれば、裁判所の判断は、被害者の心情に配慮して、このビデオから被害者が二次被害を受けることを防止するためのものであり、妥当なものだと思います。

もっとも、原本を没収すれば、それでいっさい二次被害の可能性がなくなるのかといえば、そうではないでしょう。たとえば、ビデオを複製しておくことは容易でしょう。また、すべての面について、刑事手続の『没収』の規定で対応するというのは、無理があると思います。

被害者側で別途、民事の手続き(仮処分、損害賠償請求等)を取るなどの対応も、場合によっては必要になってくるかと思います」

秋山弁護士はこのように述べていた。


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