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ポルノ被害 : 宮崎の強姦ビデオ事件で、加害者側弁護士の懲戒請求に1万2000人がソーシャル署名。募集したビジネスパーソンをインタビュー (2015.02.22)

日時: 2015-02-23  表示:4818回

現代ビジネス 2月22日(日)11時1分配信

 1月21日に毎日新聞にこのような記事が載りました。

 宮崎強姦ビデオ:被害女性が公表した手記全文
http://mainichi.jp/feature/news/20150121mog00m040008000c.html

 被害者の女性は、加害者側弁護士から、強姦被害時のビデオを返却することを条件に、示談に応じることを求められました。被害者の声をストレートに伝えた上、大手新聞が避けがちな「強姦」の2文字を見出しに使った毎日新聞の判断に拍手を送りたくなりました。

 この事件を受けて、1月31日、性暴力の被害者を支援する人々が行動を起こしました。加害者側弁護士の懲戒請求と被害者が適正な裁判を受けられる仕組みを求めて、ソーシャル署名サイトchange.orgで、呼びかけを始めたのです。1週間足らずで1万2000人の署名が集まっています。

 宮崎強姦ビデオ加害者側弁護士懲戒請求、ならびに被害者に対する不当な圧力をなくす仕組みの構築(http://goo.gl/VKOyq0)

 署名の呼びかけ人である中野宏美さんに個別インタビューを行いました。事件を知って怒りを覚えた方。何ができるか分からずやきもきしている方、男女問わず、中野さんのお話を聞いてみてください。中野さんは「2047年までに性暴力をゼロにする」ことを目標にNPO法人しあわせなみだ(http://shiawasenamida.org/)代表として政策提言、啓蒙、市民向けの講演や被害者グループの支援を行っています。

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宮崎の強姦ビデオ事件で、加害者側弁護士の懲戒請求に1万2000人がソーシャル署名。募集したビジネスパーソンをインタビュー
NPO法人しあわせなみだ代表・中野宏美さん
あまりにひどい加害者側弁護士

 Q: 最初に、この事件を知った時どう思いましたか。

 中野: これはひどい、と思いました。あまりにひどくて信じられない、と。

 私は「しあわせなみだ」の活動を通じて、被害者と接してきました。性暴力事件の裁判の被害者を支援したこともあります。

 宮崎の事件と同じように、強姦された被害者が訴えても、加害者側弁護士から示談を求められる例は少なくありません。また、裁判で加害者側弁護士からひどい質問をされることも多いです。

 そういう残念な現状と照らし合わせても、今回の事件はひどすぎた、と思います。被害者は加害者側弁護士から伝えられるまで、自分が被害に遭った様子を撮影した強姦ビデオの存在を知らなかった、と報道されています。それをもとに示談を申し込まれる、というのは、被害者から見ればほとんど脅迫と受け取れるのではないでしょうか。

 Q: 性犯罪の裁判で、加害者側弁護士は被害者にどんな質問をするのでしょうか。

 中野: 事件とは直接関係がない被害者の過去の経歴や、自分から加害者について行ったのではないか、等と言われることもあります。被害者に圧力をかけるような質問ですね。

 そもそも性犯罪裁判は勝てない、と言われていて、被告(=加害者)が無罪になることが多いのです。今回の宮崎の事件も無罪になる可能性があります。

 Q: どうしてでしょう…。

 中野: これは日本の刑法の問題ですが、強姦罪の定義がとても狭いのです。暴行や脅迫で強要されていないと罪として認められない。その証拠を出すのが難しいのです。

1万筆のソーシャル署名を目指す

 Q: 宮崎の事件で被害者は手記に「…抵抗しないのではなくて、できなかったのだということ、アダルトビデオのような激しい抵抗は、女性の安全が保障されていて、身の危険を感じない状況であるからこそできることなのだと実際に体験して思いました」と書いています。被害実態と法律に大きなかい離があるのですね。

 中野: そうなのです。実際には、抵抗したら殺されるかもしれないから何もできない、と思うのも、被害者にとってみれば、当然の心理状態だと思います。

 Q: ソーシャル署名を集めた後、今後、どういう提案をしていく予定ですか。

 中野: まず、署名は1万筆を目指しています。これをもって、日弁連と宮崎弁護士会に加害者側弁護士の懲戒免職請求をします。

 また、これらも署名で要望している内容に盛り込んでいますが、被害者が適正な裁判を受けられるように、不当な圧力がかからないような仕組みを作ることを行政に求めていきます。例えば裁判官や弁護士など司法に関わる人に性暴力被害について研修を受けてもらったり、裁判過程で不当な圧力がかかった場合、相談する窓口をつくったりする必要があります。

 さらに、裁判の過程で被害者に事件と無関係のこと、たとえば過去の性体験などを尋ねてはいけないという法律をつくってほしい。海外を見ると、例えばアメリカやオーストラリア、カナダの「レイプ・シールド法」(* 文末注)は、そういう役割を果たしています。

 また、近年、アメリカでは、大学キャンパスで相次いで問題になった性暴力事件において合意の有無の判断基準が変わってきました。こちらの記事(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40726)が詳しいです。

 Q: この署名は呼びかけ人が3名います。中野さん以外のお2方、野口さんと山口さんのことを、少し教えていただけますか。

 中野: 野口真理子さんは九州でFOSC(フォスク=http://www.npo-fosc.com/)というNPOを運営しています。様々な事情で自宅が安全ではない、自宅に帰りたくない女性と子どものために宿泊施設を提供したり、学生(中学生から大学生まで)向けの啓発事業を行ったり、電話相談にも応じています。

 山口修平さんは児童養護施設一宮学園の副園長です。性暴力に遭った子どもを支援してきた経験が豊富で、今回、すぐ呼びかけ人に名を連ねて下さいました。

 Q: 女性だけでなく男性も、性暴力をなくしたい、と考えていることが伝わってきます。最後に男性へのメッセージがあれば、いただけますか。

 中野: この署名は、ひとつの裁判のだけでなく、私たち市民が裁判や弁護士に何を求めていくのか考えるものです。被害者が人権侵害されずに裁判を受けられる制度をみなさんと一緒に作っていきたいと思っています。

 また、男性には、被害者が責められるのではなく、加害者に責任があることを明確にし、被害者をきちんと救済する法制度が必要であることを理解いただきたいです。そして、一緒に、自分の大事な妻や娘が性暴力に遭わない社会を求めていただきたい、と思います。

インタビューを終えて

 インタビューは中野さんのお仕事の合間に、電話で行いました。ふつうに働くビジネスパーソンが、人権を守るために、市民として何ができるか考え、行動する姿勢に共感します。法律や制度は政治家や霞ヶ関にお任せしていれば、自然にできるものではありません。私たちひとりひとりが時間と労力を使って良い方向に近づけていかなくちゃ、と中野さんとお話して感じました。



*注:各国の関連法は、強姦被害者に対して過去の性体験など事件と直接かかわりのない、心理的負担を感じる質問を禁じている。例えば、
アメリカ合衆国:
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/docs/vawa_factsheet.pdf
オーストラリア:
http://www.alrc.gov.au/publications/20.%20Matters%20Outside%20the%20Uniform%20Evidence%20Acts/rape-shield-laws

治部 れんげ


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