ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
2010年度の論文資料集10号。詳細はこちらより
 
メニュー
 
Google検索
 
[検索結果に戻る]

その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<4> 遺留物なく 「だれも信じてくれない」 (2010.12.01)

日時: 2010-12-05  表示:3299回

立証被害者に重い負担

 捜査員の言葉に耳を疑った。「男の体液は検出されませんでした。強姦(ごうかん)そのものは未遂になります」。逮捕された男も「服は脱がせたが、何もしていない」と供述しているという。

 そんなはずはない。確かに当時の記憶はない。目撃者もいない。でも診断書にある体内の傷をどう説明するのか。

 反論しても、捜査員は「証拠がない」と、にべもなかった。私と犯人とどっちの味方なの――。心がささくれた。

     □■□

 咲恵さん(20歳代、仮名)は昨年8月、路上で車の男に道を尋ねられた。「地図を描いて」との頼みに応じ、持っていた缶ジュースから目を離したスキに睡眠導入剤を入れられた。男と会話中に意識を失い、翌朝自宅で目覚めた。シャツは裏返し、下着はかばんの中。体に違和感があり、出血もしていた。財布の紙幣も減っている気がした。

 家族の話では、未明に帰宅したらしい。意識を失ってから空白の時間がある。レイプの被害を確信し、警察に届けた。程なく男が逮捕されたが、強姦致傷容疑を否認。体液などの証拠が出ず、処分保留になった。

 被害者聴取で「未遂」の判断に納得がいかないと訴えると、捜査員に詰問された。「レイプされたと思う根拠は」「記憶があるの?」「男がつけた傷だとは言い切れないよね」。責められ、犯人扱いされているような気分に陥った。「だれも私を信じてくれない」。やがて心身のバランスを崩し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。

 密室性の高い性犯罪。既遂でも体液などの物証が出ないケースは珍しくなく、その場合、加害者と被害者の供述のどちらが信用できるか、の争いになる。元検事で性犯罪に詳しい吉沢徹弁護士は「記憶も遺留物もないとなると、被害者の立場は極めて不利。証拠で事実を証明する刑事裁判の大前提がある以上、不起訴処分になる場合もある。立証が難しいケースほど、被害者は精神的に追い込まれ、負担も大きい」と指摘する。

     □■□

 男は昨年12月、強盗強姦未遂罪で起訴された。起訴状には〈姦淫しようとしたが、目的を遂げなかった〉としかない。「傷を無視された」。咲恵さんの心に、わだかまりが残ったままだった。

 逮捕から1年余りが過ぎた今年11月、改めて検事に疑問をぶつけた。手応えはなかった。あきらめかけていた時、検事から「起訴状を書き換えます。傷について明記します」と連絡があった。検事によると、取り調べの過程で、男が咲恵さんの下半身を触った、とする供述もあったといい、傷の理由としてつじつまが合うと判断したという。

 うやむやに終わらなくてよかったと思う反面、なぜこれほど苦しまなければならなかったのかと悔しさが募った。

 同種の手口で犯行を繰り返していた男は強盗強姦罪など13件に問われ、来春、裁判員裁判で裁かれる。被害の立証に長い間翻弄されてきた咲恵さんは、併合審理される法廷で、男がどう事実を語るのか、見届けたいと思っている。
(2010年12月1日 読売新聞)


ニュース報道について

このページ内で掲載されたニュース報道の中には、APPの立場や見解と異なるものも含まれてますことを、おことわりします。
最新の情報につきましては「http://www.app-jp.org」よりご確認ください。


[検索結果に戻る]
被害事実をご存じの方は、情報をお寄せください
ポルノグラフィによる人権侵害は想像よりはるかにたくさん生じていると考えられます。例えば、市販されているポルノ・ビデオからは、制作過程ですでにひどい人権侵害が行なわれていることを見てとることができます。

私たちは、ポルノグラフィによる被害を防止し被害者を支援する制度づくりをめざして、ポルノグラフィによる人権侵害の実態を明らかにする活動に取り組んでいます。被害事実をご存じの方は、どのような情報でもかまいませんので、研究会までお寄せください。
言語の選択
;
 
論文資料集9
2009年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第9号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより
 
論文資料集8
2008年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第8号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより