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その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<2> 心の傷くみ取る市民感覚 (2010.11.29)

日時: 2010-12-05  表示:3255回

 神戸地裁で今年1月に開かれた強姦(ごうかん)致傷事件の裁判員裁判。検察官や裁判官らが、それぞれの席に設置されたモニターに一斉に注目した。画面には、別室で意見陳述する被害者女性の姿。顔は映されていない。ハンカチを握りしめる指が小刻みに震えていた。

 裁判員席に座った神戸市のケアマネジャー白石修三さん(33)は、居ずまいをただした。これまで気にとめたことさえなかった性犯罪。「正面から向き合う覚悟を迫られている」。涙ながらの陳述に耳を傾けた。

     □■□

 裁判員候補の呼び出し状に従って地裁を訪れ、抽選で6人の裁判員の1人に選ばれた。心の準備も整わないまま、午後からの審理に臨んだ。

 男(46)が「車のカギをなくした。一緒に探して」とウソをついて20代の女性を暗がりに誘い込み、強姦しようとしてけがを負わせた事件だった。

 「もう人を信じられない」

 厳罰を求めた女性の声が耳に残った。被害者は再び人に笑顔を向け、幸せな家庭が築けるようになるのだろうか。心に残り続けるだろう「見えない傷」に意識が向いた。提示された同種事件の判例は「軽い」と感じた。どうしたら被害者の訴えに応えられるか、思い悩んだ。

 一方、男は起訴事実を認め、主な争点は、強姦行為そのものが未遂だった点をどう評価し、量刑に反映させるか。「泣く女性をかわいそうに思って我に返り、犯行をやめた」と主張する弁護側に対し、検察側は「抵抗され、行為を続けるのが難しくなっただけ」と反論した。「被害者にとっては、未遂に終わった理由が何か、だけの問題ではないのに。女性の苦しみの深さをもっと考慮していいのでは」。違和感がぬぐえなかった。

     □■□

 「被告は、自己の意思で犯行を止めたため、未遂に終わり……」。審理3日目の判決公判。裁判長が量刑理由を読み上げる間、もう1人の裁判員、同市の主婦宮川美沙子さん(53)は、裁判員席から、顔も知らない被害者女性の姿を傍聴席に捜していた。

 女性は「抵抗されて断念した」と認定してほしかったはず。どう受け止めただろう、と気になった。

 意見陳述では、まとまりを欠く女性の言葉が、かえって胸に迫った。同じ年頃の娘をもつ。善意につけ込んだ被告をとても許せない、と憤りを覚えた。犯行状況や加害者の反省の情、前歴の有無など、客観的な事実を一つ一つ冷静に吟味するプロの裁判官とのギャップを痛感した。

 懲役6年の求刑に対し、判決は懲役5年。裁判員らは、弁護側が主張した懲役4年より重い結果を導き出した。ただ、被害者の苦しみに報いる判決だったかどうか。自問自答を続けている。

     □■□ 

 裁判員たちが感じた違和感やギャップ。「それこそが裁判員制度が始まった理由だと思う」と、白石さんは言う。「市民の感覚でこそ、被害者の気持ちをくみ取れる。法廷を変えていくのは、そんな素人の感性なのではないでしょうか」
(2010年11月29日 読売新聞)


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