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その他 : 性暴力を問う 第5部 今、法廷で<1> 厳罰求め 必死の訴え (2010.11.28)

日時: 2010-12-05  表示:3277回

裁判員へ「人生の希望すべて壊された」

 「今も、死にたい気持ちと闘いながら日々の生活を送っています」

 今春、関東の地裁で開かれた強姦(ごうかん)致傷と住居侵入事件の裁判員裁判。傍聴席から見えないようついたてで仕切られた証言台から、被害者の弘子さん(仮名、20歳代)の震える声が法廷に響いた。

 裁判員にあえて顔をさらして意見陳述することを選び、読み上げる陳述書を何度も書き直した。直接訴えかければ、苦しみを理解して、加害者に厳しい罰を科してくれるはず――。背中を押したのは、正面に並ぶ6人の裁判員へのそんな「期待」だった。

 ◆◇◆

 

 その1年前、自宅で風呂上がりにくつろいでいると、ベランダから男が侵入し、襲われた。それからすべてが一変した。背後から押さえつけられ死を覚悟した瞬間が何度もフラッシュバックする。不眠、頭痛。通勤途中に気絶し、救急車で運ばれたこともある。診断は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)。被害を思い出す部屋から引っ越した。

 4か月後、犯人が捕まった。近くに住む若い男で、家族がいた。示談を断ると、〈心から謝りたい気持ちで一杯です〉〈早く罪をつぐなって妻子の元に戻ってあげたい〉と、独りよがりな謝罪の手紙が届いた。許せなかった。

 男はどんな罰を受けるのだろう。代理人弁護士にもらった過去の裁判の量刑一覧を見て、がくぜんとした。〈少女(13)を強姦、懲役2年6月><強姦致傷、懲役2年6月、執行猶予5年>

 「被害者の人生を壊しておいて、この程度の刑なんて」

 自分の事件が裁判員裁判になると知り、インターネットで懸命に情報を集めた。その年の9月に青森地裁であった性犯罪初の裁判員裁判は、女性2人が意見陳述し、求刑通りの懲役15年の判決。ほかにも、裁判長が「これまでの性犯罪の量刑が軽すぎた」とわざわざ言及し、重い刑を下した例もあった。「流れが変わりつつある。少しでも刑が重くなる可能性があるのなら、私も法廷に立とう」

 ◇◆◇

 審理は3日間。被害者参加制度を使い、検察官の後ろに設けられたついたての中で傍聴した。

 初日の冒頭陳述で被告側は、窃盗目的の侵入で、負傷もさせていないと一部否認した。〈窓が開いていた〉〈女性が裸同然の姿だった〉。被害者側に「落ち度」があったかのような主張に、怒りがこみ上げた。

 意見陳述が予定されていた2日目は、ストレスで吐き気と腹痛に見舞われながらも、気持ちを奮い立たせた。

 静まりかえった法廷。ついたての向こうで、男はどんな顔で聞いているのか。前を向いて言葉を絞り出した。「人生の希望すべてを壊された。一生、刑務所から出所できないようにしてほしい」。裁判員の表情までうかがう余裕はなかった。手にしたA4判3枚にびっしりとつづった思い。ただ伝えようと必死だった。

 「一般市民の処罰感情の上に立って、性犯罪の量刑を見直して下さい」。10分間の陳述をこう締めくくった。

 〈女性の被害感情は、量刑上、十分に考慮されるべきである〉。懲役8年の求刑に対し、判決は懲役6年。執行猶予を求めた被告側の主張は退けられた。判例から予想していた刑を上回る量刑だった。

 「被害者に直接話を聞くことで、事件の重大さがよくわかった」。判決後の記者会見で裁判員がそう話したと聞き、報われた気がした。

 ◆◇◆

 判決が確定した今も、不眠などの体調不良が続く。制度がないため、医療費や転居費も補償されないままだ。負担は大きかったが、法廷で意見陳述したことに悔いはない、と弘子さんは言う。「性犯罪の量刑が低かったのは、被害がどんなに深刻か知られていなかったから。量刑を見直す方向へ少しでも動かせたのなら、意味はあったと思う」

 ◇

 裁判員制度が始まって1年半。性犯罪を扱う法廷で何が起きているのか。関係者の声を聞き、制度への期待と不安、司法を巡る課題を探る。
(2010年11月28日 読売新聞)


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