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その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<6> 再犯防止へ見守りの輪 (2010.10.20)

日時: 2010-12-05  表示:3259回

前歴者と向き合う ボランティア活発

 カナダは性犯罪の前歴者を更生に導く取り組みが活発だ。中でも、家族や友人のような関係を築いて出所者の社会復帰を促すボランティアグループ「CoSA」(支援と責任の輪、Circles of Support and Accountability)の活動は、「再犯防止に効果的」と評価され、カナダにとどまらず米国やヨーロッパにも広がる。発祥の地・カナダ東部を訪ねた。

     □■□

 「最初はただ、彼を助けたい一心だったんです」

 五大湖の一つ、オンタリオ湖畔の町・ハミルトンの牧師、ハリー・ナイさん(64)は、懐かしげに「チャーリー」のことを語り始めた。

 本名、チャールズ・テイラー。男児への4度の性虐待で7年服役し、1994年に40歳で出所。身寄りもなく、ナイさんが身元を引き受けた。

 カナダでは性犯罪の前歴者の出所が報道されることがある。再犯リスクが高いとされたチャーリーも例外ではなかった。「要注意」と書いた顔写真入りのビラがまかれ、町は騒然となった。

 「彼はモンスターじゃない。人として接してやりたい」。ナイさんは思案の末、教会の信者と6人で、支援サークル「チャーリーズ・エンジェル」を結成。週1回、チャーリーを囲み、コーヒーを飲みながら語り合うことにした。誕生日や出所記念日は必ず一緒に祝い、「君を思っているよ」と繰り返し言葉をかけた。

 「僕には『家族』がいる」。チャーリーも次第に心を開き、交流を深めた。

 周囲は「1か月で再犯する」と恐れ、活動にも冷ややかだったが、3か月たっても再犯の気配はない。警察は効果に驚き、新たな出所者の受け入れを依頼するまでに。連邦政府も助成を始め、CoSAの輪が広がった。

     □■□

 現在、カナダ全土で120以上のサークルが、再犯の恐れが高い満期出所者を受け入れる。出所者1人に対し、研修を受けた4〜7人のボランティアが集い、サークルを結成。保護観察官、精神科医らとも連携し、更生を支える。

 首都オタワで活動中の6サークルを取りまとめるスーザン・ラブさん(57)は、「性犯罪者の自分には生きる価値がない」と自暴自棄になる出所者を何人も見てきた。その度に「改心したのなら犯罪者じゃない。私たちは今のあなたを見ている」と諭す。それぞれの生育歴や性的嗜好(しこう)も把握した上で、再犯の兆しがないか目を光らせ、「責任ある社会人」としての自覚を促す。「迷惑がって排除するだけでは再犯の恐れはかえって強まる。孤立させないことが重要」と話す。

 連邦矯正局の調査では、CoSAの支援を受けた出所者の再犯率は2・3%。支援を受けなかった場合の16・7%を大きく下回った。

     □■□

 チャーリーは2006年、52歳で病死した。出所から12年、再犯はなかった。

 ナイさんは言う。「失いたくないものがあれば再犯なんてできない。『大切な人を悲しませたくない』という気持ちが歯止めになるんです」

 そして、「家族」に囲まれた生前のチャーリーの写真を見せて、語りかけた。

 「性犯罪者を恐れ、憎むのは自然なこと。でも誰かが向き合わないと。社会の一員として迎え入れることが、地域の安全を守る近道なのです」

      ◇

 性暴力を巡り、各国で、それぞれの国情を反映した独自の取り組みが進んでいる。日本にふさわしい施策とは。突きつけられた課題は大きい。(おわり)

 社会部・久場俊子、佐々木栄が担当しました。

 <カナダの性犯罪者対策> カナダの性犯罪者対策刑務所では再犯リスクに応じた矯正処遇プログラムを1997年に導入。仮出所者が刑期満了まで入居できる、16の国営施設があり、矯正教育や就職支援を行う。日本は、2006年、カナダをモデルにプログラムを導入したが、出所後の再犯防止策が手薄。住民感情に配慮し性犯罪前歴者を受け入れない更生保護施設も多く、“塀の外”の受け皿が少ない。
(2010年10月20日 読売新聞)


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