ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
2010年度の論文資料集10号。詳細はこちらより
 
メニュー
 
Google検索
 
[検索結果に戻る]

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<2>被害者に「癒やしの灯台」 (2010.10.16)

日時: 2010-12-05  表示:3720回

支援拠点「どんな立場の人も力づけたい」

 米国の首都ワシントン中心部から北へ10キロ。「The Lighthouse Center for Healing(癒やしの灯台)」と看板を掲げた2階建てのビルがある。全米で最も歴史の古い、性暴力被害者支援団体「DCレイプクライシスセンター」の拠点だ。

 「あなたは悪くない」

 性被害者であることを公表し、性暴力一掃の活動に取り組む米国在住のフォトジャーナリスト、大藪順子(のぶこ)さん(39)は、11年前に米国内で被害に遭った際、レイプクライシスセンターのカウンセラーが繰り返した言葉に救われたという。「それぞれの必要に応じたきめ細かな支援をしてくれる。どれほど心強いか」。そう話す大藪さんとともに、「灯台」を訪ねた。

 出迎えてくれたのは、カウンセラーのインディラ・へナードさん(29)。被害直後の混乱状態にある人のもとに駆け付け、状況を聴き取る困難な役割を担う。

 「殴られてレイプされた。殺されるかと思った」。5日前に一報を受けて出向いた病院では、全身あざだらけの女性に対面した。おびえた表情。優しく話しかけると、ようやく重い口を開いた。

 加害者は夫だった。中米エルサルバドル出身。10年以上、暴力に耐えてきたが、身の危険を感じ、初めて病院に来たという。子どもがいるため、家を離れられないと訴えた。

 「人種、貧困、移民など複雑な事情が絡むケースは多い。彼女は、私たちと接触したことが、被害克服への第一歩になるはず」。ヘナードさんは力を込めた。

 センターは1972年に発足した。支援スタッフは25人。被害者に12〜24回にわたる無料カウンセリングを行う。昨年は183人が受けた。

 24時間の電話相談、警察や病院への付き添い、啓発教育も手がける。当初1000万円だった年間事業費は今や約1億円。6割は連邦政府などからの補助だ。手法は全米に広がり、同様のセンターは、1100か所を超えた。

 「どんな立場の人にも支援が行き届くようにすることが重要。被害者を力づけ、回復への歩みを支えていきたい」とヘナードさんは話した。

 「灯台」の1階には、性暴力被害者対応専門の看護師(SANE)の養成所もあった。SANEは、医師から独立した立場で、被害者の体に残された加害者の体液の採取や、傷・あざの記録、感染症検査を一手に担う。検査代は公費負担。犯人逮捕の決め手にもなることから、必要なら法廷で証言もする。ワシントンでは、行政当局の直轄で、16人のSANEが活動する。
レイプ被害の検査キットを手にするトリンクリーさん。証拠採取は3〜5時間かけて綿密に行われる(米国ワシントンで)

 「私の場合、断りもなく事務的に証拠採取や検査をされ、つらかった」。大藪さんが処置を受けた時の体験を明かすと統括責任者のデビン・トリンクリーさん(42)は言った。

 「当時は証拠確保に躍起になるあまり、被害者の気持ちが置き去りにされていた。本人の意思を尊重するよう、私たちの意識も変わりました」

 被害者が証拠採取や検査を拒めば、無理強いはしない。被害届の提出をためらえば、証拠は病院で保管する。その後も1年間、定期的に被害者に様子を確認。継続的な支援を受ける中で、警察への届け出を決意する人も多いという。

 強姦(ごうかん)事件が年間9万件近くにのぼる米国。全米で、こうしたプロ集団が関係機関と連携し、被害者を支えている。

 一方、日本での強姦と強制わいせつの認知件数は年間計約8700件。警察への届け出が実際の被害の4%にとどまるとの調査結果もある。背景に支援態勢の不十分さが指摘される。日本でも同様の仕組みを広げられないか。トリンクリーさんが言った。「難しいことではない。被害者が何を求めているのか、まず考えればいい。被害者の気持ちが一番大切なのだから」

 <多職種連携> 米国では地域ごとに、警察、カウンセラー、医療関係者、弁護士ら様々な職種の人たちで「性暴力対応チーム」(SART)を結成している。一報を受けると、まずアドボケーターと呼ばれる支援者が被害者の元に駆け付け、本人の意向を聞いた上で関係機関につなぐ。日本では、連携態勢が未確立だが、今年度、警察庁と医療機関が協力し、事情聴取と心身のケアを1か所で行う事業を、愛知県で試験的に始めた。
(2010年10月16日 読売新聞)


ニュース報道について

このページ内で掲載されたニュース報道の中には、APPの立場や見解と異なるものも含まれてますことを、おことわりします。
最新の情報につきましては「http://www.app-jp.org」よりご確認ください。


[検索結果に戻る]
被害事実をご存じの方は、情報をお寄せください
ポルノグラフィによる人権侵害は想像よりはるかにたくさん生じていると考えられます。例えば、市販されているポルノ・ビデオからは、制作過程ですでにひどい人権侵害が行なわれていることを見てとることができます。

私たちは、ポルノグラフィによる被害を防止し被害者を支援する制度づくりをめざして、ポルノグラフィによる人権侵害の実態を明らかにする活動に取り組んでいます。被害事実をご存じの方は、どのような情報でもかまいませんので、研究会までお寄せください。
言語の選択
;
 
論文資料集9
2009年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第9号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより
 
論文資料集8
2008年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第8号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより