ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
2010年度の論文資料集10号。詳細はこちらより
 
メニュー
 
Google検索
 
[検索結果に戻る]

その他 : 性暴力を問う 第4部 海外からの報告<1>夫婦の無念 法律生む (2010.10.05)

日時: 2010-12-05  表示:3774回

隣人が娘殺害「前歴知っていたら」

 「あそこに見えるでしょう。あの場所で娘は殺されたの」

 米国東部・ニュージャージー州ハミルトン。閑静な住宅街にある一軒家で、モリーン・カンカさん(50)が向かいの公園を指した。そこに以前、犯人の男の家があったという。

 「男の前歴を事前に知っていたら、絶対にあの子を近づかせなかったのに……」。涙ぐむモリーンさんの手を、夫のリチャードさん(59)がそっと握った。

 16年前、夫妻は、強姦(ごうかん)・殺人事件で次女(当時7歳)を失った。その隣人には、子どもへの性犯罪歴があった。夫妻の無念の訴えは、娘の名を冠した「ミーガン法」を生んだ。性犯罪前歴者の情報を地域住民に開示するよう義務付けた、世界初の法律だ。「悲劇を繰り返してはいけない」。夫妻は記者に訴えかけた。

 1994年7月。3人きょうだいの末っ子だったミーガンさんは、遊びに出かけたまま行方不明になり、翌日、数キロ離れた場所で変わり果てた姿で見つかった。向かいに住む男が間もなく逮捕された。

 「子犬を見せてあげる」。男は言葉巧みに家に誘い込み、レイプの末、絞殺した。「時間が凍りつき、しばらく何も感じられない状態だった」。モリーンさんは振り返る。事件後、男に女児への2度の性犯罪歴があったことを知り、さらに打ちのめされた。

 感情を取り戻したのは、男の家が取り壊される前夜。無人となったその家に、長女と長男が「石をぶつけたい」と言い出した。「お母さんも投げなよ」。ためらいながらつぶてを投げた。窓に当たった瞬間、せきを切ったように怒りがあふれ、石を投げる手が止まらなくなった。

 「何てことをしてくれたの」「おまえが憎い」。初めて男の名を口にして叫んでいた。

 事件は全米に衝撃を与えた。隣人に娘がレイプされた事実を、夫妻が隠さず公表したからだ。「私も性被害者」「犯人を許せない」。そんな声が寄せられ、自宅前には3キロもの弔問の列ができた。
ミーガン法のおかげで性暴力の怖さを知り、防げた被害もあるはず。娘の死は無駄ではなかった」。リチャードさん(左)とモリーンさんは力を込めた(米国ニュージャージー州ハミルトンで)

 「性犯罪歴を知らせる制度があれば、あの子は死なずにすんだかもしれない」。リチャードさんが法制化を求めて署名活動を始めると、情報公開を求める運動が広がり、わずか3か月で43万人分が集まった。同年10月には、州法が成立、2年後には連邦法となった。開示内容や手法は州ごとに異なるが、法に基づき登録された前歴者は全米で50万人超に。夫妻の地元、ニュージャージー州では、インターネットに専用サイトが設けられ、調べたい地域や車のナンバーなどを入力すれば、再犯の恐れが高い登録者の氏名や住所、顔写真、身体的特徴、前歴の概要などが、簡単に閲覧できるようになった。

 同法には「刑を終えた者への二重処罰にあたる」という批判や、前歴者が居住地を追われるなど負の側面を指摘する声もある。だが、米社会での支持は厚いという。夫妻は強調する。「法の目的は、性犯罪から子どもを守ること。親が情報を把握し、自衛する必要がある」

 夫妻は「ミーガン基金」を設立し、今も、子どもの性被害防止に力を注ぐ。

 「親として、娘の命を守れなかったという後悔があります。まだ、やらなければならないことがたくさんある」

 基金の事業として、子どもに接する地域のスポーツ指導者への身上調査に取り組む。「危険人物を子どもに近づけない」という趣旨で、連邦政府の助成を受け、指紋採取などを実施。これまでに1万2000人をチェックした。

 講演活動にも励む。子どもには「親しい人でも、体の大切な部分を触らせてはだめ」と教え、親たちには身近に潜む性暴力の怖さを説く。自衛を促す取り組みが重要、という信念は変わらない。

 「性被害は恥ではない。声を上げて真実を伝えれば、『このままではいけない』『変えなければ』という社会の動きにつながると思う」

 性暴力を巡り、海外では被害者支援や加害者の再犯防止、社会復帰策が様々に進む。第4部は、米国、韓国、カナダでの実践例を報告、対策のありようを考える。

 <ミーガン法> 性犯罪の刑を終えて社会に戻る人に居住地などの登録を義務づけ、再犯の危険度に応じ、情報を地域住民に通知する制度。連邦法は全50州に導入を課した。ネットでの開示は30州以上で行われ、学校から一定距離内での居住を禁じた州も。日本では、子どもへの暴力的性犯罪の前歴者について、法務省が出所時に居住地情報を警察庁に提供、警察が所在を確認する制度があるが、情報は一般に開示していない。
(2010年10月15日 読売新聞)


ニュース報道について

このページ内で掲載されたニュース報道の中には、APPの立場や見解と異なるものも含まれてますことを、おことわりします。
最新の情報につきましては「http://www.app-jp.org」よりご確認ください。


[検索結果に戻る]
被害事実をご存じの方は、情報をお寄せください
ポルノグラフィによる人権侵害は想像よりはるかにたくさん生じていると考えられます。例えば、市販されているポルノ・ビデオからは、制作過程ですでにひどい人権侵害が行なわれていることを見てとることができます。

私たちは、ポルノグラフィによる被害を防止し被害者を支援する制度づくりをめざして、ポルノグラフィによる人権侵害の実態を明らかにする活動に取り組んでいます。被害事実をご存じの方は、どのような情報でもかまいませんので、研究会までお寄せください。
言語の選択
;
 
論文資料集9
2009年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第9号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより
 
論文資料集8
2008年度のAPPの調査研究の成果を、論文資料集第8号にまとめました。ぜひご購入ください。詳細はこちらより