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その他 : 性暴力を問う 第3部 奪われた笑顔<7>「きっと光を見いだせる」 (2010.06.28)

日時: 2010-12-05  表示:3564回

虐待受けた経験乗り越え、支える立場に

 「私もこうなるのか」

 中国地方の瞳さん(仮名)(29)は19歳の頃、たまたま目にした専門書の記述に激しく動揺した。

 性的虐待の被害者は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患うケースが多く、自殺の危険性も高い――。そんな内容だった。

 家庭内暴力(DV)が日常的だった父から、両親が離婚する17歳までの5年間、性的虐待を受けた。周囲に気づかれまいと明るくふるまい、「早く自立する」と勉学に打ち込んできた。それなのに。

 不安、疑問、怒り――。封印していた感情が一気に噴き出し、心が荒れた。

 「なぜ、私があんな目に遭わなければならなかったの」

 父に憤りをぶつけたが、謝るばかり。「今さらそんなこと言われても……」と戸惑う母に、拒絶されたと感じた。

 ストレスから、食べては、吐いた。大学は何とか卒業し、看護師になったが、やがて働くこともできなくなった。

 出口の見えないトンネルに迷い込んだようだった。インターネットで関西の性被害の自助グループを見つけ、すがる思いで参加した。

 体験を打ち明けると、〈仲間〉は黙って耳を傾け、一緒に泣いてくれた。気持ちを受け止めてもらえ、「絶対、はい上がる」と、力がわいた。

 いくつかの心療内科を経て、ようやく、トラウマ治療専門のカウンセラーにたどりついた。上京し、本格的な治療を受け始めた。

 「被害のさなかはつらい、嫌だ、という感情を処理しきれずため込んでしまう。それが、心に余裕ができた時に、あふれ出るんです。過去と向き合える時期が来たからこそ、今苦しいのよ」と励まされた。

 当時の出来事や感情を思い返し、はき出す作業。過去がフラッシュバックし、摂食障害もひどくなったが、「ここさえ乗り越えれば」と、歯を食いしばった。

 数か月後、暗闇に光がさし、自信がみなぎってきた。

 「私は大変な中を生き抜いてきたんだ」

 25歳で帰郷し、自治体の保健師に採用された。担当は虐待予防。最初は「まともな家庭で育っていない私に務まるのか」と抵抗があった。

 現場でいろんな家族を見る。「子どもを殴ってしまう」と打ち明ける母、夫の暴力で顔を腫らした妻……。貧困や病気、孤立、さまざまな背景があり、だれか一人が悪い、と決めつけられないことも多い、と感じた。「なぜ親が子を虐げるのか」という幼い頃からの疑問が、解き明かされていくようだった。

 父の行為は許されることではない。だが、顧みれば、父自身も虐待を受けて育ち、孤独を抱えていた。母は娘の被害を知って、どんなに衝撃を受けただろう。「私たち家族は、それぞれが苦しんでいたんだ」。憎しみやわだかまりは、いつしか消えていた。

 自らの経験が、虐待家庭の複雑な心情を理解するのに役立っていると思う。やりがいのある、この仕事をずっと続けるつもりだ。そして今、性被害の自助グループを主宰する。支えてくれる人がいたからこそ、トンネルを抜けられた。「今度は、私が暗闇でもがく人の力になりたい。大丈夫、きっと光を見いだせる、と伝えたい」

(おわり)

 社会部・岸辺護、久場俊子、佐々木栄、大西順也が担当しました。

 <自助グループ> 同じ苦悩を抱えた当事者が集い、体験を語り、聞く作業を通じて、自らを見つめ直し、回復へのステップとする。「一人ではない」という安心感を共有し、援助し合うことで、失っていた自信を取り戻すことにもつながる。原則は「言いっ放し、聞きっ放し」で、批判的な発言や助言はしない。性被害では全国に数か所あり、ホームページを設けているグループもある。
(2010年6月28日 読売新聞)


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