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その他 : 性暴力を問う 第3部 奪われた笑顔<1>半世紀経ても癒えぬ傷 (2010.06.22)

日時: 2010-12-05  表示:3254回

兄から被害 愛情と希望失った

 体に張り付いて、はがしたいのに、はがせない――。

 5歳の時から15歳まで、兄から性被害を受け続けた良子さん(仮名)(66)は、半世紀を経た今も消せない記憶を、そう表現する。ふとしたことで、あの忌まわしい時がよみがえり、心の傷が痛み、肌があわ立つ。

 「私には青春はなかった。夫さえ信じ切ることができない。川の流れのように、記憶も流せたらいいのに」

 終戦後の混乱期、大家族の末っ子として育った。食べていくのに精いっぱいの家庭で、勉強のできた15歳上の兄は、両親の自慢だった。

 初めて被害に遭ったのは、5歳の冬の夜。ふすまがスーッと開き、兄が布団に入ってきた。下半身を触られたが、何をされているのか理解できない。ただ怖くて、声も出なかった。

 以来、母が内職で夜なべしているスキを見計らっては、忍び寄ってきた。熱を出して家で一人で寝ているところを狙われたこともある。

 兄は「黙っとけ」としか言わなかったが、子どもながら「秘密にしないと大変なことになる」と感じた。特別扱いされていた兄。「ばらしたら、私の方が家を追い出される。我慢するしかない」。行為の意味が分かるようになっても、誰にも打ち明けられなかった。

 そして約10年もの間、ただ耐える日々。15歳の時、兄が結婚し、家を出た。「ああ、やっと終わった」。でも、苦しみに終わりはなかった。

 「私に未来はない」「一生結婚できない体になった」――。思春期を迎えると、何度も死にたい、と思い詰めた。男性への嫌悪感がぬぐえない。見合い話は断り続けた。

 母にはわかってほしくて、25歳の頃、兄にされたことを告白した。「そんなことするはずない。おまえの勘違いだ」と受け流された。母への失望。余計つらくなっただけだった。

 「女一人で働きながら生きる」と決めたが、時代が許さなかった。周囲のプレッシャーに負け、親の勧める相手と結婚。以来、被害を隠したまま、40年近くになる。

 2人の子に恵まれ、孫もできた。はたからは穏やかな夫婦に見えるだろう。だが今も、男性が信じられない。夫には申し訳ないが、心から「愛してる」と感じたことは一度もない。女として愛し、愛される喜びを知らないまま死んでいくのだろう、と思う。

 兄は80歳になる。この長きにわたる苦悩と恨みを、張本人は何も知らない。「兄のせいで、愛情も希望もすべて失った。あの世にいったら、地獄に突き落としてやりたい」

 良子さんは今年2月の連載第1部「被害者たちの叫び」を読み、読売新聞に手紙を寄せた。「このつらさを誰にも知られないまま死ぬのは嫌だ、と思ったんです。同じように苦しんでいる子はたくさんいるはず。周囲が気づいて、救ってあげてほしい」と語った。

 性暴力は、子どもにも向けられている。第3部は、子どもの被害に焦点をあて、影響の深刻さと回復や予防の手だてを考える。

◆子供の被害 長期支援を

 警察庁によると、09年に警察が把握した強姦事件のうち被害者が未成年だったのは4割の603件。うち、小学生の被害は36件、中学生の被害は101件だった。しかし、統計は氷山の一角に過ぎない。

 子どもの性被害は、表面化すること自体が非常に少ない。専門家によると、加害者の大半は親族や教師など身近な人物で、▽加害者や家族の立場が悪くなることへの不安▽自分がどうなるのかという恐れ――などから、子どもは被害をなかなか打ち明けられない。告白しても、周囲の大人から信用されないことも多い。

 人格形成の核心である〈信頼〉を打ち砕かれるため、被害者の子どもの心の傷は、極めて深いとされる。

 その結果、強い無力感や自責の念、性の認識の混乱などを招きやすい。思春期では、リストカットなどの自傷行為や薬の大量服用のほか、家出や「援助交際」などの非行の形で表れることも多い。

 封じ込めていた幼少期の被害の記憶が、成長してから突然よみがえり、心身のバランスを崩すこともある。

 専門家は「時間がたつほど、傷跡は複雑になり、治療が難しくなる。被害に苦しむ子どもの早期発見と長期的な支援が大切だ」と指摘する。
(2010年6月22日 読売新聞)


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