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その他 : 性暴力を問う 第1部 被害者たちの叫び<3>よみがえる記憶と闘う (2010.02.15)

日時: 2010-12-05  表示:3105回

いつになったら楽に

 ベッドに横になり、何気なくテレビのバラエティー番組を見ていた時だった。

 お笑い芸人が、おどけた様子で、急に脇から画面に現れた。その瞬間、久美子さん(仮名、20歳代)は、思わず身をすくめた。慌ててふとんに潜り込み、手探りでテレビのリモコンを探す。電源を切った手が震え、動悸(どうき)がなかなか治まらない。

 「あの日」から、すべてが変わった。

 襲われたのは数年前。深夜の自宅アパートだった。風呂上がりに脱衣所で髪をふき、ふと顔を上げると、覆面の男が物陰から飛び出してきた。「騒ぐな、殺されたいのか」。怖くて声も出なかった。

 自宅は、忌まわしい強姦(ごうかん)の記憶を呼び起こすだけの場所になった。「泥棒が入った」ことになっていたが、近所の人から「大丈夫だった?」と声を掛けられるたび、びくびくした。

 耐え切れず引っ越したが、何も変わらない。ミシッという家鳴りが、男の足音に聞こえる。「絶対また侵入してくる」。何度、鍵を確かめても安心できない。目をつむると、覆面の男が殴りかかってくる姿が浮かび、眠れない夜が続いた。

 <生きる気力をなくす>

 <記憶が抜け落ちる>

 <自分を責める>

 性暴力の被害者は、特に精神的な後遺症が重いと言われる。記憶や恐怖が鮮明によみがえり、パニックになる「フラッシュバック」に苦しむ人も多い。加害者と同じ服の色、コロンの香り、車のエンジン音――。何でも引き金になる。

 久美子さんの場合、それは「目の前に突然現れる男性」だった。途端に恐怖で足がすくむ。商品棚の陰から人が出てくるのが怖くて、近くのスーパーにも、一人で行けなくなった。

 半年後、男は逮捕された。一人暮らしの女性宅を狙い、同様の犯行を重ねていた。

 「負けたくない」と、勇気をふるって裁判を傍聴し、男の素顔も見届けた。しかし、今もフラッシュバックが起きては、振り出しに戻る日々が続く。「いつになったら楽になれるの」と途方に暮れる。

 何も知らない両親に悟られぬよう気丈に振る舞っているが、後ろめたい。将来、誰かと結婚しても、打ち明けられるかどうか。「何年か後、刑務所を出た男は、何食わぬ顔で日常に戻れるかも知れない。でも私は、死ぬまで一人で闘わなくてはならないんです」

 「思い出すのがつらくて、昨日は一睡もできなかった」。取材後、久美子さんは記者にこう打ち明けた。「それでも、被害者の苦しみを少しでも知ってほしかった」と話した。
(2010年2月15日 読売新聞)


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