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国際 : カンボジア「小児性愛天国」の悪名返上か (2010.11.17)

日時: 2010-11-19  表示:3995回

ニューズウィーク日本版 11月17日(水)23時14分配信
取り締まり強化で欧米からの小児性愛者の検挙率は上がったが、もっと根深い問題が見えてきた──

ブレンダン・ブレイディ

 この数カ月、カンボジアでは小児性愛者のニュースが紙面を賑わせている。少女17人(最年少は6歳だった)を買春したロシア人ビジネスマンは、刑期が 17年から8年に短縮された。児童への性的虐待が疑われるスウェーデン人は母国メディアの取材に対し、カンボジアでは裁判官に賄賂を送って刑期を短縮させることがいかに簡単かを自慢げに語った。

 同じく子供への性犯罪で現在、裁判にかけられているイギリス人は、05年に類似の容疑で十分な証拠あったにもかかわらず無罪となった男だ。性懲りもなくカンボジアに舞い戻ってきたということは、入国禁止の処罰もなかったらしい。

 しかし、このような恥ずべき事態はこの数年で改善されつつある。時計の針を10年前に戻してみよう。イギリス人ロック歌手で小児性愛者のゲイリー・グリッターが、母国から逃げ出してカンボジアに移住してきた頃だ。彼以外にも外国人による小児性愛事件が目立っていた。こうしたことから、この東南アジアの貧しい国は「小児性愛者の格好の隠れ家」という悪名がついてまわるようになった。

 当時は首都プノンペンの一画で子供たちが堂々と売られていた。NGOによる児童買春宿の捜査活動も、賄賂を受け取っている汚職警官のせいで失敗に終わるのが常だった。手ぬるい法律と現地の男たちの執拗な需要もあって、東南アジアは長く買春目的の旅行先になっていた。特にカンボジアは、長年にわたる内戦で、児童買春を規制する社会経済的・法的な土壌がまったく育たなかった。

 しかしカンボジアは変わった。この国ではもはやグリッターのような男が何食わぬ顔で法を犯すことはできない。現地の活動家や欧米からの圧力を受けて、カンボジアは03年から取り締まりを強化し、その努力はさまざまな側面で成果を上げている。例えば、最近は欧米人の逮捕が地元の新聞で報じられる機会が多くなった。さらに米政府の人身売買監視国リストからも外され、おかげで国際援助を得られやすくなった。

■取り締まりの網から漏れた地元民

「欧米の小児性愛者にとってカンボジアはもう安全な場所ではない」と、反小児性愛団体APLEのサムリーン・セイラ代表は言う。こうした変化は「わいせつ行為」で逮捕される人の増加にも表れている。APLEによれば、03年には8人だったのが昨年は36人に増えた。

 APLEは買春目的の旅行者を追跡し、買春の証拠を集めて地元警察に渡している。だが問題はここで行き詰まりやすいことだ。カンボジアの警察や裁判所は、経験が浅い人材も多く資金も不足しているため、汚職や職務怠慢に走りやすい。

 とはいえ、APLEによれば、こうした状況も改善されつつある。例えば、ある児童わいせつ行為事件を1年半前には「性行為に至らない愛撫」として審議を却下した裁判官が、今ではこの事件の審議に前向きだという。警察や司法に携わる人間が責任感を持ち始めている。

 警察機能の向上で、欧米の小児性愛者の手口は巧妙になった。最近、別々の事件で逮捕された2人のイギリス人は児童保護のNGOを設立して、これを隠れみのに子供たちに悪さをしていたと見られる。プノンペン警察の人身売買撲滅・児童保護課のカオ・テア課長は、このような詐欺行為に警察当局はだまされないと自信を見せる。

「われわれは外国人による性的虐待を止めることができる。以前よりずっと経験をつんでいるからだ」と、テアは言う。それは本当だろう。だが人権団体は、外国人以上に厄介な存在が取り締まりの網から漏れていると指摘する。それは、児童買春市場に群がる地元民、つまりカンボジア人だ。

■被害者に汚名を着せる文化

 APLEによれば、03年以降に「わいせつ行為」などで逮捕された141人のうちカンボジア人は37人、他のアジアの国の出身者は19人しかいなかった。つまり141人のうち大半が欧米人だったということだが、実際はカンボジアで小児性愛犯罪に手を染める人の中で欧米人の割合はごくわずかだ。

 児童保護NGOのECPATが10月に発表した報告書によれば、子供のときに売春していた人たちの多くが、客はカンボジア人だったと証言している。カンボジアにいる欧米人と地元民の割合を考えれば当然の結果にも思えるが、ECPATによればこれは「小児性愛は欧米人が犯す犯罪だという思い込み」を覆した。

「カンボジア人男性は、色白で見た目の若い美しい売春婦、つまり未成年を好む」と、ECPATカンボジア事務所のチン・チャンベアスナ代表は10月の会合で語った。さらに、これまで欧米人だけに目を向けてきたせいで、地元民による犯罪が見落とされてきたと付け加えた。

 人身売買などの調査を行うNGO、SISHAのスティーブ・モリシュ代表は言う。「私が話した多くのカンボジア人男性は、相手は若いほうが良いと言い、それを隠すべきこととも思っていないようだった」

 さらにカンボジアの文化では、事件の加害者よりも被害者のほうが風評で傷つけられやすい。今年発表された国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのカンボジアについての報告書によれば、性的に虐待された少女は、地元社会から追放されることが多いという。一方で有罪となった加害者が汚名を着せられることはほとんどない。

 こうした文化はそう簡単には変えられないため、政府はその犯罪が関心を集めやすい欧米人男性を標的にしてきなのだろう。だが人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンはこう語る。「欧米人の小児性愛者は低い枝になった取りやすい果実。そろそろ高い木に登って地元の小児性愛者を捕まえるべきだ」


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