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その他 : 「強姦容疑者は息子なの?!」デマに煽られ“電凸” ネット情報に潜む危うさ (2010.10.02)

日時: 2010-10-05  表示:3958回

産経新聞 10月2日(土)13時25分配信
【衝撃事件の核心】

 ある日突然、インターネット上で凶悪事件の容疑者の実家であるというデマを流されたとしたら…。女性2人を乱暴目的で車ではねるなどして死傷させたとして、強姦致死などの疑いで逮捕された男の名字と社名が一緒だった北海道の不動産会社に、そんな災難が襲いかかった。デマを信じた人から会社に抗議や問い合わせの電話が相次ぎ、倒産の恐怖にさいなまれた社長は不眠の日々を送った。誰でも手軽に書き込めるインターネット。同社の被害は人ごとではない。(高久清史)

 ■「頭、大丈夫?」となじられ…

 「こんな事件を起こして。ネット掲示板にお宅の息子と書いてある」

 8月26日午前11時半、北海道江別市の「外山不動産」に電話してきた女性は興奮した様子だった。受話器を握る外山(とやま)美喜雄(みきお)社長(60)は懸命に反論した。

 社長「それ違いますから」

 女性「あなたが違うといっても、その証拠が出ないと」

 社長「調べるなら、調べてください」

 女性「いや、調べてくださいじゃなくって。ネットではそういうことになっているから」

 外山不動産を巻き込んだ騒動。発端はその電話の3日前にさかのぼる。札幌市内で23日未明、路上を歩いていた女性2人が相次いで車にはねられ、1人が顔などを負傷。もう1人はその場から車で拉致され、約7キロ離れた山中で意識不明の状態で見つかったが、入院先の病院で死亡した。

 道警は同日、負傷した女性を乱暴目的で襲ったとして、強姦致傷容疑で、外山硬基(こうき)容疑者(23)を逮捕。9月13日には死亡した女性に対する強姦致死や殺人の疑いで再逮捕した。

 1回目の逮捕直後、ネット上の掲示板などに「(容疑者の)親は江別で外山不動産を経営している」などと書き込まれた。外山社長と容疑者の間に血縁関係などのつながりは一切なく、書き込みは事実無根。だが容疑者が不動産会社に勤務していたことが報じられたこともあり、デマ情報は急速に広がった。

 同社には事実確認の電話が相次いで寄せられるようになり、冒頭の女性もその1人だった。企業などに電話して問いただす行為をネットでは「電凸・電突(でんとつ)」と呼ばれる。外山社長が容疑者との関係を繰り返し否定したが、女性は納得しない。

 社長「興味本位で面白がって電話されると迷惑ですね。うちは違うんですから」

 女性「あのね、頭、大丈夫?」

 社長「え?」

 女性「頭、大丈夫? 面白い事件だからこういうことになるんだって」

 「何を言っても信じてもらえない」と無力感に襲われた外山社長。約10分間に及ぶ通話の中で、女性はこうも言い放ったという。

 「そんな対応じゃ全然だめ。対策を自分で考えてとらないと。永遠にこのまま、あなたの息子だっていうことで静まることはない」

 ■「居酒屋でおしゃべり」感覚で書き込み

 ネットは誰でも手軽に情報発信ができ、知りたい情報も探すことができることから、必要不可欠な情報メディアとなっている。だがその一方、デマや中傷を書き込むといった人権侵害は後を絶たない。

 昨年3月、お笑いタレントのスマイリーキクチさん(38)のブログに「殺人犯」など事実無根の中傷や、脅迫の書き込みをしたとして、警視庁捜査1課が名誉棄損や脅迫の疑いで男女6人を書類送検した。ネット上で以前からスマイリーキクチさんが殺人事件に関与したとする虚偽の書き込みが相次いでいて、同課によると、6人は「書き込みを見て許せないと思い、やった」などと説明していたという。

 昨年12月には知人男性について「女性をレイプした」「偽装結婚した」とネットに書き込み、名誉を傷つけたとして、大阪地検特捜部が名誉棄損の疑いで、無職の男を逮捕した。

 法務省人権擁護局によると、全国の法務局が人権救済に乗り出したネット上の人権侵害は平成17年が272件、19年が418件、21年が786件と急増している。その大半をプライバシー侵害や、名誉棄損が占めている。

 ネットにアクセスする端末にはネット上の住所に相当するIPアドレスが割り当てられているが、そこから実際に書き込んだ人物を特定するのは容易ではない。この発信者の匿名性がネット上のトラブルの背景にあるとされる。

 新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)は「匿名性には内部告発ができたり、本音を語れたりするといったメリットがある半面、責任感が薄れるという側面もある」と前置きをした上で、「居酒屋で仲間内でおしゃべりをするような感覚でうわさ話、悪口などを書き込む。実際にはネット上に一気に広まるが、その自覚がない人が多い」と解説する。

 ■“火消し”費用は200万円超

 ネット上で拡散する情報。最高裁が今年3月、ネットの書き込みをめぐり、名誉棄損罪の成立基準に関して初判断を示した。

 裁判ではネット上の書き込みに対して、マスコミなどの記述に比べて緩やかな要件で同罪の成立を判断すべきかが争点となった。1審は「利用者が互いに反論でき、情報の信頼性が低い」などと指摘した上で、「ネット上では故意にうそを書くか、可能な限り事実確認をしなかった場合に名誉棄損罪が成立する」という基準を示して無罪としていた。

 一方、2審は「ネットは今後も拡大の一途をたどると思われ、信頼度の向上がますます要請される」などとして有罪と判断。最高裁も「不特定多数が瞬時に閲覧でき、名誉棄損の被害が深刻になり得る。緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない」として被告側の上告を棄却した。

 最高裁が指摘するように、ネットによる被害は大きく、回復への道のりも並大抵ではない。札幌市の事件で騒動に巻き込まれた外山不動産では火消しのためにネット掲示板の管理者にデマ情報の削除を要請したほか、「容疑者と関係ない」とする書き込みを積極的に行った。取引先への釈明にも追われ、無関係を伝える折り込み広告を約20万枚出した。その費用は200万円を超えた。

 現在は抗議などの電話はなくなったほか、ネット上でも外山不動産に同情的な声が相次いでおり、騒動は収束している。会社から被害届を受けた道警は、デマを書き込んだ行為について信用棄損などの疑いがあるとして、捜査に乗り出している。

 外山社長は疲れ果てた様子で騒動を振り返る。

 「昭和62年に創業して、一生懸命やってきました。それが悪意のある書き込みによりダメになるかもしれないという恐怖で、3週間ぐらいは眠れない日々が続いた。デマが一瞬にして信じられる状況は本当に恐ろしいです」

 ネット上では情報が信じられやすいと指摘するのは碓井教授。「『しがらみのあるマスメディアで伝えられない情報を個人は発信できる』という考えに、『利害関係のない第三者が発信する情報は正しい』と信じる心理が加わっている」と説明する。

 こうした状況についてネット問題に詳しい豊田充崇(みちたか)・和歌山大准教授(情報教育)は「情報を読み解き、客観的に判断するメディアリテラシーと、中傷など不適切な書き込みに疑問を持てるようにする情報モラルを学校でしっかり教える必要がある」と訴えている。

2010年10月02日 産経新聞


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