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国際 : 【台湾】闇から流れる日本の最新AV:通信最大手も無断で配信 (2010.07.23)

日時: 2010-07-25  表示:4780回

7月23日8時30分配信 NNA

 台湾では日本の最新のアダルトDVDが当たり前のように売られている。裏の世界から流れてきたコンテンツは、駅前の商業施設や“台北の秋葉原”エリア、通信大手の配信サービスを通じて表の世界に顔を出す。なぜそんな事態がまかり通るのか。そこには外交的立場と著作権問題にまつわる台湾の特殊性が絡んでいる。【高田英俊】

 台北駅前の新光三越の東隣りにある商業ビル、K―MALL(松崗時尚購物中心)の地下1階には、日本のアダルトDVDを販売する店がある。平日夜に訪れると学生風や仕事帰りらしき会社員の男たちが、お気に入りを見つけようと棚を物色している。

 店内を撮影するととがめられそうなので、残念ながら写真では見せられない。しかしその光景は圧巻である。

 DVD大で格子状に区切られた壁一面の棚には、日本制作の大量のアダルトDVDの不正コピー品が整然と並ぶ。その量、ざっと1,000枚はくだらないだろう。トップ女優物、女子高生・人妻・痴漢・盗撮などの素人企画物、アダルトアニメ……。日本のDVDレンタルチェーン大手でもこれだけの品ぞろえはしていない。値段は会員向けなどの割引がある。実際に購入してみると、1枚たったの25台湾元。ちなみに日本でのアダルトビデオ(AV)制作費は少なくとも1本数百万円はかかる。驚くのは、レジでバーコードによるPOS(販売時点情報管理)システムを導入していたことだ。

 実はこうした壮観な光景の店舗はここだけではない。“台北の秋葉原”とも言われる「光華商場(光華数位新天地)」周辺にはこうした店が集中しており、ぶらぶらと歩いているだけで案内看板に出くわす。うたい文句にはこんなものもある――「専売日本同歩(日本同時発売専門)」。

 ■「台湾黒社会」が絡む

 なぜ日本のアダルトDVDがこれだけの種類、これだけの量で店頭を飾れるのか。著作権に詳しい日本の関係者が解説する。

 「DVDの元データを台湾に持ち込んでいる組織があるのは確実。日本語の各種証明書を偽造しており、日本人の関与がある。他人の著作物を無断で使用しているから原価は限りなくゼロに近い。安値でソフト制作業者に卸している実態があるようだ」。

 一方、AVコンテンツ卸売りなどを業務にする日系企業の関係者はこう言う。「日本の業界はきれいになっており、暴力団は関与していないだろう。ただし台湾の黒社会(日本の暴力団に相当)が絡んでいる」。関係者は身の安全の問題もあり、これ以上は詳しく話したくないとコメントを渋った。

 日本でリリースされた最新作は早ければ1週間後には店頭に並ぶ。中国語字幕なしと字幕付きの2種類があり、字幕付きなら日台の発売時差は2週間とやや遅れる。試しに買ったラブホテル盗撮物では、男女の会話が丁寧に翻訳されていた。先の日系企業関係者は「海賊版業者が日本で買い付けて送っている。問屋から買い付ければ店頭発売日より1週間早く入手できる」と不正コピー品流通の裏側を明かす。

 著作権者である日本のAV制作会社はこの事態を指をくわえて見ているわけではない。

 審査商品数ベースでAV業界の半分を超える業界団体、ビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合(VSiC、加盟企業68社=今年3月末時点)は国内外で不正コピー品の撲滅などに取り組んでいる。VSiCは今年5月、台湾の実態を把握しようと調査活動を実施した。店頭の様子は冒頭のようなものだが、一方で生産現場も突き止めている。

 調査報告書によれば、手がかりとしたのはDVDの金型を作成した工作機械、その金型を使ってDVDをプレスした機械のそれぞれに付けられたコードだ。各コードは蘭フィリップスがプレス機械出荷時に割り振るもので、生産工場が特定できる情報となる。購入したDVDはこのコードを明記した部分を意図的に傷付けて分かりづらくしていたが、DVD自体を分解して判読した。

 台北県新荘市の五股工業区のE社。納品部や出荷部らしき場所が門の外から見える。調査時にはちょうどDVDの部材入りとおぼしき段ボール箱が納品されていた。VSiC関係者はこれらの情報を持って、知的財産権を管轄する経済部智慧財産局へ駆け込んだ。VSiC海賊版対策委員会の中川利光調査部長は「字幕が入る事で、中華圏の爆発的な拡大があったと考えられる。台湾で無断でプレスしている工場をいくつか特定しており、今後、当局へ捜査を要請する予定」と述べた。

 ■最も大きな相手に圧力

 話は少し戻る。

 不正なコピー品の流通ルートは、大きく2つに大別できる。街の店舗と通信業者の配信サービスだ。VSiCや日本のAV制作会社は、この配信サービスも問題視している。

 ジャパンホームビデオ(本社:東京都中野区)やアウダースジャパン(本社:東京都中野区)などAV業界大手の担当弁護士らは4月に台湾で会見を開き、通信最大手の中華電信を提訴すると発表した。起訴を避けたいなら、MOD(マルチメディア・オン・デマンド)サービスで有料配信している日本のAVコンテンツの放映をやめるとともに、損害賠償金を支払うよう求めた。中華電信はこれに応じず、担当の簡啓イク弁護士(イク=火へん、つくりは日の下に立)は5月下旬、台北地方法院検察署に提訴した。

 簡弁護士によると、攻めの切り口は2つ。一つはわいせつ物の頒布として刑法に基づいて取り締まってもらう方法。もう一つは著作権の侵害として裁判所で争う手法。今回は後者を選んだ。さらに中華電信に的を絞ったのは、もともと政府系であり通信市場で圧倒的地位の同社を相手取れば世間の耳目が集まるからだ。「MODを始めてもう5年になる。コンテンツベンダーの松視などに配信場所を貸しているだけと言い張るが、ベンダーが著作権を侵害していることを知らないはずがない」。

 中華電信はNNAの質問状に対しても「ベンダーにプラットホームを提供しているだけ」(広報担当者)とのみ回答した。

 簡弁護士は訴訟の提起前、MODの番組表と日本のAVコンテンツを照らし合わせ、同じ内容のものを放送していると確認した。「場を貸して収益を上げており、まさに共犯。創作物制作の対価の受け取り手が間違っている」と簡弁護士。「最も大きな相手に圧力をかけて関連する業者も引っ張り出す」と語気を強める。

 著作物の不当な扱い、筋が通らない現実に立ち向かう簡弁護士は一方で、「この提訴は大いなる挑戦」であることも認める。

 ■前例なし、大いなる挑戦

 なぜ大いなる挑戦なのか。ここに台湾の特殊性が絡んでいる。著作権に詳しい先の日本の関係者が解説する。

 「台湾ではAVコンテンツに著作権がない。1999年の最高裁判決(最高法院88年度台上字第250号)が原因で、AVコンテンツの権利侵害に絡んで提訴される民事、刑事両訴訟はいずれも門前払い」。これは台湾の著作権法の立法目的が文化の健全な発展を重視しており、AVは公序良俗に反するとみなされているからだ。

 さらに台湾は著作権にかかわる2大国際条約の一つ、ベルヌ条約に加盟していない。2002年の世界貿易機関(WTO)加盟後は、同条約加盟に準じた著作権保護がなされるようになった。しかし、02年以降も99年の判例を改める考えが司法界にはない。「AVに著作権がないなど世界中を探しても見当たらない」(簡弁護士)。そもそも著作権を持たないAVコンテンツを誰がどう頒布させようが、問題になってこなかった訳だ。罰則が著作権法(最高で懲役5年または罰金500万元)に比べて軽すぎる刑法(最高で懲役2年または罰金3万元)も不正コピー品が大量流通する理由の一つだ。当局は、モザイクなしならわいせつ基準に抵触するため即座に取り締まれる。台湾にもAV制作会社があるが、モザイクなしで制作するため摘発に遭って息も絶え絶え。しかし、モザイク入りへの引き締めとなると、当局は途端に弱腰になってしまう。こんな実態が、裏の世界から流れてきたAVコンテンツが堂々と表の世界に出て来るのを後押ししている。

 性風俗に対する社会の観念が変わるのには時間がかかる。提訴に対する弁護士会からの反応は「前例がない。難易度が高い」だった。一方で、検察署が仮に訴訟開始の結論を出せば「黒社会も反応してくるかもしれない」。

 司法界のかたくなな姿勢に対し、VSiCが駆け込んだ智慧財産局はAVコンテンツに著作権はあるとの見解だ。司法と行政の二重基準という現実だが、行政としては「どの創作物に著作権があるか判断するのは司法。それを尊重するしかない」(張玉英・著作権組長)と及び腰だ。さらに「ポルノが社会でどう受け入れられるかは国・地域の文化の問題。著作権法改正を推し進めるつもりはない」(同)とにべもない。

 提訴した日本側は「著作権がないからと言って、権利者に無断で配信し収益を上げるのを許していいのか」と憤まんやるかたない。VSiCによると、日本でAV業界の組合・団体に加盟するのは238社。6月実績では実に1,600タイトルの新作を出している。しかし市場は伸び悩んでおり、新たな収益を海外で上げたい意向がある。提訴を機に契約に基づく配信ビジネスの確立を目指している。

 簡弁護士は、著作権保護によって不正コピー品の流通がなくなり、正当なビジネスが成立、ひいては不適切な頒布が是正されると説く。

 業界歴20年を超えるVSiCの中川氏によると、日本のAVコンテンツがアジアへ広がる中で、中国や韓国はわいせつ物であることを理由に厳しく取り締まってきた。両国では台湾ほどおおっぴらに店舗は構えられておらず、インターネットでの海賊版流通が主流という。VSiCはそのコンテンツのアップロードが台湾からであることも突き止めている。中国でのワゴン、屋台販売のDVDは台湾から流出しており、「中国で蒼井そら、インドネシアで小澤マリアなど人気AV女優がブレークした火付け役は台湾でプレスされたDVD」(中川氏)と深刻な実態がある。

 「台湾著作権法逐条解説」(経済産業調査会)の著書がある章忠信氏はAVコンテンツに著作権保護を与えた上で「風俗を乱すかどうか、頒布できるかどうかは刑法または関係法令によって論ずべきもの」(「台湾法学」2010年5月1号)と主張する。AVに創作性があれば著作権を享有してしかるべきとの考えで、さもなければ「台湾はいずれ“A”Vのために“B”級に成り下がってしまう」。


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