ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
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その他 : 性暴力を問う 第3部 奪われた笑顔<1>半世紀経ても癒

日時: 2010-12-05  表示:2374回

兄から被害 愛情と希望失った

 体に張り付いて、はがしたいのに、はがせない――。

 5歳の時から15歳まで、兄から性被害を受け続けた良子さん(仮名)(66)は、半世紀を経た今も消せない記憶を、そう表現する。ふとしたことで、あの忌まわしい時がよみがえり、心の傷が痛み、肌があわ立つ。

 「私には青春はなかった。夫さえ信じ切ることができない。川の流れのように、記憶も流せたらいいのに」

 終戦後の混乱期、大家族の末っ子として育った。食べていくのに精いっぱいの家庭で、勉強のできた15歳上の兄は、両親の自慢だった。

 初めて被害に遭ったのは、5歳の冬の夜。ふすまがスーッと開き、兄が布団に入ってきた。下半身を触られたが、何をされているのか理解できない。ただ怖くて、声も出なかった。

 以来、母が内職で夜なべしているスキを見計らっては、忍び寄ってきた。熱を出して家で一人で寝ているところを狙われたこともある。

 兄は「黙っとけ」としか言わなかったが、子どもながら「秘密にしないと大変なことになる」と感じた。特別扱いされていた兄。「ばらしたら、私の方が家を追い出される。我慢するしかない」。行為の意味が分かるようになっても、誰にも打ち明けられなかった。

 そして約10年もの間、ただ耐える日々。15歳の時、兄が結婚し、家を出た。「ああ、やっと終わった」。でも、苦しみに終わりはなかった。

 「私に未来はない」「一生結婚できない体になった」――。思春期を迎えると、何度も死にたい、と思い詰めた。男性への嫌悪感がぬぐえない。見合い話は断り続けた。

 母にはわかってほしくて、25歳の頃、兄にされたことを告白した。「そんなことするはずない。おまえの勘違いだ」と受け流された。母への失望。余計つらくなっただけだった。

 「女一人で働きながら生きる」と決めたが、時代が許さなかった。周囲のプレッシャーに負け、親の勧める相手と結婚。以来、被害を隠したまま、40年近くになる。

 2人の子に恵まれ、孫もできた。はたからは穏やかな夫婦に見えるだろう。だが今も、男性が信じられない。夫には申し訳ないが、心から「愛してる」と感じたことは一度もない。女として愛し、愛される喜びを知らないまま死んでいくのだろう、と思う。

 兄は80歳になる。この長きにわたる苦悩と恨みを、張本人は何も知らない。「兄のせいで、愛情も希望もすべて失った。あの世にいったら、地獄に突き落としてやりたい」

 良子さんは今年2月の連載第1部「被害者たちの叫び」を読み、読売新聞に手紙を寄せた。「このつらさを誰にも知られないまま死ぬのは嫌だ、と思ったんです。同じように苦しんでいる子はたくさんいるはず。周囲が気づいて、救ってあげてほしい」と語った。

 性暴力は、子どもにも向けられている。第3部は、子どもの被害に焦点をあて、影響の深刻さと回復や予防の手だてを考える。

◆子供の被害 長期支援を

 警察庁によると、09年に警察が把握した強姦事件のうち被害者が未成年だったのは4割の603件。うち、小学生の被害は36件、中学生の被害は101件だった。しかし、統計は氷山の一角に過ぎない。

 子どもの性被害は、表面化すること自体が非常に少ない。専門家によると、加害者の大半は親族や教師など身近な人物で、▽加害者や家族の立場が悪くなることへの不安▽自分がどうなるのかという恐れ――などから、子どもは被害をなかなか打ち明けられない。告白しても、周囲の大人から信用されないことも多い。

 人格形成の核心である〈信頼〉を打ち砕かれるため、被害者の子どもの心の傷は、極めて深いとされる。

 その結果、強い無力感や自責の念、性の認識の混乱などを招きやすい。思春期では、リストカットなどの自傷行為や薬の大量服用のほか、家出や「援助交際」などの非行の形で表れることも多い。

 封じ込めていた幼少期の被害の記憶が、成長してから突然よみがえり、心身のバランスを崩すこともある。

 専門家は「時間がたつほど、傷跡は複雑になり、治療が難しくなる。被害に苦しむ子どもの早期発見と長期的な支援が大切だ」と指摘する。
(2010年6月22日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<6>再犯防ぐ教育・治療 (2010.04

日時: 2010-12-05  表示:2415回

「塀の外」対策進まず

 服役を終えた男がたどり着いた離島。社会復帰へと踏み出すが、やがてその〈過去〉が明るみに。勤務先の工場に中傷ビラが張られ、男は追い込まれていく――。

 性犯罪の出所者に全地球測位システム(GPS)のチップが埋め込まれ、位置情報がネット上で公開される近未来を描いた、自主制作映画「scope(スコープ)」が5月、東京都内で上映される。「極論を描くことで性犯罪者の更生を考える材料を示したかった」と、卜部敦史監督(28)は語る。

 「ミーガン法」に基づき、住所や顔写真をネット上で公開する米国、GPS付き足輪の装着を義務付ける韓国など、再犯の恐れがある性犯罪者に対し、実際に監視体制をとる国が相次いでいる。

 一方、日本では、2004年の奈良女児誘拐殺人事件を機に、子どもに対する強姦(ごうかん)や強制わいせつなどの前歴者に限り、法務省が警察庁に出所予定日や居住地の情報を伝える制度が始まった。

 同省は、GPS装置を使った監視システムについても今年度、海外の運用状況の調査に乗り出す。「日本は甘い。厳重に監視すべきだ」との声がある一方、「過度な監視は社会復帰を妨げる」「プライバシーが侵害される」と懸念する専門家もおり、導入に至るかは不透明だ。

 男性ホルモンを抑える薬物治療、裁判所の治療命令に基づいた心理カウンセリング、孤立を防ぐための矯正ボランティア――。監視以外にも、欧米では、〈塀〉の外での更生を促す取り組みが進む。

 国内では、刑務所や保護観察所で「性犯罪者処遇プログラム」による再犯防止教育が行われているが、満期出所後までカバーする教育や治療の仕組みはない。

 藤本哲也・中央大教授(犯罪学)は訴える。「保護観察の充実や、出所後も一定期間、処遇プログラムを受けることを刑罰の一部に盛り込むなど、制度改革が必要だ。社会に出てからの更生の手だてを整えれば、被害者を減らすことにつながる」

 「今日は、スリップ(再発、再犯)について話しましょう」

 東京・池袋の精神神経科「榎本クリニック」。テーブルを囲む12人の男性に、指導責任者の精神保健福祉士・斉藤章佳さん(30)が語りかけた。06年から、性犯罪の前歴者や、性的な問題行動を抱える性依存症患者らへのグループ療法を行っている。

 長い沈黙の後、中年男性がようやく切り出した。「日課だった盗撮をやめたが、まるで絶食しているようでつらい」。痴漢行為の逮捕歴が複数あるという男性は「ひどいことをしている意識はあったが、何をどうしていいか、わからなかった。ここに来るのに10年かかった」とつぶやいた。

 予防・再犯防止の観点から治療に取り組む民間施設は全国に数えるほどしかない。同クリニックの手法は、刑務所の処遇プログラムと同様の「認知行動療法」など。1回1時間で1000円。週3回、3年間の継続を求めるが、強制はできない。年間約50人の参加希望者のうち、半数は途中で顔を見せなくなるという。

 「定着率は確かに低いかもしれない。でも、誰かがやらないと。加害者対策を全く講じない社会って、性暴力を許していることになりませんか」。斉藤さんは問いかける。(おわり)
(2010年4月18日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<5>受刑者プログラム受講 (2010

日時: 2010-12-05  表示:2419回

再犯防止「最初の一歩」

 「罪を反省している自分には必要ないと思っていたが、受けて良かった」

 奈良少年刑務所。再犯防止のための「性犯罪者処遇プログラム」を終えたばかりの30歳代の男性受刑者が、記者の取材に答えた。強制わいせつ罪などで服役中。約1時間半の授業を週2回、7か月間にわたり受けた。

 犯行時、「被害女性は、それほど事件を気にとめてない」「強姦(ごうかん)したわけじゃない」などと、都合良く解釈していたという。

 「自分の考え方のゆがみに気づいた。道を踏み外す危険と隣り合わせであることを、常に意識するようになった」

 再犯の恐れがある性犯罪者への処遇プログラムは、「週2回、8か月間」から「週1回、3か月間」まで、再犯リスクなどに応じ3段階に分かれる。旧監獄法改正で2006年5月から受講が義務付けられた。犯人に2度の性犯罪歴があった04年の奈良女児誘拐殺人事件がきっかけだ。

 「東の川越、西の奈良」。奈良少年刑務所は、川越少年刑務所(埼玉県)とともにプログラムの「推進基幹施設」と位置づけられ、成人も含め、西日本各地の性犯罪者を受け入れている。

 プログラムの中心は、「認知行動療法」と「リラプス・プリベンション(再発防止)技法」。女性や性行為に対する〈認知のゆがみ〉を自覚すると同時に、犯罪に至る行動パターンを分析、引き金となる状況を回避する対処法を見いだす。主に、グループワークで同じ立場の受刑者と意見交換し、内省を深めるという。

 「僕は〈人気のない所で女性が歩いていたら、こうやって脅そう〉などと、妄想の頻度が高くなった時に犯行を繰り返していた」と男性受刑者。

 こうした「危険信号」を感じたら、<自分のDNA型は警察に登録されている>〈老いた母親の泣き顔を思い出せ>と自らに言い聞かせて制御する方法も学んだ、という。

 「プログラムは“万能薬”とまでは言えないが、海外で一定の効果が証明された“有効な薬”の一つ」と、奈良少年刑務所の犬塚貴浩法務教官(36)。導入にあたり、日本がモデルとしたカナダでは、再犯率が大きく低下したという。

 法務省によると、国内の受講者は昨年3月末までで1087人。うち393人が出所した。しかし、8人が再び性犯罪で検挙されている。

 課題は多い。再犯リスクが特に高い者への授業は、カナダでは約500時間だが、日本では120時間程度に過ぎない。更生の意思がない者や、偏りが大きい累犯者に強制しても、効果は薄いという。

 「導入は評価できるが、まだ最初の一歩。欧米のように装置による監視や薬物治療を組み合わせるなど、性犯罪者の状況に応じた対策を考える必要がある」と、東京医科歯科大の山上皓(あきら)・名誉教授(精神科医)は指摘する。

 受講成果が試されるのは出所後だ。再犯しないと言い切れるか――。記者の質問に男性受刑者は答えた。「『自分は大丈夫』と過信することが、かえって危険と知ったから、断言はできません。学んだ対処法を実践し、一つ一つリスクを乗り越えていきたい」
(2010年4月17日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<4>日常に潜む被害 (2010.04.16)

日時: 2010-12-05  表示:2453回

「夫婦なら当然」根強く

 「騒いだら子どもが起きるぞ。おとなしく従え」

 2人の幼い子を傍らにして眠っていた深夜。別室にいたはずの夫が突然、覆いかぶさってきた。〈抵抗すれば、また殴られる〉。言いなりになるしかなかった。

 「つらいだけだった。私にとって、あれは確かにレイプでした」

 10年間の結婚生活の末、家庭内暴力(DV)で離婚した近畿在住の裕子さん(仮名、50歳代)にとって、<夫からの性暴力>は口にするのもはばかられる過去だ。

 優しいと思っていた夫は結婚後、酒を飲むと暴力を振るうようになった。仕事からの帰宅が遅い、夕食の品数が少ない……。ささいなことで怒りが爆発した。

 やがて性的な暴言や強要もひどくなった。アダルトビデオを見せ、「同じようにやれ」と迫る。避妊を拒まれ、望まぬ妊娠で中絶もした。でもその時は、「夫婦とは、こんなもの」と思い込んでいた。

 日常に潜む性暴力。2008年の内閣府の調査では、「無理やり性交された経験がある」女性の4人に3人が、「加害者と面識があった」と答えた。その「加害者」のうち、35%で最多だったのは、夫だった。

 米国やドイツでは1970年代以降、女性運動の高まりを背景に、「夫婦間を除く」としていた強姦(ごうかん)罪の適用規定を撤廃する動きが相次いだ。

 日本の刑法は明治以来、例外は設けていないが、夫婦間の被害が明るみに出ること自体、極めて少ない。

 裕子さんと交流のあるDV体験者たちも、夫からの性被害を秘めていた。1人が口火を切ると、「実は私も……」と、告白が相次いだという。

 「『夫婦なら、欲求に応じるのは当然』という社会通念が根強い。被害を自覚できない妻さえいる」。DV被害に詳しい「ウィメンズカウンセリング京都」のカウンセラー、周藤由美子さん(46)は強調する。「人格を無視した性行為の強要は、性暴力であり、耐えがたい傷を残す。たとえ夫婦でも、許されて良いはずがない」

 〈デートDV〉。恋人から受ける暴力や過剰な束縛は、こう呼ばれる。中高生では「家に遊びに行ったら、無理やりセックスをされた」などの性被害も問題になっている。

 東京の民間団体「アウェア」の山口のり子代表(60)は、高校などで、デートDV防止の啓発活動を行う。DV加害者への教育プログラムを行ううち、若い頃から恋人を所有物のように扱い、暴力を続けてきた男性が多いことに気づいたからだという。

 同団体が06〜07年に高校生ら約2500人に聞いた調査では、交際経験のある女子の22%が、デートDVを受けたことがあると回答。男子の21%が、「愛情があるなら、少々嫌でもセックスに応じるべきだ」と考えていた。

 山口代表は指摘する。「恋人や妻を見下し、対等な男女関係が築けていないことがDVの背景にある。当事者はもちろん、社会全体の意識が変わらない限り、性暴力はなくならない」
(2010年4月16日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<3>ゲームや漫画、あふれる情

日時: 2010-12-05  表示:2363回

規制か、表現の自由か

 ある日本製のパソコン用アダルトゲームが昨年5月、海外から強い非難を浴びた。

 「レイプレイ」。男性キャラクターを操作し、少女やその母親を監禁して強姦(ごうかん)を繰り返す内容。インターネット販売で海外にも流通、国際人権団体から抗議を受けた。「日本政府はレイプを奨励するようなゲームを放置するのか」

 ゲームや漫画、アニメの性描写は、局部の露出など刑法違反のわいせつ物を除けば、18歳未満への販売規制が各自治体の条例にあるだけだ。

 批判を受け、メーカーは販売を中止。自主審査を行う業界団体は、性暴力を扱うゲームの製造禁止を決めた。

 「架空の世界なのに、なぜたたかれるのか」と、兵庫県のゲーム機販売店員の男性(32)。趣味で買ったアダルトゲームは約300本。「もっと残虐なものもある。影響を受ける人がいるかもしれないけど、それは本人の問題では」

 「解釈の仕方次第で、表現の封じ込めが可能になる」「世界から注目される日本の漫画に元気がなくなる」

 3月15日、漫画家の永井豪さんや里中満智子さんらが記者会見し、漫画やゲームなどへの規制を強める東京都青少年健全育成条例改正案に対し、反対を表明した。

 改正案は、18歳未満と判断される登場人物の性行為のうち、強姦など反社会的な行為を肯定的に描いた作品について、18歳未満への販売を禁じる――などとする。

 2007年の内閣府の世論調査では、架空の子どもの性行為を描いた漫画の規制に、賛意を示した人が86%に達した。中高生から性の相談を受ける東京の産婦人科医、赤枝恒雄さん(66)は規制に賛成の立場だ。「実写よりリアリティーがあるくらい。おぞましい描写を中高生が平気で読み、まねている。表現の自由というより、道徳の問題だ」

 一方、出版業界の反発は大きく、「検閲や弾圧につながる」「表現の規制強化だ」などと反対声明が相次いだ。

 都議会は「議論不足」として、条例案の採決を見送った。

 社会にあふれる性暴力の情報。娯楽の対象となっているのは「仮想」や「架空」だけとは限らない。

 03〜04年、アダルトビデオの撮影現場で、4人の女優が承諾なく多数の男に強姦され、水中に顔を沈められるなど激しい暴行を受けた。制作会社の経営者が強姦致傷罪などで懲役18年となるなど、11人の有罪判決が確定した。

 しかし、その犯罪行為を撮影した映像そのものに法規制はかからない。AV商品化されたシリーズは、現在も中古品店などで流通している。

 ネット上では、この事件を含め、性犯罪の裁判を露骨に再現した傍聴記が多数掲載され、半永久的に閲覧出来る状態になっている。

 ある強姦事件の被害女性は語る。「被害者の心境を思えば、普通の神経ではできないこと。表現の自由が取り違えられているのでは。性暴力を扱ったものが『楽しまれている』社会に、疑問や居心地の悪さを感じます」
(2010年4月15日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<2>加害少年の半数「影響」 (2

日時: 2010-12-05  表示:2305回

過激ビデオまね暴走

 「18歳未満立入禁止」と記された間仕切りの奥。天井に迫る高い棚に、無数のアダルトDVDが並んでいる。レイプ、拷問、奴隷、監禁――。「陵辱系」と表示された一角は、そんなタイトルの作品で埋まっていた。

 数十軒のDVD販売店が連なる大阪・日本橋。手足を縛られた女性が写るパッケージを品定めする男性客。顔にニキビが残る若者が、かごに山積みされた数百円の中古品に手を伸ばした。

 「願望があっても、日常では体験できない世界を簡単にのぞけるから」。月に1度は日本橋を訪れるという男性会社員(43)はそう言って、電車での痴漢をテーマにした作品を買った。

 「暴力的なものも売れるから作るんですよ。制作側は、いちいち後ろめたさなんて感じない」と、アダルトビデオ(AV)制作会社の元社員の男性(30)は言う。「『本物です』とうたった強姦(ごうかん)モノもあるけど、しょせん演出。信じる人なんて本当にいるのかな」

 「AVを見て、僕にもできると思った」

 昨年10月、大阪地裁の法廷で、強姦致傷罪に問われた30歳代の男は、そう述べた。ビデオの内容を参考に、無施錠の部屋に侵入して女性を襲う手口で、10件以上の犯行を重ねていた。

 「女性はレイプを嫌がっても、最後にはAVのように喜んで抵抗しなくなると思っていた」と供述した。

 近畿地方に住む30歳代の女性は5年前、男に部屋に押し入られ、強姦の被害にあった。逮捕された男もAVをまねたという。犯行方法は、ビデオの内容そのままだった。被害者は女性を含め6人。事件のトラウマに苦しんできた女性は、憤りをあらわにする。

 「犯罪の手口を教えているようなもの。現実に、こうして被害者もいるのに、なぜ野放しになっているのでしょうか」

 警察庁科学警察研究所が1997〜98年に、性犯罪の容疑者を対象に行った調査では、33%が「AVと同じことをしてみたかった」と回答。少年に限ると、その割合は49%に跳ね上がった。

 約9年前、福島市内で12人の女性を襲った高校生(当時)は、小学生の頃から暴力的なAVに漬かり、視聴だけでは飽き足らなくなったことが動機だったという。判決は「AVの影響による人格形成のゆがみがあった」と指摘した。

 ポルノと性暴力との関係について、評価は定まっていない。「欲求を発散させる効果があり、犯罪抑止につながる」とする説がある一方で、北米でのある実験では、〈暴力的ポルノが女性に対する攻撃性を増長させる〉との結果が報告されている。

 「ポルノ・買春問題研究会」代表、中里見博・福島大准教授は強調する。「女性をモノ扱いし、女性がレイプを楽しんでいるような描き方をした作品は多い。見続けているうちに、『レイプは大したことない』と、性暴力を容認する価値観に偏る危険性がある。視聴者は、“理性的な大人”ばかりではない」
(2010年4月14日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第2部 病巣<1>支配欲、理不尽な犯行 (2010

日時: 2010-12-05  表示:2316回

被害女性に思い至らず

 きっかけは、交際相手とけんかして、憂さ晴らしに出た深夜のドライブだった。

 車の前を、見知らぬ女性が一人で歩いていた。

 〈楽しそうに見えた。自分の彼女の姿にダブり、急に腹が立ってきた〉

 交際相手の借金を肩代わりし、返済のために働きづめだったが、その間も交際相手は飲み歩いている様子で、他の男性の影もあった。鬱憤(うっぷん)がたまっていた。

 女性の後をつけ、襲った。

 〈ドキドキしたが、簡単だった〉。以来、気持ちが行き詰まるたび、車で一人歩きの女性を狙った。

 〈気分がすっきりした。またやってしまったという後悔、ばれないかという焦りもあったが、やめられなかった〉

 犯行時、被害女性に思いを致すことはなかったという。

 男は30歳代。2年余りで10人以上を襲った強姦(ごうかん)などの罪で起訴され、近畿地方の拘置施設にいる。犯行の経緯などを便せん21枚に記した手紙を、読売新聞に寄せた。

 〈逮捕されて良かった。事の重大さに気づかず、もっとひどいことをしていたかもしれない〉〈自分の勝手な行動で深い傷を負わせてしまった。何度謝罪しても被害者の心の傷は決して消えないと思う〉

 反省と謝罪の言葉。しかし、文面の大半は、交際相手への恨みと〈女性を見るだけでイライラした〉などの一方的な怒りで占められていた。男の、更生の行方はわからない。

 「性暴力は、性欲だけでは説明できない」

 少年院や刑務所で多くの加害者と向き合ってきた藤岡淳子・大阪大教授(非行臨床心理学)は、加害者の心理をこう指摘する。

 「支配したい、男らしさを誇示したい……。そんな欲求を、性という手段で自己中心的に満たそうとする。強姦犯は特に怒りや支配欲が強い」

 さらに、被害者に責任を転嫁して性暴力を正当化する、ゆがんだ〈強姦神話〉も後押ししているという。

 内山絢子・目白大教授(心理学)が、性犯罪の容疑者553人と、無作為抽出した一般男性688人を比較した調査がある。

 「女性は『嫌だ』と言っても、本当はそんなに嫌がっていない」は容疑者が21・1%(一般2・5%)、「セックスしてしまえば、女性は自分のものになる」が13・5%(同0・9%)、「女性は誰でも強姦されてみたいと思っている」が4・5%(同0・6%)――。各設問に賛成した割合は、両者で大きな開きがあった。

 理不尽な思考。「ストレスや怒りの解消法はいくらもある。なぜ何の関係もない相手にぶつけるのか」。数年前に強姦被害に遭った女性は、やりきれなさを募らせる。

 「レイプ行こうや」

 昨年5月に通りがかりの女性を車に押し込んでけがを負わせたとして、集団強姦致傷罪に問われた20歳代の男4人の犯行は、そんな「冗談半分の言葉」で始まったという。

 「みんなで盛り上がり、反対する者はいなかった」「場の雰囲気を崩したり、仲間に嫌われたりしたくなくて断れなかった」――。

 奈良地裁で行われた裁判員裁判の審理。被告人質問では身勝手な弁明が続いた。

 一方、被害女性の代理人は、女性が一人で外出できなくなるほど心に深い傷を負った、と訴えた。

 泥酔させた女性を襲うなど、若者の集団による性暴力は後を絶たない。共通するのは、仲間内の「ノリ」で犯行に走る安易さと、性被害の深刻さへの無理解だ。

 同11月、4人に有罪を言い渡した後の記者会見で、裁判員らは、率直な感想を述べた。

 「自分と同年代で、友達でもおかしくない普通の人が、場の雰囲気で人権を踏みにじるとは」「案外簡単に、自分や家族が被害者や加害者になってしまうのではないか」

 「なぜ起きるのか、どうしたら防げるのか」「社会の問題として考えなければ」。連載第1部「被害者たちの叫び」には、そんな反響が多く寄せられた。第2部では、性暴力の背景を検証し、加害者の心理と更生を考える。
(2010年4月13日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第1部 被害者たちの叫び 告白、驚き…反響

日時: 2010-12-05  表示:2376回

 2月12日付朝刊から8回にわたり掲載した連載「性暴力を問う 被害者たちの叫び」には、手紙やメールなど162件の反響が寄せられた。その3割は、被害を経験した人たちから。「数十年間、誰にも話せなかったことを初めて書きます」。長い沈黙を破っての告白もあった。性被害の深刻な影響に対する驚きの声、「加害者が許せない」という男性からの意見も目立った。一部を紹介する。

◆人生を奪われた

 〈2度命をあきらめようとしましたが、そのたびに助けられ、仕方なく生きている状態です〉。10年以上前に強姦(ごうかん)の被害に遭ったという女性は、生と死のはざまで揺れる心情を、手紙につづった。

 〈私を助けた人に言いたい。『フォローも何もできないくせに』。でも放っておかないで。話を聞いて。これも本音。本当は、あんなやつのために死にたくない。被害者の心は生きている間中、ずっと叫び続けていると思います>

 50歳代の女性は、高校時代に集団強姦に遭い妊娠、両親に黙って中絶した過去を手紙で明かした。優しい夫と巡り合い、結婚したが、体を求められるたび涙に暮れた。フラッシュバックに襲われ、統合失調症で入退院。それでも、被害は家族に明かしていない。

 <主人にごめんなさい。娘にも初めての赤ちゃんじゃなくてごめんなさい。皆を欺き、ひどい女だと思うと泣けてきます>。そして、<たった一度のことで、心に病を抱え、取り返しのつかない人生にされた>と締めくくった。

 兄や同僚から被害を受けたという女性は、<もう異性を好きになれない。仕事どころか、生活もまともにできません>と憤り、<被害を語るまでに時間がかかります。時効の廃止を願ってやみません>と訴えた。

◆痛みに寄り添う

 兵庫県の主婦(71)は、息子の妻が幼少期に受けた被害を、最近知った。<幻覚を見て、悪夢にうなされていることは聞いていましたが、性暴力による心因性のものと診断されて驚きました>。被害が原因で、妊娠できない体にもなっていたという。

 <心優しく気遣いのできる彼女が、私は大好き。『孫を産めなくてごめん』なんて言わなくていい。心の傷が癒え、幸せな人生を歩めるよう祈っています>

 数年前に、実名で被害を公表した松山市の柳瀬経子さん(62)は、〈数十年間、隠してきましたが、公表したことで少し楽になりました〉と半生を振り返った。

 中学時代、集団による性的暴行の被害に。自傷行為を繰り返し、自殺も考えた。普通の結婚はできないと、21歳で暴力団員と結婚、「極妻」として生きた。離婚した今は、月に1度、自宅を開放して被害者らの悩みを聞いている。

 〈語ることで心の安らぎが得られる人もいるはず。同じ痛みを分かちあうことで、立ち直ることができれば〉

◆何をすべきか

 兵庫県西宮市の女子大学生(21)は、<被害者の生きづらさが、これほどとは……。まず私たちが耳を傾けなければ。被害者だけが助け合う社会であってはならない>と意見を寄せた。

 <身近な人が被害に遭った時、支えられるか>と自問したという、広島県福山市の会社員男性(41)。<男性は、周りの命を守るべき存在だと思うが、性犯罪では女性の命を傷つけている。男に生まれた意味を考えさせられた>とつづった。

 多数のお便り、ありがとうございました。今後も様々な視点から性暴力に関する問題を取り上げていきます。

(性暴力問題取材班)

 <孤独に過去と闘い続けている><今を 未来を 幸せに生きたい>

 今も苦しんでいますが、現状を話せる人は1人もいません。「いつまでも過去に固執している」と思われたくない。時がたつにつれ、周りに「助けて」「つらい」が伝えられなくなり、孤独に過去と闘い続けている人は多いのでは(大学時代に強姦の被害に遭った20歳代女性)

 心の中に苦しい思いが塊となっている。男性をだれも信用できず、恋愛はできませんでした。親の薦めた人と結婚しましたが、心から愛したことはありません(兄から被害を受けていた60歳代女性)

 「怖くて声も出ない」感覚は、当事者でないとわかりません。とにかく早く済むことを願う――。その間にプライドも何もかもずたずたになるのです(小学生時代に被害に遭った女性)

 優しい主人と子どもと幸せに暮らしています。過去は話していません。今を、未来を、幸せに生きることに残された人生を費やしたい(幼少期に性的虐待を受けた30歳代女性)
(2010年3月3日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第1部 被害者たちの叫び<8>「社会変える

日時: 2010-12-05  表示:2369回

私も顔を上げて生きる

 何かを訴えるような目で見つめる女性、少年時代に性虐待を受けた場所でむせび泣く青年、バラが彫られた腕に残るリストカットの跡――。写真一点一点に、被写体になった性暴力被害者のプロフィルが添えられている。

 米国在住のフォトジャーナリスト、大藪順子(のぶこ)さん(38)は、性暴力のむごさと、生き抜く被害者の力強さを、カメラを通じて伝え続けている。

 新聞社のカメラマンだった1999年、イリノイ州の当時の自宅で強姦(ごうかん)に遭った。うつ状態やパニック障害に苦しむ日々。「レイプで人生を終わらせたくない」。2年後、米国やカナダで撮影を始め、70人の素顔に向き合った。日本でも、写真展や講演会で体験を語る。

 2006年4月、故郷の大阪で開いた講演会。大藪さんは、聴衆の中にいるだろう〈声なき被害者〉に呼びかけた。

 「自分を責めないで。あなたは犠牲者じゃなくて、サバイバーなんです」

 苦難を乗り越え、生き抜いた人をたたえる意味が込められた言葉、サバイバー。

 会場で、兵庫県に住む響子さん(仮名)(31)が涙を流しながら聞いていた。

 響子さんは13歳の時、警察官を名乗る男に、民家の陰に連れ込まれ、性器を触られた。怖くて誰にも言えず、胸の奥に封じ込めた。

 それからは、度々体調を崩し、学校を休んだ。何度も死にたいと考える。出会い系サイトで知り合った男たちとの関係に依存もした。「私は、どこかおかしい」。でも、自分では理由が分からなかった。

 記憶の扉が開いたのは、26歳の時。ふと手にした本に「性的虐待」という言葉を見つけ、突然、13年前の被害がよみがえった。本にあったトラウマの症状が、自分に当てはまっていた。あれが私の人生を狂わせてきたのか――。

 過去を克服するために、被害者の自助グループに参加し、思いを打ち明けた。フラッシュバックと闘い、わき上がる怒りと「犯人から逃げなかった自分が悪い」という自責の念に、もがいた。

 大藪さんの講演を聞いたのは、そんな時だった。

 「私も顔を上げて生きる」

 07年11月、自らの企画で、仲間とともに大藪さんの写真展を開いた。さらに一歩を踏み出そうと、春からは、1年間の滞在予定でカナダに渡る。

 「過去は消せない。それでも、生き延びた自分に誇りを持ちたい」

 大藪さんと、「性犯罪被害にあうということ」の著者、小林美佳さん(34)。実名で被害を公表した2人の女性は昨夏、支援者らに後押しされ、「性暴力をなくそう」キャンペーンを始めた。

 啓発用の冊子には、こう記した。

 〈みんなが性暴力の本当の姿を理解し、「あなたが悪いのではない。悪いのは暴力をふるった側だ」と言ってあげられるようになることが、被害者が声をあげられる条件です。そして、この犯罪を根絶する第一歩なのです〉

 2人は口をそろえる。

 「今、社会が耳を傾け、知ろうとしてくれている、と肌で感じる。この機会を逃してはいけない」

(おわり)

 社会部・岸辺護、久場俊子、辻阪光平、佐々木栄が担当しました。
(2010年2月20日 読売新聞)

その他 : 性暴力を問う 第1部 被害者たちの叫び<7>ひとりぼっち

日時: 2010-12-05  表示:2314回

「命守る」支援者も連携

 岡山市の犯罪被害者支援団体「VSCO(ヴィスコ)」専務理事の森陽子さん(60)には、忘れられない少女がいる。

 自宅で同級生から強姦(ごうかん)の被害に遭った中学1年生。2006年秋、母親からの依頼で初めて対面した。カウンセラー歴を積んできたが、「最近の子はこんな感じなのかな」と戸惑った。取り乱す様子もなく、淡々として見えたからだ。

 しかし、少女は家出や自傷行為のリストカットを繰り返すようになった。連絡を取り続け、やんわりと精神科の受診を勧めてもみたが、「私は弱くない」と嫌がった。

 2年後、家出先で睡眠薬を飲み、亡くなった。死因はショック死。15歳だった。

 苦しみの深さに気づけていたら――。以来、「見えない奥底の傷もくみ取れるようになりたい」と願い続けてきた。

 犯罪被害者保護法成立から10年。性犯罪では、告訴期限(6か月)の撤廃、集団強姦罪の新設、事件直後の感染症検査や避妊措置の公費負担などが進められてきた。

 しかし、お茶の水女子大の戎能(かいのう)民江副学長(法女性学)は指摘する。「性暴力で仕事や安心できる家を失った人への公的支援は、なきに等しい。医療・精神面をケアする専門的な受け皿も足りない。社会が議論を避けてきたからだ」

 そんな「壁」に立ち向かい、森さんら25人のスタッフは日々、奔走している。

 自宅で襲われた女性が公営住宅に転居できるよう、自治体にかけあう。通院や、事情聴取の行き帰りに付き添う。商店街で募金活動をし、精神科の受診費用などを支給する独自の基金も設けた。

 「大切な命をもう失いたくない」と森さん。「DV(家庭内暴力)もセクハラも、見向きもされない時代があった。実情を訴え続ければ、社会はいつか受け止めてくれる」

 医療関係者も動き始めた。4月、阪南中央病院(大阪府松原市)内に、全国初の総合支援窓口「性暴力救援センター・大阪(SACHICO)」が誕生する。

 女性支援員が24時間、SOSの電話を受け、寄り添う。外来とは別に、専門の待合室や診察・面談室を設け、精神科医や弁護士にもつなぐ。必要なサポートを一か所の窓口で提供する仕組みだ。

 「女性の一生を診る医師として、性暴力の問題は避けて通れない」。センター準備室長の加藤治子さん(60)は、同病院の産婦人科医として長年、勤務する中で、そう思い続けてきた。心身の早い回復には初期対応が重要だが、一人で悩んだ末、心の傷が深くなってから来院する人も少なくない。専門家が連携し、「被害者のための場所」をつくろう、と呼びかけた。

 「置き去りにされてきた被害者のために、まず旗を立てたい。そして『ひとりぼっちと思わないで』と伝えたい」

 旗の下には今、支援員希望者36人が集う。
(2010年2月19日 読売新聞)

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