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製作被害 : <AV問題>有識者「もっと現場の知見を」 (2016.09.14)

日時: 2016-09-14  表示:6426回

毎日新聞 9月14日(水)7時0分配信

 12日に内閣府男女共同参画会議の「女性に対する暴力に関する専門調査会」(会長・辻村みよ子明治大法科大学院教授)が行ったアダルトビデオ(AV)出演強要問題に関するヒアリングでは、2人の有識者がそれぞれの見地から被害防止策や法制度上の課題などについて語った。調査方法論や性産業研究で知られる神戸大大学院国際文化学研究科の青山薫教授は「現場の内情を知るAV業界人をもっと調査に巻き込んでいくべきだ」と強調。刑事法や北欧法に詳しい琉球大大学院法務研究科の矢野恵美教授は、スウェーデン刑法との比較から「日本では性犯罪の範囲が狭く、AV強要の処罰には壁がある」と指摘した。それぞれの発言の概要を紹介する。【AV問題取材班】

□青山教授の発言概要

<海外のポルノ規制>

 EU(欧州連合)や米国では成人(18歳以上)が合意して出演するポルノは合法。ただし、EUにはレイプなどを扱う「暴力ポルノ」を違法とする国もある。米国は(1)わいせつである(2)「性的攻撃性」を規定した州法に抵触する(3)「芸術的」などの価値が認められない−−の3要件がそろった場合、州法で制限できる。一方、アジア・アフリカ地域はポルノを違法・規制対象とする国が多い。

<注目すべき海外の知見>

 アメリカ国立衛生研究所が1980年代、アルコール依存症や薬物乱用の対策として打ち出した「危害軽減(ハームリダクション)アプローチ」は参考になる。「完全な禁欲」が現実的でない場合、どうすれば効果的に危険を減らせるかという具体策で、コンドームの無料配布などが10代の妊娠や性感染症の予防に効果を上げている。また、国連開発計画(UNDP)などが掲げる「エンパワメントアプローチ」も重要だ。取り締まりや規則でなく「当事者の力を引き出すこと」で事態を改善しようとする姿勢で、例えばセックスワーカーが主導するコミュニティーを支援すれば、人権じゅうりんを避けつつ継続的なHIV予防などを実現しやすい。

<調査に当事者の参加を>

 「エンパワメント」の考え方は、社会事象の当事者(マイノリティ)が中心となって解決策を探るという「当事者参加行動調査」の手法から生まれてきた。調査のプロセスを評価し、結果に織り込んでいくことが当事者の利益にもつながる。調査の実効性を高めるためにも現場を知る人を巻き込んでいくべきだ。AV強要に関する調査でも、内部の事情を知る人たちを「有識者」として扱い、こういった(国の調査会の)テーブルに招く必要がある。

<規制強化と「スティグマ」>

 フランスやノルウェー、オーストラリア、英国では性産業への規制強化がアンダーグラウンド(地下)化を招いたと報告されている。厳しく取り締まれば、産業がネットの世界に入るなどしてどこかへ行ってしまう。「スティグマ(汚名。ネガティブな意味のレッテル)」が強化され、労働条件は悪化し、働く人たちのネットワークが失われる。手段が目的を裏切り、当事者への危害を増やすことにならないかと危惧している。

□矢野教授の発言概要

<現行刑法の適用>

 日本の現行刑法でも処罰の可能性はある。「(出演しないと)撮った写真をばらまくぞ」と言えば「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知」したことになり、脅迫罪に当たるだろう。しかし、「親にばらすぞ」だったら当たらないかもしれない。現場で意に沿わない行為をさせられたとすれば、強要罪に当たるのではないか。また、準強姦(ごうかん)・準強制わいせつ罪の「抗拒不能に乗じて」という要件は、モデル志望者を全裸にして撮影した事例(81年東京高裁判決)でも認められている。これは被害者が無知から「モデルになるには我慢しなきゃ」と思い込んだケースで、AV強要と親和性がある。

<立証、処罰の壁とは?>

 スカウトや事務所幹部など、現場にいなかった人の処罰には大きな壁がある。共同正犯、教唆犯、ほう助犯などの可能性はあるが「ゼロではない」という程度。現実には「あらかじめ相談している」「現場で犯罪を行う者に指示している」などの要件をなかなか満たしきれない。現場で行為をするのは男優だが、(強要されていることを)どこまで知っているのか。また、(面接や撮影は)基本的に密室で行われ、加害者は理論武装した複数の大人であるのに対し、被害者は若く1人である場合が多い。「契約があるから訴えても犯罪にならないぞ」などと脅されればあきらめてしまうから、そもそも警察に認知されない。

<スウェーデン刑法>

 「性犯罪は重大な人格権の侵害である」という基本的な考え方があり、捜査側にも「逃げ得」は許さないという強い思いがある。レイプ罪は、直接的な暴行だけでなく「深刻な恐怖を抱えていること」「その他の特別に危険な状況」などを不当に利用したと認められれば適用される。また、「社長とモデル志望者」のように明らかな地位の違いを利用すれば「依存状況にある者の性的利用の罪」が適用される。こうした条文はスウェーデンに限らず、かなり多くの国が持っている。被害者国選弁護人の存在もポイントだ。日本でも被害者の一部を日弁連などが支援しているが、より対象を広げた制度が必要ではないか。

<早期教育の必要性>

 刑事法には「被害が発生してからでなければ動けない」という限界があり、やはり啓発活動と教育が重要だ。啓発の対象は子供の親や教員にも広げるべきだ。親や教員の「だまされる方が悪い」という発言を聞いて相談できなくなったという子供も多い。また、「被害に遭わないように気をつけろ」という教育はスティグマを生むため、注意が必要だ。

製作被害 : AV強要は「氷山の一角」か? 支援団体代表が語る「差し止

日時: 2016-09-13  表示:6422回

withnews 2016年09月13日

 若い女性がアダルトビデオ(AV)に無理やり出演させられる被害が広がる中、支援団体の重要性が増している。6千人以上の女優がいると言われる業界。表面化する被害は「氷山の一角」なのか。映像がネットで拡散してしまう時代、問題のある作品の流通を止めることはできるのか。NPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」の藤原志帆子代表に聞いた。(朝日新聞経済部記者・高野真吾)
イメージDVD、実はAV撮影
【NPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」は「本人の自由を奪い、意思に反した行為を強制し、搾取する犯罪である」「人身取引」の根絶を目指し、2004年に前身の団体が設立された。当初は売春をさせるために日本に連れてこられた外国籍の被害者を救う活動などをしてきたが、近年、AV出演強要被害の相談が増えてきた。】

 私たちライトハウスはPAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会)と協力し、AVに関する相談と支援にあたっています。2団体に相談にきた女性は、2012年、13年は1人でしたが、14年から急激に増えて36人になりました。昨年は62人に上り、今年も8月末時点で74人となっていて、累計相談者は174人にも及びます。

 イメージDVDを撮ると聞いてスタジオに着いたら、全く知らされていないAVの撮影だった。最初の撮影も嫌々だったのに、契約書や違約金を盾に脅されて続けざるを得なかった。ほとんどの相談者が、こうした強要被害にあっています。

 14年に相談が急増した背景は定かではありませんが、今年とくに増えたのは「AV出演強要」の問題が、NHKや毎日新聞など各種メディアに取り上げられたことが大きいと考えています。

 一説にはAVに出演する女優の数は6千から8千人いて、うち毎年4千人から6千人が入れ替わると言われています。この数千人という母数に比べて、私たちのところに来る相談者の数は決して多いとは言えないかもしれません。そのため「強要被害は大したことない」と指摘する業界関係者の声を聞いたこともあります。

 しかし、相談者は「氷山の一角」と捉えるべきです。私たち支援2団体以外にも全国の女性シェルターや無料電話相談にも多くの女性の声が届いています。彼女たちは「強く断れなかった自分が悪い」などと自責の念を抱えている。多くの女性が、過去を話す時に涙を見せます。

 それでも一人で抱え込まずに、相談員に相談することができれば、一人で抱えていた心の重荷を下ろすことができるかもしれません。また、強要被害が明らかな場合は、AVメーカーや販売会社に掛け合い、過去の出演作品の取り扱い停止を求め、実際に成功する場合もあります。勇気を出せば、意図せずに出ることになった作品が永続的に視聴される「被害拡大」を防げる可能性が高いのです。

女性たちの声が届き始めた
【ライトハウスの藤原さんは、AV出演強要問題を社会全体で取り組むべき課題と位置づける。】

 政府は6月、閣議決定した答弁書で、AVへの出演強要は予防と根絶が必要な「女性に対する暴力」に当たるとしました。そして実態把握や相談体制づくり、民間支援団体との連携強化に取り組み始めたのです。ようやくですが、勇気を振り絞って支援団体らに寄せられた女性たちからの声が社会に届き始めたと言えます。

 この契機をぜひ生かしたい。AV作品の審査を行うNPO法人「知的財産振興協会」(IPPA)は7月、業界で定めたルールに従わず、必要な審査を受けていない作品を販売会社などが取り扱わないように求める声明を出しました。

 政府や自治体はDV、児童虐待などの既存の相談窓口を拡充し、AV被害の相談にも応じられるようにする。被害に遭う女性の多くが高校生、専門学校生、大学生のうちに声を掛けられるので、学校現場での啓発活動も有効です。

 日本社会はAVや風俗などでの搾取の構造に、あまりにも目をつぶってきました。もう放置できるレベルではありません。タブー視することなく、問題の解決に社会全体で動いていく必要があります。

販売停止までの道のり

 つらい過去に向き合い、今夏、行動を起こしたのが、ユーチューバーのくるみんアロマさんだ。7月8日、都内施設で被害者支援団体の相談員の女性2人と向き合った。くるみんさんは13年、2本のAVに出演した。

 長年、「本格的に音楽活動をしたい」という夢を抱いてきた。「AVに出れば後押しする」と語った所属事務所の「社長」を信じた。だが音楽活動を後押しする動きはなかった。今は「だまされた」と振り返る。

 相談員は聴取をもとに、「出演強要」にあたると判断。その場で作品を出しているAVメーカー1社(知的財産振興協会「IPPA」加盟)と、ネット上で作品を取り扱っている大手販売会社3社に対して、さらなる流通、販売停止を求める「通知状」と題する文書の作成を始めた。

本人の署名後に「内容証明郵便」

 文書は本人の署名後、「内容証明郵便」で郵送した。一連の相談は2時間ほど。相談は無料で、初回に限り文書を送る際の実費も支援団体が負担している。文書は本人の意向に基づき、AV女優名だけで送るか、本名とAV女優名を両方明記して送るかを決めているという。

 数日後、販売会社のうち1社からは、「戦略的検討その他諸般の事情により」「対象となる商品の販売および販売のための掲載を中止」するとの文書が支援団体に届いた。ほか2社は連絡がなかったが、相談員がネット上で掲載中止になっていることを確認した。

 AVメーカーからは10日ほどして、回答文書が来た。「当社が貴殿(くるみんアロマさん)を騙(だま)したり、脅したり、貴殿の意思に反してアダルトビデオに出演させたりした事実は全くありません」としつつも、「諸般の事情を考慮して貴殿の出演する当社作品の販売を中止することを決定しました」と知らせてきた。

 くるみんさんは現在、ネット上に拡散したAV出演時の画像を削除していくか検討中だ。グーグルに検索しても画像が表示されないように要請するほか、無断でアップしているサイトに個別にメールを出して削除を要請する。支援団体の相談員は、「地道に要請を続ければ、完全ではなくても不本意な画像はかなり減らせる」と語る。

 くるみんさんは「出演AVが速やかに流通、販売停止になりほっとした」と話したうえで、業界に対する意見を添えた。

 「女性が無理やりに出演させられた作品で、AVメーカー、販売会社などが利益を上げることはおかしい。こうした作品が生まれないように業界は動くべきだし、強要被害にあった女性からの取り扱い停止に対する訴えにはきちんと向き合うべきだ」

     ◇

 AVに関係する情報を募集しています。出演強要被害に遭った男性、業界の内情を語ってくれるAVメーカー、プロダクション幹部からの連絡をお待ちしています。

製作被害 : AV強要、元タレントも被害 ミスコン受賞歴、歌手の夢捨て

日時: 2016-08-26  表示:6520回

withnews 2016年08月26日

 社会問題化しているアダルトビデオ(AV)への出演強要の被害者は、「芸能人になれる」などの釣り文句に騙された一般女性に限らない。芸能界に関する知識がある元タレントも、巧みな「囲い込み」による被害に遭っている。DVDの販売が見込めることから大々的に売り出され、親や親族、友人たちが瞬く間に知ることになる。親との絶縁、自殺未遂などを経験することになった20代後半の元タレントの女性が取材に応じた。(朝日新聞経済部記者・高野真吾)
「グラビアからいい形で芸能界に入れた」

 最初に芸能事務所に所属したのは、高校3年生の4月でした。その2カ月前に、東京・渋谷を歩いている時に、スカウトされました。浜崎あゆみさんや、「モーニング娘。」さんが好きで、「歌手になりたい」という夢をずっと持っていた。CMにたくさん出ているタレントさんがいたので、そこの事務所に所属しました。

 すると幸運にも、ある雑誌のミスコンをすぐに受賞できた。グラビアからいい形で芸能界に入れた。高校を卒業してから3年ぐらいは、タレント活動に専念しました。グラビア以外にも、地方局のパチンコ番組と衛星放送の情報番組のレギュラーの仕事が2本あって、たまに舞台にも出ました。両親も応援してくれていました。

「ずっとやっていける自信なく…」

 しかし、20歳になるぐらいから、将来が不安になってきた。その頃は、グラビアの仕事は10代の仕事という印象が強かったし、タレントとしてずっとやっていける自信もなかった。一番の夢だった歌手になれなかったということもあります。悩んだ末に、事務所を辞めました。安定した収入が欲しくて、雑貨店や洋服屋でのアルバイトを始めました。

 1年半ぐらいした2009年の夏、渋谷で芸能事務所の名刺を持った、男性スカウトに会いました。離れてみたら芸能界は刺激があり、友人もできるし、楽しかったと後悔し始めていた。また、その人の事務所に入りたいと思ってお願いしました。

 結果的には、以前に所属していた事務所との関係があるとかでダメでした。それでも、スカウトから「若いし、もったいない。俺の知っているすごい人を紹介する」と言われたのです。4カ月ぐらいして会ったのが、前所属事務所の社長でした。

「俺だったら、中国や海外を目指すよ」

 初めて会ったのは、東京・渋谷のマークシティのレンタルオフィスでした。スカウトと3人で2時間ほどの面談でした。社長からは「どんな芸能人になりたいの?」と聞かれました。具体的なイメージができていなかったので「アイドルとか歌の活動をしたい」と答えました。

 すると、社長は「俺だったら、日本だけじゃなくて、中国や海外に出て行けるような歌手、女優を目指すよ」と言いました。日本の経済は伸びていなくて、エンターテイメント業界も縮小しているから、と理由を説明しました。

 「芸能活動を成功させるには、投資が必要だ。お金をかける価値があるとキミを認めるか分からないけど、毎週90分ぐらい話をしていこう」。その場で手帳を開いて、次の約束を決めました。私はまじめな性格なので、約束があると足を運んでしまうのです。

「カジノ王の協力で、上海でコンサート」

 社長は面談で、私の売り出し方を詳しく語りました。

 第一段階では、イメージDVD3本を出して、男性のファンをつかむ。同時に女性誌にも連載を持って、女性ファンもつかむ。

 第二段階で歌手を始めて、中国で開催されるコスプレイベントやゲームショーにも参加する。日本の地上波で深夜番組にも出る。

 第三段階では、ネットでコンテンツを流通させつつ、(マカオの)カジノ王とイベントを開いて、彼にスポンサーになってもらう。

 最後の第四段階で、カジノ王の協力を得て、上海の大舞台でコンサートを開く、と。

雑誌を切り抜きイメージを形に

 彼の売り出し方にあわせるように、私も「ビジョンブック」と呼んだノートに自分の将来像を書き込んでいきました。見返すと、「世界」「中国」という単語がたくさん出てきます。

 「世界一の歌手になるには、歌唱力が必要」「世界一の女優になるのは、演技力が必要」。「中国に私をイメージした遊園地をつくる」「世界中に私モデルの携帯を発売する」という項目も出てきます。

 さらに、社長の事務所の女性相談係に手伝ってもらい、イメージをより形にする作業をしました。自分のコンサートのステージに馬車に乗って登場したいと考えたら、雑誌から馬車の写真を切り抜いて台紙にはる。ステージで着るドレスなども、同じように貼っていきました。

西麻布でサプライズパーティー

 翌10年の2月に、社長らのアドバイスに従って、両親と離れて一人暮らしをしました。日常的に会うのは社長と事務所の女性相談係など、社長の関係者ばかりとなっていきました。2カ月後に正式に所属契約をしました。

 5月には、関係者10人ほどが集まって、東京・西麻布のレストランで、私のためにサプライズパーティーを開いてくれた。出席者は「俺たちは家族だから」「私たちは家族だから」と語りかけ、「一緒に夢をつかもう」と盛り上がりました。

「言ったよね」と大声で怒鳴り舌打ち

 その10日後、イメージDVDの撮影だと言われて、東京・原宿のスタジオに向かいました。洋服を着たままの撮影の後、監督が当然のように命令したのです。「じゃあ、脱いでくれる?」。驚いてどこまでかを聞くと、「全部だよ」。

 驚いて、大泣きしました。撮影が絡みのあるAVだと、初めて知りました。急きょ駆けつけた社長は「言ったよね」と大声で怒鳴り舌打ちしました。

 この日の撮影が中止になった直後、社長と話し合いました。

 「今までずっと話をしてきたよね。AVはほんの最初だけで、1、2年、長くて3年やるだけ。その向こうの夢のためには頑張らないのかい」

 「いくらお金をかけているか分かる? 雑誌とか色々なメディアで宣伝して1億円ぐらいかけている。撮影が無理だと、親に請求がいくよ」

 親へのお金の請求が怖くて、6月上旬の撮影には応じざるを得なかったです。

 秋に雑誌で私がAVデビューするという記事が出ました。社長は、タレント活動をしていた時の名前をAV女優名に使い、雑誌のミスコン受賞者ということも全面に押し出しました。相談はありませんでした。当然、両親に知られる「親バレ」になります。母は「私はあなたを産んだことが人生の汚点だ」。父は「二度と帰ってくるな」。両親と絶縁状態になりました。
「私たちこそ家族だから支える」

 女性相談役に話しました。彼女は、親とのことを「大丈夫?」と心配しつつも次のように言ってきました。「目指している夢を邪魔するのは、実の家族でもダメだよ。私たちこそが家族だから支える」。続けて、一緒にいた男性マネジャーが「携帯の番号を変えなよ」と提案しました。「囲い込み」下だった私は、素直にその通りにしました。

 その後は、月1回の撮影が続きました。11年に念願だったCDデビューをしましたが、今思うと、それはAVを続けさせるための私への投資だったのでしょう。

 次第に体に異変が起きてきました。食事をしても、お茶を飲んでも吐いてしまう。摂食障害でした。電車やバスに乗ると、急に動悸(どう・き)が起こり、過呼吸になるパニック障害も発症します。ほかの乗客が自分の悪口を言っているように聞こえる幻聴にもなった。社交的な性格だったのが、対人恐怖症になりました。

「死にたかったら死ねばいいじゃん」

 13年夏になると、もう心身共に限界でした。当時、1年ほど付き合った後に、実はAVに出ていると打ち明けた彼氏がいました。その彼の目の前で「死にたい」とベランダに向かったのです。

 何とか私をなだめた彼が、社長に電話をした。私は「もう無理です。夢とか言っていたけど、雑誌の連載やテレビ出演もなかった。結局、私をAVに出させたかっただけですよね」と訴えました。すると社長は冷たく言い放ちました。

 「俺、今から上海なんだよね。忙しいんだけど、何、死にたいの? 俺には分からないよ、別に脱いだって減るものじゃないし。死にたかったら死ねばいいじゃん」

 当時、私はこんな文章を書いています。「正直夢を叶(かな)えてあげるから頑張ろうってずっと言われて頑張ってきた。でもどんどんどんどん自分の心も身体(からだ)も歪(ゆが)んでそれでもずっとずっと耐え続けた。でも夢より結局ビジネスね」

「イメージDVDだとウソをつかずに、説明を」

 この年の冬、AV引退を発表しました。もう十分に稼いだと思ったのか、社長は強く引き留めませんでした。

 両親との関係は現在も修復中です。母親がどうしても過去のことで色々と言うことやご近所の目が気になって、今もって実家に住むことはできません。私の人生をめちゃめちゃにした社長のことは許せません。現役AV女優の香西咲さんと一緒に、刑事、民事の訴訟準備をしています。相応の責任を取ってもらいます。

 AV出演強要に関して言いたいことは、やりたくない人間を巻き込まないで下さいということ。イメージDVDだとウソをつかずに、最初からAVだとの説明を怠らないで欲しい。私のような女性を二度と生んで欲しくないです。

製作被害 : <AV出演強要>香西咲さん「私はこうして洗脳された」 (

日時: 2016-08-05  表示:6532回

毎日新聞 7月29日(金)17時30分配信

 前所属事務所による巧みな囲い込みでアダルトビデオ(AV)に出演させられたと告発した現役AV女優の香西咲さん(30)が、毎日新聞の動画インタビューで、事務所社長A氏らから受けたという“洗脳”の内容を詳細に語った。

事務所関係者と特定の占師以外、家族や友人であっても連絡は遮断され、「考え方がポジティブになるノート」を繰り返し書かされたという。香西さんは「A氏は自己啓発セミナーに通い、そのノウハウを私たちで実践していた」とも証言した。

 A氏は取材に対し、「(AVに)出る意思がない人を出すことはない」と反論。香西さんが刑事告訴や損害賠償訴訟を準備していることを踏まえ、「事実は裁判で明らかになる」と語った。【AV問題取材班】

 ◇出来過ぎた「偶然」

−−前所属事務所による「洗脳・囲い込み」とはどのようなもの?

香西さん 家族や友達とも遮断され、ずっと「(経営者になる)夢のために」と聞かされてきました。相談できるのは事務所と(A氏が紹介する)占師だけで情報が完全に偏っていた。洗脳は具体的にされてみないと分からない、というか、されている時も気付かない。まだ完全に解けていないのかもしれません。

−−事務所の見極めは難しい?

香西さん 今はネットで所属女優や代表者を確認できますが、私の時は判断材料がありませんでした。事務所の名前も(聞かされていたものと)違ったし、「エロ」が一切書いてない芸能の契約書にサインしただけ。事務所を決める際はネットの反響や書き込みもチェックし、「1回入ったら辞められない」という覚悟でとことん調べてください。あと、スカウトには気を付けた方がいい。都合のいいことしか言ってくれませんから。

−−どのようにスカウトされた?

香西さん (週刊誌で一緒に告発した)佐藤さん(仮名)と私は、実は同じスカウトに声を掛けられています。有名アイドルがいる超大手事務所の名刺を出してきました。佐藤さんもちょうど事務所を辞めたところで、私も前の事務所が解散したところ。何か情報を聞きつけていたのかもしれません。偶然にしてはちょっと…。五反田駅でスカウトされて六本木ヒルズのレンタルオフィスに通され、そこで8カ月(A氏らと)話しました。時間も手間もすごくかけられていた。15人くらいに囲まれ、ずっと環境を変えさせられて。さすがにそこまでされると判断がつかなくなります。

 ◇まるで自己啓発セミナー

−−事務所について自分で調べましたか?

香西さん 社名を(ネットで)検索しても出ませんでした。まず、デビューするまでAVということを知らなかった。出演するのはイメージビデオだと聞いていたので、AV事務所をあまり調べていません。事務所のサイトがないことを問いただすと、A氏には「女の子を抱えるのは初めてだから」と言われました。

−−疑わなかった?

香西さん 知り合いの弁護士に相談したところ「この事務所には実体がない」と言われました。それをA氏に伝えると、「あるだろう。ほら」と、登記簿と印鑑証明を目の前にたたき付けられた。契約書の内容も直してくれて、「やりたいようにやっていい」と言うので、信用してしまったんです。

−−当初から弁護士に相談するくらい慎重だった?

香西さん そうですね。すごく慎重にやっていたつもりでした。所属事務所は一生もので、移籍するのも大変ですから。

−− それでも見抜くのは難しかった?

香西さん 難しい。最後の最後にはやっぱり信じたくなってしまった。納得いかない部分、なんとなく怪しい部分があっても(だまされていないと)思い込みたい。そこが洗脳なんだろうなと。精神安定剤を飲んで不安をかき消していました。(A氏の指示で)「ビジョンブック」という「ポジティブになるノート」も書いていました。ブログにも「今、楽しくてしょうがない」とか、自分に言い聞かせるように書いていたんです。A氏は自己啓発セミナーによく通っていて、もともと心理学やカルトの好きな人。私たちを使って(ノウハウを)実践するのが楽しかったみたい。

 アメとムチを使い分けるんです。基本的に優しいのですが、「このままババアになって一生誰にも相手にされないぞ。それでいいのか」などとたまに脅す。(AVデビュー作の)発売直前に「やっぱり嫌です」と言うと、「ふざけるな。ここまでお前にどれだけ(金が)かかっているんだ」と言う。一方で、たまに泣き出して「お前が必要なんだよ」と言ってみたり、すごく人の心を操るのが上手でした。

−−A氏から「AVに出て」と直接は言われていない?

香西さん その通りで、ビジョンブック(に書くこと)を詰める時に「俺だったら『女』を最大の武器にする」と言うんです。過去にヌードになった女優や議員を引き合いに出し、「こういうポジションを俺だったら目指す」とずっと言われ、私はメモしていました。いつも「ストーリー仕立てのイメージビデオを3本作って起爆剤にする」と言っていましたが、今になってみると、AVは3本契約が多いので「そういうことだったんだな」と分かります。

 ◇後輩たちも「夢の中」

−−名前も顔も出して告発すれば、業界内の反発も予想されます。もしかしたら、AV女優としての生命を絶たれるかもしれない。

香西さん 覚悟の上です。既に「SEXY−J」という(AV女優が歌う)ユニットのメンバーからは外されました。

−−なぜそこまで覚悟を決められた?

香西さん AVが夢にはつながらないことに気付き、ダラダラやっているのはよくないと思ったんです。「続けてもあと1年ぐらいかな」「その間にAVで失った人間関係や健康状態を取り戻そう」と思っていたタイミングで、出演強要が社会問題化しました。フラッシュバックにもずっと悩まされてきたので、いつか決着をつけなければいけないと思っていた。この(被害の)連鎖はもう止まらない。(A氏が)どんどん新しい子を入れているのも分かっていたので、世の中のためにもなると思いました。

−−今も同じような目に遭っている女優がいる?

香西さん いますね。(被害に)気付いていないと思います。「夢の真っ最中」の子もいます。

<A氏は25日、毎日新聞の電話取材に応じた。一問一答は以下の通り>

 ◇女優との契約「見直す」

−−最初の撮影がAVだと香西さんに言わなかった?

A氏 私は立ち会っていないが、制作会社のプロデューサーが事前に本人に撮影内容を説明したと聞いている。

−−香西さんと2人で「今回はAVデビュー作だよ」と確認し合ってはいない?

A氏 しているとは思うが、説明と同意がないと撮影はできないので、(確認の有無は)うちの問題というより制作会社(の問題)。撮影できなくなれば、制作会社の損害も大きい。

−−デビュー作発売直前に香西さんから「やっぱり辞めたい」と言われた?

A氏 それはないと思う。

−−その時に「お前にどれだけかかったと思っているんだ」と言ったのでは?

A氏 一切、言ったことがない。

−−事務所スタッフで取り囲んで情報を遮断し、洗脳したのか?

A氏 本人が「提訴する」と言っている。そういう事実があるのなら、そこ(法廷)で明らかになる。

−−香西さんに占師を紹介した?

A氏 芸名をつける時に。画数のことなどがあるので。

−−はじめは出る意思がない人を出させるために(囲い込みなどは)必要な過程だった?

A氏 出る意思がない人を出す気はないし、出すことはない。

−−「出る気になるようにサポートする」ということか?

A氏 そういうことはない。

−−香西さんは「(A氏が)自己啓発セミナーに通ったり、カルトに強い興味を持ったりしていた」と話しているが。

A氏 特にない。

−−自己啓発セミナーには行っていない?

A氏 いや……。本を読んだりはする。「やる気を出す」とか、自分のためにも必要だから、勉強したいとは思っていた。

−−そのノウハウを使って女優に働きかけたことは?

A氏 それは特に……。そういうことをレクチャーできるわけではないので。

−−香西さんに取引先の社長の性接待をさせたのか?

A氏 「大人のおもちゃ屋をやりたい」と希望していたので、いろいろな人に会わせた中の1人。性接待させる気はなかった。2人がどういう関係になるか、制限する気はない。

−−出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?

A氏 当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。

*        *        *

製作被害 : AV出演トラブルの法律相談「勝手に契約更新された」「断っ

日時: 2016-08-01  表示:6570回

弁護士ドットコム 2016年07月30日 11時17分

アダルトビデオ(AV)出演強要問題が、大きく注目されている。トラブルに巻き込まれた出演者の支援団体によると、相談は増加傾向にあるそうだ。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、数年前からAVに関する相談が計20件以上寄せられている。どのような相談が寄せられているのか、紹介したい。
●「自動で契約更新」辞められず

あるメーカーの専属女優は2016年3月の投稿で、プロダクションとの契約解除を求めている。「精神的にも肉体的にもきつくてやめたい」。しかし、プロダクションに契約解除を申し出たところ、「あと2本残ってるしメーカーの迷惑だから出来ない」と却下されてしまったそうだ。

プロダクションとメーカーの間では、女性に断りなく契約本数が更新されていたという。女性がプロダクションに尋ねたところ、最初の契約は6本で、3本延長になったことがわかった。契約書は女性の手元にはない。

女性は「契約の更新があるなら、その時に聞いていれば更新しないという選択をしたかったです」と打ち明けている。
●形式上は合意していたが・・・

2016年6月に相談を寄せた女性は、10年近く前にスカウトされて業界入りした。たまたまお金が必要な時期で、言葉巧みに契約書を書かされてしまったという。辞めたいと伝えても、所属プロダクションは「もう契約決まっちゃってるから無理」と応じてくれない。

出演本数はどんどん増えるし、女性には著作権がないため、映像が二次利用、三次利用され、作品が「結構な数」になってしまった。女性が「身バレ」の不安を相談しても、プロダクションは「年に何百本も出るんだからまず顔バレしないよ」と再三説得してきたという。

女性はプロダクションについて、「表面上、乱暴・強要というのはなかったかもしれませんが、相手は騙しのプロです。言動での圧迫などはたくさんありました。形式上は合意の上かもしれませんが、いやだと伝えても断れないように続けさせられ、最後は逃げるように辞めました」と不信感を打ち明けている。

女性は「身バレ」に怯える生活をおくり、PTSDやフラッシュバックがあることもと告白している。6月に大手AVプロダクションの元社長が逮捕された報道を見て、DVDの回収などができないかと思い立ったが、肝心の契約書はプロダクションが管理していて、女性の手元にはないという。
●ゲイ動画に出演した男性からも

大半の相談は女性からだが、男性からのものもあった。ある男性は、プロダクションとゲイ動画の出演契約をしたものの、1本目に出演した段階で、嫌になってしまった。そこで、2本目の撮影をやめたいとプロダクションに申し出たところ、スタッフの準備を進めていることを理由に、300万円の損害賠償を求められたそうだ。

また、1本目の報酬の支払いを求めたら、2本目の撮影が終わらないと報酬を支払わないと言われてしまい、どう対応したらいいのか、困っているそうだ(2016年5月)。
●無修正で動画配信されて憤り

正規ルートのAVではなく、海外サーバーで配信された無修正動画に出演したと思われる投稿もあった。相談を寄せた女性は、自分の出演作品が無修正で配信されていることを後で知ったそうだ。

「無修正はするつもりはないとハッキリ言っていたし、なんの説明もありませんでした。しかし、担当者は『きちんと説明した。現場でも説明は必ずしている。契約書にも書いてある。私たちは悪の仕事はしていない』と言い切っています」(2016年1月)

この女性は、現場で英語の契約書を出されたことがあるという。「内容は変わらないからと言われサインしたのを覚えてます。担当者にあの英文の契約書かと聞くと話を逸らされます」

女性は動画は配信停止を望んでいる。「捨て駒同然の扱いを受けたんだとしみじみ実感します。金額も無修正となると全く見合わず、尚更自分が許可したとは到底思えません」
●流通したAVは回収できる?

ほとんどの相談者は強要の有無にかかわらず、AVの回収を求めている。その際、違約金が問題になることが多い。

たとえば、2015年8月に相談した女性は、「細々したものを撮る」などとしか言われていなかったのに、自分が主人公のような作品を撮られたという。女性はプロダクションに販売中止を求めたが、「1000〜2000万円かかる」と突っぱねられてしまった。違約金の減額や販売差し止めの方法がないかと弁護士に相談している。

女性は「一生取り返しのつかないことをしたと後悔しております」と悔やんでいる。撮影後に後悔する人は少なくない。完成品を見て怖くなったという女性(2016年5月)や、借金返済のために出演したが、知人にバレてしまった女性(2014年10月)などからも回収についての相談があった。

【編集部より】

製作被害 : AV出演強要「インディーズ作品」も課題に…個人撮影や無修

日時: 2016-08-01  表示:6425回

弁護士ドットコム 2016年07月31日 09時47分

アダルトビデオ(AV)出演強要問題が大きな注目を集めている。NPO法人ヒューマンライツ・ナウが今年3月、被害実態を発表したことから社会問題化。政府が調査開始を決めたり、大手AVプロダクションの元社長らが労働者派遣法違反の疑いで逮捕されたりと、大きな動きが続いている。

被害者の支援団体「ライトハウス」と「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」によると、相談件数は増加傾向にあり、2016年は7月段階で前年の62件に並んだ。現行法では救済が難しい場合も多く、支援団体は立法による解決や業界の体質改善を求めている。

●現行法では「強要罪」などでの立件は困難

支援団体によると、出演強要の被害を訴えても、強姦罪や強要罪などでの立件は難しいという。契約書などによって、同意があったとみなされるからだ。支援団体は、出演強要問題が大きくクローズアップされる以前から、被害を訴えている女性を伴って、警察に相談してきたが、契約書や金銭の受け取りを理由に「門前払い」されることが多かったという。

支援団体は立法により、モデルやタレント募集を偽装した勧誘の禁止や、契約解除・販売停止などを簡便に行えるよう求めている。政府が6月、出演強要の被害実態を調査することを閣議決定したことから、今後、規制が検討される可能性がある。

●プロダクションと女優の関係性

出演強要問題で特に問題視されているのが、女優とプロダクションの力関係だ。本来、個人事業主の女優とプロダクションは対等関係。しかし、支援団体の報告では、女優の立場が低く、プロダクションに逆らえない状況が生まれている。

この点が問われたのが、6月に起きた大手AVプロダクション「マークスジャパン」の元社長ら3人が労働者派遣法違反の疑いで逮捕された事件だ。女優が、実質的な「労働者」とみなされれば、労働者派遣法や職業安定法に抵触する可能性がある。労働者を派遣するには厚生労働大臣の許可がいるし、そもそもAVへの出演は法律上、労働者の派遣が認められていない業務だと考えられるからだ。

プロダクションは業界にとってなくてはならない存在でもある。業界には、大手プロダクションから逮捕者が出たことで、「このままでは業界が潰される」という危機感が生まれたという。

●業界内部でも「自浄」の動きが始まる

業界側にも言い分はある。近年は、自発的にAV女優になる女性が増えており、かつてに比べて問題は減っていると考えているからだ。強要問題で、業界に対する風当たりが強まると、ネット上には「業界全体が悪いわけではない」という関係者からの書き込みが相次いだ。

現在、業界内部では、自浄作用を示すため、問題が起きづらいシステム作りが始まっている。大手メーカーなどでつくる業界団体「知的財産振興協会(IPPA)」は、支援団体と話し合いの場を持ち、6月22日付で声明を発表。「プロダクションにも働きかけ業界全体の健全化に向け早急な改善を促していきたいと思っております」と表明した。

また、出演者側でも、AV出演者らによる団体「表現者ネットワーク(AVAN)」が7月に発足。元AV女優の川奈まり子さんが代表に就任した。

業界内部には、現在のシェアを守らないと、団体に加盟しない「インディーズ」や「同人」の増加を防げないという懸念もある。具体的には、無許可の撮影や無修正動画などだ。消費者がより過激なものを求める以上、多少の違法行為を伴っても、商品を提供しようとする業者が出てこないかが危惧されている。実はこの点では、支援団体も一致している。

ライトハウスの藤原志帆子代表は、「今は誰でもポルノを作れるし、日本人が見るポルノが海外から逆輸入されている。業界が浄化されたところで、海外サーバーから流されると太刀打ちできないという懸念があります」と語っている。

【編集部より】

製作被害 : <AV出演強要> 撮影会モデルと言われ「現場では断れ

日時: 2016-07-15  表示:6632回

毎日新聞2016年7月15日 17時28分

現役人気女優の証言(上)

 人権団体による出演強要被害の報告、大手プロダクションなどの摘発、そして業界健全化に向けた新団体の発足−−。アダルトビデオ(AV)界を揺るがす「事件」が相次ぐ中、現場で働く人々は何を思い、業界の行方をどう見ているのか。現役の人気AV女優が匿名で毎日新聞の動画インタビューに応じ、身近な強要被害や自身の体験などを語った。3回に分けて紹介する。【AV問題取材班】

 この現役女優Aさんは20代。ある地方都市の出身で、自らAVに出演しようと決めて上京し、デビューを果たした。

 Aさんは「強要」の一例として、友人で元AV女優のBさんのケースを教えてくれた。約4年前、「撮影会のモデル」として連れていかれたのが実はAVの撮影現場で、「それが彼女のAVデビューになった」という。通常、AV制作会社のスタッフらは、事務所スタッフが女優として現場に連れてきた時点で撮影に同意していると思い込んでいるといい、「よほど気が強くないと、(本人はAV撮影を)断れない」と指摘した。

 Aさんがその後、Bさんの初めての撮影で相手を務めたAV男優に会った時に確認したところ、男優はBさんが強要されて撮影に臨んでいたことに全く気づいておらず、驚いていたという。

 Aさんは、Bさんのように現場で初めてAV撮影だと知らされるケースは「(他にも)ないことはないと思う」と証言。一方、出演強要被害が社会問題として大きく取り上げられることについては、「職業差別を助長するんじゃないか」と懸念を示した。AさんはAV女優として働いていることを秘密にしており、「今、このタイミングでは親にばれたくない」と複雑な胸の内を明かした。

製作被害 : AV女優・香西咲、告発第2弾「私は枕営業を強要されました

日時: 2016-07-14  表示:6704回

週刊文春  2016-07-13 16:00

 アダルトビデオへの出演強要が社会問題化する中、週刊文春7月14日号で、その悪質な手口を実名告発した人気AV女優の香西咲氏(30)が、さらに所属事務所社長によってスポンサーへ“枕営業”を強要された過去を赤裸々に語った。

 香西氏のかつての所属事務所であるマークスインベストメントの社長・青木亮氏(40)は「T社のY会長がお前に会いたがっている」と告げ、暗に“性接待”を命じたという。豊富な政界人脈を背景にシンクタンクを運営するY氏は、かつて芸能人が参加する乱交パーティの主催者と報じられたこともある好色漢だった。

「Y氏は中国や香港にも太いパイプを持っていると聞かされていました。青木はどうしてもY氏のネットワークを利用したかったのだと思います」(香西氏)

 香西氏は即座に断ったが、青木氏は「断れば、今後お前のやりたい仕事は二度とさせない」と一方的に宣告。後日、香西氏は青木氏に連れられ、Y氏と対面。Y氏は香西氏を早々に麻布十番のマンションへと連れ込んだ。以降、Y氏からは複数回にわたり、性接待を要求されたという。

 Y氏は「肉体関係を持ったのは事実だが、彼女の希望する事業の相談にも乗っていた。性接待を受けた認識はなく、本人が嫌がっているとは全く思わなかった」、青木氏は「性接待を強要したつもりはない」と回答した。

 香西氏はアブノーマルな形での性接待を求められることもあったという。週刊文春7月21日号では、その詳細を報じる。

製作被害 : <AV出演強要>合法的出演の環境整備を (2016.07.11)

日時: 2016-07-11  表示:6868回

毎日新聞 7月11日(月)19時54分配信

 アダルトビデオ(AV)の出演者を支援し、業界の健全化を図るための団体「表現者ネットワーク(AVAN)」が11日、発足した。AV出演者同士の横のつながりを強め、悩みの相談窓口を設けるなどさまざまな形でサポートに当たる。同ネットワーク代表を務める元AV女優で作家の川奈まり子さん(48)は、「メーカー(制作者)やプロダクション(所属事務所)の賛同を得ていくことも重要」と話し、出演者との間で交わされる契約書の統一様式策定を当面の活動の中心に据える。その狙いや具体的な支援策を聞いた。【AV問題取材班】

−−業界健全化のために重要なことは?

川奈さん 業界内には「出演者の団体ができたら困る」と思っている人、疑心暗鬼になっている人も大勢いるので「こういうものができないと業界そのものがなくなっちゃいますよ、壊滅しちゃいますよ」と話し合っています。警察関係者ら幅広い人の忠告、提言を聞きながら、なんとか合法的にAVに出演できる環境を作りたい。出演者だけで固まればうまくいくかというと、そうではありません。AV業界そのものが良くなっていかないと、なかなか人権は守られにくい。だから、(メーカーやプロダクションなど)AV業界の他の団体にも「みんなで良くなりましょう」と呼び掛けています。

−−実際にどのような仕組みを作るのですか?

川奈さん 出演強要や不当な出演料の搾取がなぜ起こるかというと、プロダクションやメーカーの利益だけを考えた非常に不公平な契約が結ばれているからです。出演者はいいようにプロダクション、メーカーにあしらわれてしまう。そこで、まず私たちのような第三者機関が契約書を作成し、プロダクションが準会員に、メーカーが賛助会員になっていただく中で、会員たちに使ってもらう。入会の条件にするわけです。すると出演者は業界にいる間、入り口から出口までの権利がずっと守られる。契約書を出演者がもらっていないなどということもないよう、運用マニュアルまで作ろうと思っています。

 「絶対に違法な行為はしない」「出演者の権利はこのように守る」といった会則に従っていただければ、安心なプロダクション、安心なメーカーということになる。出演者は自分が関わるプロダクションやメーカーを選ぶことができる。そうすると被害がほとんど防げると考えています。

−−相談窓口はどのようなものになりますか?

川奈さん AV出演者には厳然として職業差別があり、社会的に本当に弱い立場です。一度出ただけで人生が制限されてしまう。じゃあ、出演を隠せばいいのかというと、これもまたやっかいな問題があって、隠しているとバレる恐れもある。秘密を握った人が脅迫者にひょう変するというのも非常に多く、ストーカーや脅迫の被害にも遭いやすい。だから、まず悩み相談窓口を設けてその問題に最適と思われる方を「アドバイザリーボード(有識者らでつくる助言のための委員会)」から選んで紹介します。例えば民事暴力に強い弁護士、風俗関係に強い弁護士、人生相談に乗ってくれるカウンセラーなどです。

 被害が起こった後は警察にお任せした方が早くて正しいのでしょうが、被害は「未然に防いでこそ」です。「被害に遭いそう」「出演内容をちゃんと説明されていないのに明日出演しなくちゃいけない」というときに相談できる窓口が必要で、一分一秒を争うとき、こちらは業界内部にも知り合いがいますので、対処できます。

 AV女優同士はライバル関係。「つらかった」と相談しても「だったら私がその仕事やるわ」ということになりかねない。親しいAV監督に「よその現場でこんなことがあった」と言うと、その監督は「大変だったね」と言いながら「俺の現場で文句言ってほしくないな」と思うかもしれない。出演者はすごく孤立しやすい。気軽に相談できる窓口があったら、小さな悩みでも相談してもらえる。小さな悩みだと思っていることが、実は大きな問題をはらんでいる場合ということも往々にしてあります。業界外の人権団体がAVで被害に遭っている人のために立ち上がってくれるのは非常に心強くてありがたいのですが、そういう人権団体の方が完全にAV出演を肯定的にとらえてくれるかというと、そうではない。すると、現役の人たちは相談するところがなくなってしまうんです。私たちのようなところを頼ってくれるといいなと思います。

−−他にはどんな対策を考えていますか?

川奈さん 「AV出演マニュアル」を作って公開しようと思っています。「こういうスカウトはインチキだよ」「こういうふうにAV業界に入ってくることはあり得ないよ」などと、情報提供します。団体ができること、それからマニュアルを作ることで、一般の社会にとっても「AV業界は思っていたよりも怖くない」「いや、でも一歩間違うと非常に危ない部分もある」というような、フェアな目で見ていただけると思うんです。

 あとは、例えば退職金代わりになるよう、出演料の一部をメーカーに積み立ててもらい、引退するときにまとめて支払うことも考えています。確定申告の教室や演技のワークショップを開くなど、いろいろなことができると思います。

−−人権団体による強要被害告発の後、大手AVプロダクション元社長らが逮捕された労働者派遣法違反事件もありました。AV出演者は「労働者」なのでしょうか?

川奈さん 「労働者」ではありません。労働基準法では「雇用主に時間を拘束される」「雇用主に指揮監督権がある」「諾否の自由が制限される」というような条件で、労働者性の有無を見極めます。AV出演者に労働者性がある場合、「出演しろ」と言われたら諾否の自由がないとか、プロダクションやメーカーの人間に「脱げ」と言われて脱ぐとか、「やれ」と言われたことをやるということになりかねない。そうすると、ものすごく人権が毀損(きそん)されてしまう。そういうわけで、やはりAV出演者は「表現者」でなければならないと思うんですね。自立した表現者が自由意思で出演するという状況でしか、絶対にAV出演は許されてはならない。私自身がそうやって活動してきたので、もしそうじゃない人がいたら、どんなにかつらいだろうと思うんですね。

 AV出演者が完全に自立したアーティストであり、自由意思で表現活動を行っている場合、職業安定法や労働者派遣法違反による摘発対象にはなりません。一方で、「表現者」として立つと労働関係法で守られなくなってしまう部分があるので、団体で保険に入るなどしてカバーしたいと思っています。

 この会の運営の根幹には、やはり「AV活動を健全にしていかないといけない」ということがあるので、AV出演者の方を向いているのですが、ただ、プロダクションやメーカーの賛同も得ながらでないとうまく運営できないだろうと考えています。

製作被害 : 元グラドルが語る「AV出演強要被害」を防ぐ方法とは (2016.07

日時: 2016-07-10  表示:6712回

週刊女性PRIME 7月10日(日)11時0分配信

 人気AV女優が実名告発するなど、アダルトビデオ(AV)出演強要被害が問題になっている。グラビアアイドルやモデルのスカウトと称して声をかけ、AVの撮影と知らされずに芸能活動の契約を結んだり、現場でAVの撮影だと告げられ、出演強要させられたという被害報告が相次いでいるのだ。

 どのようにしてAV出演やヌード撮影の強要は行われているのか? 元グラビアアイドルは匿名を条件にこう教えてくれた。

「私の周りではいきなりAV出演を強要されたケースはありませんが、水着グラビアの撮影と聞かされて現場に行くと、ヌード撮影を強要されそうになったというケースは少なくありませんね。打ち合わせではグラビア撮影としか聞かされていなかったのに、途中から“じゃあ脱いでみようか”と言いだすんです。そういう場合はスタイリストや事務所スタッフもグルですね」

 打ち合わせと違うことを理由に撮影をやめようとすると、こう言われたという。

「“撮影をやめてもいいけど、今日のスタジオ代やヘアメイクさんたちのお金払えるの? 何十万円とかかるけど”と脅されるんですよ。私はこういった被害のケースを聞いていたので、念のために打ち合わせの様子をこっそりICレコーダーで録音していたんです。その音声があるといったら、渋々打ち合わせ通りのグラビアで済みましたけど、そのままヌード撮影をやらされたグラドル仲間がいました」

 そして、ヌード撮影を行うとAV出演のターゲットにされるという。プロダクション関係者がその手口を教えてくれた。

「現場で説得されてヌードになるような子は押しが弱いということなので、AV業界では噂が広まりますね。それで、今度は“ヌードDVDの撮影”という名目で打ち合わせに呼び出して、AV出演の交渉をするんです。“ヌードもAVも違わないよ”って。

 自分の場合は打ち合わせで落とした子しかAVの撮影に連れていかなかったですが、着エロやヌードの撮影と騙してAV出演を強要するスカウトマンや事務所がいるという話は聞いたことがあります」

 前出の元グラドルによれば、「AV出演強要被害にあわないためのルール」という情報がグラドル仲間の間で共有されているそうだ。

「心霊モノの作品を撮っている会社の中には、平行してAVも制作している会社もあるんです。あと心霊スポットの撮影は廃墟や山奥が多い。AVも制作している会社の作品の撮影だと、周りに人がいないことをいいことに、そのままAVの撮影強要をさせられた…という噂があるので、よく知らない会社の心霊作品仕事は引き受けないほうがいいですね」

 また女性スタッフだからといって、信用しすぎないほうがいいという。

「AVやヌード撮影を強要する場合、警戒されないように女性スタッフに口説かせる会社も多いんです。少しでも怪しいなと思ったら、ICレコーダーやスマホなどで打ち合わせを録音しておくのが鉄則です」

 簡単にできる見極め方法も。

「スカウトされた際やグラビアDVDの契約書にサインする前に“一旦持ち帰って家族と相談させてください”と言いましょう。その場でサインをしつこく迫ったり、スタッフが動揺したりしたら、ヌードやAV作品の契約書の可能性が高いです。後ろめたいことがないプロダクションやメーカーなら絶対に持ち帰らせてくれますよ」

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