朝日新聞 2020/7/31
路上で女性に声をかけるスカウト行為について、福岡県警は一斉摘発に乗り出した。しつこくつきまとい、言葉巧みにキャバクラ勤務や風俗店勤務、アダルトビデオ(AV)出演に誘う手口。望まぬ契約をさせられる場合もあり、県警が注意を呼びかけている。
博多署は31日、一斉検挙で3グループを摘発したと発表。福岡市中央区、自称飲食業の男(27)と、福岡市居住か住所不定などの20〜27歳の男ら計7人を県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は、5月下旬〜7月中旬、福岡市博多区のJR博多駅前や同区の路上で「うちはキャバクラからAVまで取り扱っている。働きませんか」などと女性警察官や女子高校生を勧誘したというもの。全員容疑を認めているという。
捜査関係者によると、一斉摘発のきっかけとなったのは5月の事件。5月25日午後3時20分ごろ、福岡市博多区上川端町の路上で、10代の少年が私服の博多署の女性警察官に声をかけ、キャバクラ勤務やAV出演を持ちかけた。博多署はこれをスカウト行為とみなし、少年を同条例違反の疑いで現行犯逮捕した。さらにその場に居合わせた男2人を同容疑で22日に逮捕。福岡市内の男の自宅を捜索し、証拠品も押収した。
JR博多駅や福岡市の歓楽街・中洲に拠点を持つ複数のスカウトグループが組織的に活動している実態が徐々に明らかになり、県警は一斉摘発が必要だと判断。3グループの男計5人の逮捕に踏み切った。
福岡市中心部では以前から悪質なスカウト行為が横行していたが、5月の緊急事態宣言の解除以降、1日数件の通報が県警に寄せられるようになった。特に多かったのがJR博多駅周辺でのスカウト行為だった。
6月中旬の博多口前。スマートフォンを片手にじっと立っていた若い男が、駅前を歩く1人の女性を呼び止めた。買い物帰りの専門学校に通う女性(19)だった。「夜の仕事とか興味ない?」「短時間でめっちゃ稼げるけど」。女性は「興味ない」と素っ気なく返すが、男はキャバクラ勤務を誘い、数分まとわりついた。男を振り切った女性は「うんざり。いい加減にしてほしい」。
駅警備員によると、スカウト行為をする男らは夕方姿を現し、仲間と連絡を取りつつ深夜まで動き回るという。
捜査関係者は「容姿をほめ、高収入をちらつかせて言葉巧みに誘ってくる。女性から被害の申告があっても、スカウトは『ナンパです』と言い逃れするので逮捕が難しい」と指摘する。
5月に逮捕された少年は「新型コロナウイルスの影響で職を失った女性に仕事を紹介しようと思った」と供述したという。
AV出演の強要問題で被害者支援に取り組むNPO法人「ライトハウス」の藤原志帆子理事は「スカウトは芸能事務所の関係者をかたるなどして個人情報を聞き出し、断りきれない状況に追い込み、意に沿わない契約を迫る。最近はSNSでの勧誘も多い。勧誘に応じないよう注意してほしい」と呼びかける。(川辺真改、神野勇人)