産経新聞 10月16日(土)13時6分配信
【衝撃事件の核心】
女子高生ら2300人以上(延べ)の女性を盗撮し続けた男が、さいたま地裁に起訴された。「女性の足に興味があった」「電車内で盗撮するため定期券を買っていた」−。盗撮に使ったビデオテープ約650本には、被害者の名前や学校名、部活、撮影日時などを記入したラベルを張って几帳面に分類。公判では過去に同じ過ちを2度犯していたことも明らかになった。女性裁判官を前に「絶対にやめます」と誓ったが…。(西尾美穂子)
[フォト]ビデオのラベルには「女子高生」「白スカパン」…
■盗撮テープ約650本
エスカレーターで女子高生のスカートの下にカメラを忍ばせて盗撮したなどとして、埼玉県迷惑行為防止条例違反の罪で起訴されたのは、同県鳩ケ谷市桜町の****被告(35)。
起訴状によると、**被告は今年4月10日早朝、埼玉県川口市戸塚のJR東川口駅構内の階段で制服姿の女子高校生の後ろに立ち、スカートの下にデジタルビデオカメラを忍ばせて下着などを盗撮したとされている。また、同月14日早朝にも別の女子高生に対して、同じ場所で同様の行為に及んだとされている。
県警武南署が同条例違反の容****被告を逮捕したのは5月12日夕。同署は逮捕に先立つ同日朝、**被告の自宅を家宅捜索し、盗撮したミニビデオテープ651本や盗撮画像をダウンロードしたパソコンと携帯電話などを押収していた。
*** **被告は6月2日に同条例違反の罪で起訴されたが、同署は押収したテープから女子高生を含む延べ2345人の被害女性を確認。9月までに、**被告をさいたま地検に3回追送検した。
押収したテープには被害に遭った女子高生の名前や学校名、部活のほか、撮影日時や場所などを几帳面に記入したラベルが張ってあったため、「被害者を特定しやすかった」(捜査関係者)という。**被告はこうした情報を、「バックに付いているネームプレートを盗み見たり、女子高生の会話を盗み聞いたりして集めていた」。
■手慣れた手口でほぼ連日、盗撮
さいたま地裁(島田環=たまき=裁判官)で今月12日に開かれた公判の被告人質問では、**被告の盗撮行為に対する“執着心”があらわになった。
検察官「押収されたビデオは全部あなたが撮ったものか」********* 被告「はい」
検察官「盗撮には朝から行っていたようだが」********* 被告「朝と午後4時ごろ」
検察官「要するに通学時間帯ということか」********* 被告「はい」
検察官「一日1本使ったのか」********* 被告「はい」
検察官「ビデオは1本何分なのか」********* 被告「60から90分」
検察官「650本あるということは650日間やり続けたということか」********* 被告「一日2、3本の場合もあった」
650本分ものテープで盗撮を続けながら、これまで摘発の手から逃れられてきたのは、盗撮用カメラを隠すため手提げバックに巧妙な細工を施していたからだった。バックには本が数冊入っており、その本の上にカメラを置いて粘着テープで固定した上、ピンホールレンズも両面テープで固定。検察側は論告で、「極めて手慣れた手口の悪質な犯行」と指摘した。
さらに、**被告は「駅構内や電車内で盗撮をするために定期券を買っていた」という。捜査関係者によると、通勤時間帯という人の多い時間でも、現場でビデオを操作して怪しまれないように、同被告は自宅からビデオを録画モードにして出発していた。
■動機は「女性の足への興味」と「劣等感」
それでも、過去には2人ほどに気付かれ、逃げたことがあった。摘発されるリスクを負ってまでも盗撮行為を繰り返していたのには、2つの理由があるという。
弁護人「なぜ盗撮したのか」********* 被告「女性の足に異常に興味があったのと劣等感からどうせ彼女はできないと思っていたので、盗撮して相手が見られたくない部分を見ることで彼女にしたような征服欲を満たしたかった」
検察側は、こうした**被告の動機に疑問を投げかけた。
検察官「女性の足に興味があるのと征服欲を満たしたいという動機を述べていたが、本当は盗撮行為自体が好きじゃないの」********* 被告「好きじゃない」
検察官「2つの理由なら盗撮画像をパソコンや携帯でダウンロードする必要はないのでは。ダウンロード画像は自分で撮ったものではなく征服欲は満たされないだろうし、足が映っているのでいいのでは」********* 被告「盗撮は下からのアングルなので(よかった)…」
■平成14年と19年にも…
12日の公判では、盗撮行為の実体だけでなく、**被告の過去も明らかになった。
19年までは埼玉県内の信用金庫に勤務し、緻密(ちみつ)さと正確さを要求される顧客の個人情報の管理を担当。盗撮したテープに几帳面にラベリングしていたのも、こうした職業柄が出ていたのかもしれない。
しかし、同年、盗撮行為をしたとして逮捕され、50万円の罰金刑を受けたのを機に依願退職。実は、14年にも同様に30万円の罰金刑を受けていたが、その際は勤務先にはばれず、仕事を続けていたという。
同じ過ちを何度も繰り返してきた**被告に対し、弁護側が今後の決意について聞いた。
弁護人「今後、同じような行為をするのか」********* 被告「絶対にしない」
弁護人「どうしてそう言えるのか」********* 被告「裁判という形で事件が発展し、被害者や家族に迷惑をかけたから」
弁護人は念押しして再度、質問した。「本当にやめられるのか」。
これに対し、**被告は「絶対にやめます。精神科に通って悩みを聞いてもらい、解決策を探していきたい」と決意を語った。
■再犯防止に向けて…
検察側は保釈の身で出廷している**被告の現在の心境についても追求した。
検察官「まさか同じことはしてないよね」********* 被告「していません」
検察官「したいと思ったことはあるでしょ」********* 被告「ありません。もう精神科に通っているので」
検察官「何回行きましたか」********* 被告「3、4回」
検察官「今は我慢している状態じゃないの」********* 被告「抑えているという感じ」
検察官「やりたい気持ちがあるけど我慢しているということですよね」********* 被告「盗撮したい気持ちがなくなりかけているということ」
弁護側、検察側双方からの被告人質問で、再び盗撮に手を染めないことを何度も誓った**被告だが、裁判官は厳しい表情で改めて今後について聞いた。
裁判官「14年の事件後、どれくらいがまんできて、どれくらいで盗撮を始めたのか」********* 被告「3、4年経ってから」
裁判官「少なくとも18年ぐらいから、またやっていたということか」********* 被告「はい」
裁判官「19年に捕まったときは数日で(留置場を)出られた。その後はいつからやり始めたのか」********* 被告「何カ月かしてから」
盗撮行為で罰金刑に処されるたびに「二度とやらない」と誓った決意はこれまでにすべて崩れた。裁判官は最後に、「精神科に通っているから同じことを繰り返さないというわけではない。危険があることを常に認識して、刑務所に入ったら誰からも信頼されなくなることを心に留めて生活してください」と諭した。
検察側は論告で「盗****被告の性癖として相当に根深く定着し、再犯に及ぶ恐れは極めて高い」と指摘し、懲役1年を求刑。判決は22日午前、さいたま地裁で言い渡される。