ポルノ・買春問題研究会
論文資料集10
2010年度の論文資料集10号。詳細はこちらより
 
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着エロとは着衣エロの略称で着メロ(着信メロディの略)をもじったものだといわれています。一般には女性が露出度の高い水着を着けた状態の写真集やビデオの事を指し、挿入の性行為そのものはおこなわれないイメージビデオを指します。

それは、性行為そのものや露骨なヌードを表すポルノにまで出演しませんが、いわゆるAV女優ではないグラビアアイドルによるポルノであり、わずかに着衣しているというだけで児童ポルノ法に抵触しないと考えられた未成年者のポルノになります。

児童ポルノ法に抵触してこなかった着エロ

現在の日本では18歳未満の子どもは、男女問わずポルノに出演できませんし、ポルノ写真のモデルになるこもできません。

児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律-1999年)

  • 1. 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
  • 2. 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  • 3. 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

日本では上記を児童ポルノとして定義し、禁じています。この児童ポルノ法によって、あからさまな全裸の子どもポルノは非合法とされましたが、それにかわって「着衣」しているというだけで、以前同様、子どもを性的対象として表現させるメディアが現れました。

たとえば2007年には17歳の少女を撮影する際に「過激」なポーズを強要されたと少女と母親が訴えたために「水着でもポルノと認定」されて、関係者が逮捕される事件などがあります。

資料:NewsZeroが報じた着エロ事件(Youtubeより引用)

クリックで再生します。

少女“売り物”荒稼ぎに警鐘 - 2007年10月17日 産経新聞

モデルの低年齢化と演出の過激化がここ数年、加速していた写真集・DVD業界。警視庁は「特定の映像ではなく、内容を総合的にみて児童ポルノといえる」と判断、初めて水着姿の女子高生のDVDの摘発に踏み切った。少女のわいせつ画像を売り物に荒稼ぎをする悪質な業者に警鐘を鳴らした形だ。
 児童買春・ポルノ禁止法は、「児童ポルノ」を衣服の全部または一部を着けない姿などで「性欲を興奮させ、または刺激するもの」と定義。「線引きが不明確で、判断には主観も入る。100人中98人ぐらいがポルノだと判断しないと立件できない」(捜査幹部)とされ、警視庁はこれまで全裸シーンのない作品の摘発は控えてきた。
 だが、今回は「水着を着せているものの、水をかけて透けさせたり、小道具を使って性的な行為を連想させるシーンの演出」などを総合的に検証した上で、児童ポルノに問えると認定。「日本の児童ポルノの蔓延(まんえん)は先進国でも際立っており、一歩踏み込んだ捜査が必要」(同)との判断もあった。
 DVDや写真集ではモデルの低年齢化が進み、10歳以下の水着写真集も書店に並ぶ。売れっ子小中学生モデルらは「ジュニアアイドル」と呼ばれ、写真撮影会を行うなどブームを起こしていた。摘発された心交社は「ジュニアアイドル業界の中心的な存在」(都内の書店員)で、12歳の小学生の「Tバック写真集」も発売している。
 一部の書店ではジュニアアイドル作品の販売を自粛しているが、「30?40代の男性を中心に、棚に並べれば売り切れる人気ぶり」(同)。ある捜査員は「親や本人が作品への出演をアイドルへの登竜門と認識しているフシがある」と指摘。後発の作品ほど、水着は小さくなり、性的行為を思い起こさせる仕草をさせるなど、演出も過激になる傾向がある。
 児童ポルノ事情に詳しい園田寿・甲南大学法科大学院教授(刑法)の話 「どの程度の表現で性的に興奮するかは人さまざまで、表現の自由ともぶつかり合う。警視庁が一罰百戒の効果を狙ったかは別として、一時的に過激な表現は下火になるはずだが、手を替え品を替えて過激な表現が出てくるだろう」


しかしこのときも、容疑となったのは児童ポルノ法違反であったのに、結局起訴は児童福祉法違反となったという経緯があります。まったく児童ポルノ法が機能していません。

そして現在でも、インターネットで検索をかけただけでおびただしい数の水着や下着姿の子どもたちの画像・映像が出回っていいます。それらはごくふつうの家族が撮影した旅行先や日常生活の写真とさして変わらないように見えるものから、なぜこれが児童ポルノ法に抵触しないのか理解に苦しむものまであります。

ピンキーネット事件と、機能しない自主規制

これらがなぜ児童ポルノ法に抵触しないのでしょうか。全裸ではないにせよ、第2条3の「三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」とされないでしょうか?

2009年3月、子どもの「着エロ」DVDを作成したとして芸能プロダクション「ピンキーネット」社長らが逮捕されるという事件があった(以下、ピンキーネット・着エロ事件)。そこで問題になったのはやはり児童ポルノ法の第二条3の三(前述)ではなかった。「二」すなわち子どもの水着の中に制作・撮影側の男の手が入っていたことが問題にされました。

ピンキーネット事件 - 2007年10月17日 産経新聞

16歳の少女に露出度の高い水着を着せ、いわゆる「着エロ」のDVDを作成したとして児童買春・ポルノ禁止法違反罪などで、モデルグループ「藤軍団」を率いていた芸能事務所社長らが逮捕、起訴された。「超過激なセミヌード」ともいえる着エロは、「乳首と局部を隠していれば何でもOK」(業界関係者)という事実上の無法地帯。実は「着エロ」が「児童ポルノ」と判断され、起訴されるのは全国初で、捜査当局も一度は立件に“失敗”している。ワイセツの定義は難しいが、摘発の線引きはどこでされるのか?。

「児ポ」での起訴は初

少女の股間にカメラが迫る。スクール水着を股間に深く食い込ませる少女。別のシーンでは、スタッフが水着の下に手を滑り込ませ胸を触った。
少女が出演していた映像は、胸こそあらわにしていないが、確かに「ポルノ」と定義できそうななものだった。
 このDVDを撮影したとして、警視庁少年育成課は1月下旬から2月上旬にかけ、児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)などの疑いで、フリーカメラマンと、芸能プロダクション「ピンキーネット」社長(41)ら3人を逮捕。
 東京地検は2月中旬以降、同法違反罪でフリーカメラマンを、同法違反幇助(ほうじょ)罪で会社社長をそれぞれ起訴した。
 「着エロ」が「児童ポルノ」で起訴された全国初のケースとなった。
 起訴状などによると、被告は昨年6月22日、中野区本町の貸しスタジオで、無職の少女(16)にわいせつなポーズをさせ、デジタルビデオで撮影し、児童ポルノを製造。被告は、児童ポルノを撮影すると知りながらモデルとして少女を派遣したとされる。

単なる水着撮影のはずが…

少女は「モデルになりたい」という希望を抱いて、「ピンキーネット」のタレント募集に応募。「純粋にモデルとして世に出られると考えていたようだ」と警視庁捜査員は語る。


被害を受けた子どもに対しバナナを加えさせる、尿のような液体を飲ませる、精液を連想できる液体を体にかける、性的マッサージ類似行為を行うものも含まれます。被害を受けた子どもがが両親に相談し、警察に被害届を出したことで事件化されました。つまり、被害が名乗り出なければ事件化されない現状があります。

U-15(アンダーフィフティーン)

ピンキーネットなどの「過激」な商品は大手の販売会社では入手しにくくなっていますが、業界は子どもの性の商品化を自粛していません。U-15(アンダーフィフティーン)の「ジュニアアイドル」の商品化は相変わらず活発であり、たとえば次のようなものは現在でも簡単に入手できます。
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現在インターネットを含め、おびただしい数の少女たちが、小学生・中学生であることを象徴した制服やスクール水着姿で性器を強調するポーズをとって写真集やDVDに登場しています。また本人たちは何のためかわからないまま性行為を連想させる行動をとらせているものもあります。「ジュニアアイドル」はモデルの年齢が低ければ低いほど需要が多いのも特徴です。

製作現場での被害

アマゾンや楽天のような大手販売会社で入手できるような「着エロ」あるいは「ジュニアアイドル」系の写真集・DVDでは、多くが保護者が承知の上で撮影されていると考えられます。しかし、それならば子どもたちは撮影の現場で約束にない行為や服装を強いられる被害には遭ってる可能性があります。

U-15の元祖Tバックアイドルと呼ばれた1992年生まれの女性と母親がテレビ番組の特集「未成年の性と生」の出演した際に、母親は下記のように語りました。「最初の撮影の際、勝手に現場でTバックをはかされちゃったんです。勝手に製品ができあがっちゃって、それまで私は全然知らなかったので。グラビアの撮影の時、水着で男性カメラマンと密室にいるわけで正直危ないこともあるんです。それ(その被害)から守ろうと私がやろう(プロデューサーになろう)と」。また同じ番組で、自分たち新人がプロの出版社相手に自分たちの意思を通すことはとてもたいへんなことだと語っています。

着エロを撮影し、商品に仕上げるのはプロの出版社であり、ビデオ制作会社です。当然、売れるためなら多少のことはいとわれません。そのプロに子どもがひとり向かう場面で、子どもの意思や思いが尊重されるだろうか。大人であり保護者である母親ですら意のままにならないと言っています。

母親の発言は、ジュニアアイドルをプロデュースする側から見ても、現場で意に沿わない撮影がしばしば行われていることをはからずも明らかにしている。
また被害にあった子どもの保護者が訴えようとしても「自分の子どもの性を商品化した母親」という世間の目がそれをためらわせることも十分に考えられる。  親が納得できない撮影が行われていながら、まだその被害は表面化していないといえよう。

しかし親が了解していれば被害がないわけではありません。前記の9歳の少女の写真集では、母親が登場して子どもの水着をわざわざ引っ張って肌を露出させるなど、撮影者の側に立っていることがわかります。子どもたちが何のためにこのような撮影をしているのか、ほんとうに理解し納得しているといえるのでしょうか。商品となった写真集やDVDを消費する側が求めているものは、子どもたちの思いとは別です。

着エロ・ジュニアアイドル消費者の言説

露出度の高いビキニを着せる保護者はあまりいないかもしれませんが、海やプールでは見かける子どもの休日の姿です。しかしその中のページを繰ると、少女の笑顔の次にはミニスカートの下半身を下から撮影したもの、水着姿の下半身を下から撮影したもの、と通常の家族写真風のものと性器部分を強調したものが交互に現れます。確かにこれらの写真は、法律でいうところの「わいせつ物」ではないし、性器が露出しているものでもありません。しかし消費者は、かわいいなあ、と親が我が子を目を細めて見るのと同じように、この写真集を購入するのではありません。

「子役アイドルドットコム」 というサイトの写真へのコメント

  • モデルの笑顔の写真:
    「お嬢ちゃんたいそうべっぴんさんじゃなあか。ヨッシャー!!今日はこの子の体を根掘り葉掘り観察しまくっちゃるけんの」
  • 水着の下半身をアップしたもの:
    「ドッカ??ン!! 眼前に迫る美少女の股ぐら。ムムムム、プファ?、窒息しそうじゃ?ぁ」
  • 体操着姿の笑顔に:
    「かわいいのう、こどもちゃん。チ○○○ドキドキ」、水着姿で浮き輪に載って足を開いているものに「美少女のマ○○が丸見えじゃ?。チ○○○ドキドキ」
  • 洋服を着てランドセルを背負っているもの:
    「ランドセルを背負った小学生はいつ見てもええもんじゃのう。チ○○○ドキドキ」


カスタマーレビューより


中学3年と小学5年の姉妹モデルに対して

  • まずもって「お姉ちゃんといっしょ」ってことで、しずくちゃんの本気の笑顔が見れます。加えて二人揃ってのきわどい水着、さらにはソロもあったりでよだれと○液が止まりませんw中でも真っ白な水着を着て、お互いにマジックで落書きするシーンは最高です。くっきり写るしずくちゃんの「ω」、ペン先がくすぐったくてもだえる表情にハァハァ。お姉ちゃんも、チクビ付近でグルグルッと●を書かれてピクッとなって一瞬目がうっとりしたり、透けておっぱいのポチが見えたりとカナリ満足できます。児童ポルノではないので勘違いなさらずにね^^ しかし最高に使えるDVDです オススメ

中学1年と小学5年のモデルに対して

  • こんな可愛い中学1年生が、胸を寄せて谷間を作るなんて…もう反則です。モデルのレベルが高いチュ→ボーの中でも、彼女のサービス精神は特に際立っています。

12才のモデルに対して

  • 「12歳なのに尻肉がもの凄く肉感的!しかも若々しいハリのあるピチピチ肌!無邪気な超美少女が開いた股や突き出したお尻を舐めるように接写。あまりにも肉感的な映像に中一であることを忘れ、込み上げる欲望を抑えきれずに毎日のように使用してます。2009/4/23 Byシコシコ&ドピュッ! 」
  • 「12歳でこれだけヌける作品は見たことがありません。……特にお尻はみずみずしい上に熟れかけのムチムチ感もあり、肉欲派のオナニストでも十分満足できるボリューム感です」
  • 「赤ビキニからはみ出るムチムチの尻肉を見た瞬間、12歳の肉体であることを忘れて肉棒をしごき始めました。寝た姿勢から片足を大きく開いて四つん這いになるまでの股間のアップと震える内腿が美味しそうでタマリマセン!」
  • 「冒頭の後姿の太腿から尻肉のアップがムッチリとエッチ。片足を上げて全開の股間を股下側からドアップ!プルプル震える肉感的な尻肉は最高のズリネタです!!!」
  • 「かなりのドテ高なのがわかるエッチなビキニ。お尻を舐めあげるヒワイなアングルと愛くるしい笑顔を織り交ぜたマニアックな構成が続いて全部がヌキ所です」
  • 「プールで浮輪に乗る少女の股間を狙うヒワイな映像に興奮。水中でも股間やお尻ばかり写ってます」
  • 「注目なのは四つん這いを股間側から撮られているシーン。男に屈した様な四つん這いの姿勢で股間を突き出す彼女。その表情がとても12歳の女の子に思えないほどエッチで、局部を舐められて声が出るのを我慢している女のよう。これって女の快楽を知らない人にはできない表情では?あと片足開き→四つん這いのシーンも極上のオカズです」


このように消費者のマスターベーションに提供されるために彼女が性行為をあからさまに連想させるポーズをとらされていることが明らかです。

これら写真集/DVDの購入層は明らかに子どもたちを性的対象として利用する男性たちであり、制作・販売者側はそれを百も承知しています。そしてそのような目的で制作された写真集やDVDが白昼堂々、街の書店やレンタルビデオ店、インターネットで販売され、誰もが容易に入手し、彼女たちを消費しています。

撮影される子どもへの影響

上記のとおり、「着衣している」というだけでポルノとはみなされていません。それは日本の性表現に対する法律的アプローチが「わいせつ」であるか「性器を露出している」かどうかだけに拠っているからです。被撮影者である子ども自身がどう感じているかとは別に、子どもが性的対象の商品とされてはならない、という認識はない。それがそもそもの児童ポルノ法の精神だったのではないでしょうか。

子どもたち自身は自分たちの写真集やDVDを見てどう思うでしょうか。子どもたち自身の自分のからだや人生への向かい方にどんな影響があると考えられるでしょうか。

なぜ自分の股間や臀部、胸ばかりが強調されるでしょうか、小さな水着が好まれるのか。逆になぜ裸に近い映像のすぐ後に子どもであることを強調した制服やランドセル姿、スクール水着を着せられて撮影されるのか、舌をつきだしてものを舐めることを要求されるのか、棒状のものにまたがったり、股間にものをあてるポーズをさせられるのか。子どもたちは愚かではありません。撮影時に要求されたことが、たとえそのとき気がつかなかったとしても、誰のための何のためだったかをいつかは理解するでしょう 。なぜ性的虐待と言えないのでしょうか。

同時に、自分は女であるからそれが売り物になり、幼ければ幼いほど売り物としての価値があり、露出すればするほど価値が高い、その売り物としての価値しかない女が、性的商品としておとしめられることを10歳になるかならないかのうちに体験的に学ぶことを強要されています。

「性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害する」ことを鑑みて児童ポルノ法がある以上、子どもを性的対象物として商品化することにより厳しい目を向けなければ、子どもが子どもとして育っていく環境と子ども自身の力を奪うことになります。

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